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第十八話
振り返ると、黄金の鎧とモリタシゲゾウステッキを装備したチャラ男が、勇敢にモノノケと戦っていた。
チャラ男は、顔中引っ掻き傷を負いながらも
「ソイソイソイソイソーイ! 」
と、華麗にモリタシゲゾウステッキを操る。
その姿は、子どもの頃プレイしたゲームの『伝説の勇者』そのものだ。
『ソイ』以外に適した掛け声が、いくらでもありそうな気はしたが、今は黙って見守った。
モノノケとチャラ男は、ほぼ互角の戦いで、いつの間にか私は手に汗を握って応援していた。
「モノノケ、チャラ男、どちらも負けるな! 」
「ソーーーーーイ! 」
モリタシゲゾウステッキが、モノノケを捕らえた瞬間、モノノケはその場に崩れながら、
「シゲ……、ゾウ……、モリタ……、シゲゾウ……」
と、つぶやいた。
「エ? この猿、しゃべるの? 」
キョトンとするチャラ男。
しゃべるどころか、ステッキに書かれた文字を読んでいる。
「……シゲ、……オ……? 」
「ぬ? 」
このモノノケは、なぜ私の名前を知っているのか。
申し遅れたが、私の名前は『シゲオ』で、父の名前は『シゲアキ』だ。