第六話
結局、旅芸人が忍者に入れ替わっただけで、ほぼ第一章と同じ顔ぶれだ 。
自己紹介など、ページの無駄だ。省略して良いだろう。
「皆さん、ここで注意事項があります。今回は冬山で、大変危険な場所も、いくつか存在しています。
詳しくは既に配ってある『旅のしおり』をよく読み、危険な目に合わぬよう、細心の注意を払って行動してください。特にアナタ! 」
運営は、チャラ男を指差した。
チャラ男は付箋を貼られたまま、『え? 俺? 俺? 』みたいなジェスチャーで、辺りをキョロキョロと見回している。『いやー、参ったなー』みたいな、若手芸人が美味しいところを持って行きますよみたいなジェスチャーで、頭を掻いている姿が、本当にチャラい。
「そして、アナタ! 」
運営が、私の方を指差しているではないか。
え? 私? 私?
運営は、さらに説明を続ける。
もういいよ……。
私は電化製品の説明書も読まずに捨てるタイプだ。
時々、得体の知れないスイッチが付いていて、それを押すと、どうなるのか分からず、怖くて押せないスイッチが、家の中に多く存在している。
「えー、今回は二つのグループに別れているため、グループ同士協力し合うも良し、ライバルとして競い合うも良し……」
そりゃ、助け合うでしょう。
こっちのグループで、唯一期待出来そうなのは、忍者オンリーですよ。
「しかし、宝箱は予算の都合上、一箱しかありませんので、早い者勝ちです」
「よっしゃー! やるぞー! 」
僧侶様が仁王立ちになり遊ばれた。
彼女なら、たとえ相手チームが先に宝箱を獲得しても、後で強奪しちゃうよね。
「さあ、チュートリアルは、これで終わりです。
良い旅を! 」
運営は去っていった。
さあ、出発だ……!
……って、皆既に装備が完了している。
装備していないのは、私だけだ。
「待ちたまえ! 皆、私が装備していない事にお気づきか? 」
「ハァ? それが装備じゃないの? 」
僧侶がフルアーマーで返事した。
こんな、上下灰色のスエット装備の勇者が、この世に存在しているであろうか? 否! あってはならぬ。
コタツとミカンでゴロゴロしている姿が容易に想像できる装備などで、どう戦えと言うのだ。
「よりバージョンアップした装備に着替えて来るから、乞うご期待! 」
私はそそくさと木の影に隠れた。
頼むぞジイさん……。それっ!
出てきたのは、上下緑色のジャージであった。
しかも、私が中学時代に愛用していた、学校指定のジャージ。
ご丁寧に中学の校章と、私の名前『森田』が刺繍されている。
腹巻きと、赤のドテラは暖かいのでありがたいが。
「お? シゲゾウ、春日中だったの? 」
え?もしかして僧侶様と同じ中学だったの?
これって運命?
「プッ。ダッサー」
ムキー!
怒髪天!
全国の春日中の皆さんに謝って頂きたい。




