第十九話
「シゲ……、オ……、シゲオ……」
「ぬ? 」
この声に、聞き覚えがあった。
「もしかして、バァさん? 」
「……シゲオ」
驚いたことに、目の前のモノノケは、野生化してしまった私のバアさんだった。
「バアさん、何故こんなところで野生化してしまったのだ」
徐々に人間の言葉に戻ってきたバアさんは、事の経緯を話し始めた。
数年前、バアさんも、このキャンプに僧侶として参加したものの、仲間たちとはぐれてしまい、助けを待っているうちに野生化してしまったそうだ。
ちなみに、その時の勇者はジイさんだったそうだ。
ジイさん、バアさんを放置して逃げたな。
そして私は、バアさんの話から勇気を頂いた。
『やはり勇者は、仲間の僧侶と結ばれるのだ! 』
私は天を仰ぎ、ガッツポーズを繰り出した。
「家に帰ったら、シゲゾウとは離婚じゃ! 」
全ての記憶がよみがえったバアさん、ジイさんにご立腹。
そりゃ、そうだ。
我々は、バアさんが仲間に入れてほしそうな目をしていたので、仕方なく仲間に入れ、今度こそバスに乗り遅れぬよう、先を急いだ。
ちなみに、バアさんとの戦いで顔中引っ掻き傷だらけになったチャラ男は、
「ツバでもつけときゃ治る」
と、バアさんに治療を施され、放心状態で歩いている。
さすがバアさん。
四六時中チャラチャラしていたチャラ男を、一瞬で黙らせてしまうのだから、僧侶としての腕前は確かである。




