第二話
私はまたもや、父さんの勧めでキャンプに参加することになった。今回は雪山だ。
……まぁ、良いだろう。
クリスマスで浮かれまくった世界から、しばしの間、離れられるのだ。
さらば、サンタクロース。
さらば、イルミネーション。
さらば、即席カップルども。
私は、サマーキャンプでジイさんから授かったナップサックを背負って、玄関に向かった。
「待てぃ! 」
慌ててジイさんが追いかけてきた。
ちなみにジイさんは、英検を受けるために勉強しているのだろう。
『ネバーギブアップ』と書かれた鉢巻きを頭に巻いているつもりなのだろうが『ネバーヒップホップ』と書かれていて、もはや受験する資格すら無いような気がする。
「冬の雪山は過酷を要する。もっと重装備で行かなければならぬぞ」
そりゃそうだ。
雪山をランニングシャツで過ごせば、あっという間に凍死するだろう。
私はジイさんからサマーキャンプの時より一回り大きいナップサックを受け取り、傘立ての中から、魔法使い・チャラ男とトレードした黄金の剣を抜いて、再び出発した。
雪山までは、何てこともない。
『雪山行き』のバスに乗り込むだけだ。
今回のバスも前回同様、程よく暖房が効いていて、快適快適。
今回は、おやつにミカンを持参したので、空腹の心配もないし、暖房で喉が乾いても水分補給ができる。おまけにビタミンCまで摂れるので、自慢のもち肌も、常にグッドコンディションを保てる。
私は既に、旅マイスターである。
よし、前回はバスの中で爆睡してしまったけれど、今回は車窓からの景色を楽しもう。
何せ、私は旅マイスターなのだから。
チッ!
どこもかしこもクリスマスで浮かれたイチャイチャカップルばかりではないか! 地獄に落ちろ!
私はアイマスクをし、爆睡してやった。




