第八話
我々Aグループは、ミノタウルスとの死闘によって体力を消耗し、Bグループから大きな差を開けられてしまった。
……が、しかし!
失う物があれば得る物あり。
この悪臭を放つ、花子のヨダレ付きドテラのおかげで、魔物に遭遇する確率が格段に下がった。
私の装備に『魔物除け』のオプションが付きました!
「そう言えば、魔物が出て来なくなりましたね」
よく言った。 賢者!
私の装備のおかげですよ。
「先に行ったBグループが倒してるんじゃないの? 」
あッ。そんな考え方もありましたね。僧侶様。
私達は雪山を、ただひたすら、黙々と歩き続けた。
黙々……、黙々……、チーン!
「ぬぉぉぉ……! 」
私は天高く飛び上がり、大地に踵落としを食らわせてやった。
運営めっ! 手を抜いたな。
私は、勇者生まれの勇者育ちで、根っからの勇者だ。
何のハプニングも起こらぬまま、遠足気分で雪山登山をエンジョイしたい訳ではない。
『自然の動物と遭遇でもして、適当に戦っておけ』
プランですか? 生憎、動物達は冬ごもりしっちゃっていますよ。
せめて……、せめて恋だの愛だの、何だかワクワクするようなイベントを用意していただきたかった。
それとも何? Bチームは既に一組ぐらい、カップルが誕生して、旅を満喫しちゃってるの?
「クソッ……! 」
私は地球に向かって今一度、怒りの鉄拳を食らわせてやった。
「シゲゾウ! 雪崩れるだろうがっ! 」
私は僧侶様の猛烈な体当たりを食らい、雪の中に埋もれた。
「先程は、混乱して済まなかった……」
私は埋もれた雪の中から頭だけ出して、旅の仲間達に謝った。
雪の冷たさで、カッカしていた頭が冷えたのだろう。
私は素直に謝った。
勇者には、潔さも必要だ。
雪の中に埋もれているのだから、土下座をするよりも、さらに低姿勢の謝罪だ。
平に平に……。
だから、お願い。ここから出して……。




