第二話
私は、トンガリ帽子と鼻眼鏡で拝み続けるジイさんが少し不憫になってきた。
仕方がない。どうせ世間は夏休みだ。
この家族はどこにも連れていってくれそうにない。
ひと夏の恋とやらも気になるところなので、私はサマーキャンプの参加に同意した。
「ジイさん、父さん、母さん。
私はこのサマーキャンプで、一皮も二皮も剥けて帰ってくる。
そして、バアさんを助け、何なら姫もゲットして……」
トンガリ帽子をかぶった三人が驚いた顔をして私を見た。
恥ずかしいではないか。
「いや、何だその……。とにかく私は勇者になるんだ!」
私が宣言した瞬間、三人がクラッカーを鳴らした。
それ、私のバースディパーティー用のクラッカーだよね?
「よし! 行くとするか!」
そう意気込んだ私に、
「待てィ!」
と、ジイさんが叫んだ。
「勇者たるもの、装備が必要じゃ」
そりゃ、そうだ。
「我が一族に代々伝わる、このキャンピンググッズを持っていくがよい」
何それ、いらねー。
「あ。それと、お小遣いも渡しておくわ。
小銭もあった方が便利でしょ?」
母さん、現実的ー。
父さんは黙って腕組みをし、息子の旅立ちが感慨深いのか、少し涙ぐんでいる。
いい加減、鼻の頭に付いたホイップクリームを何とかしろ。
私はジイさんからもらった、やたら重いナップサックを背負い、父さんが紙ヒコウキにした、ぐしゃぐしゃのチラシを手に、家を出た。