第十七話
作者の『クラゲに刺された時の対処方法を調べるのが面倒』という、解せぬ理由で見事復活を果たしたチャラ男。
もうすっかり元のチャラ男だ。
いや、ますますチャラ男だ。
結局我々は、運営の策にはまり、海イベントを満喫してしまった。
恋のドキドキイベントは全く無かったったが。
さて、そろそろ本気で帰らねば。
異世界ならば、時間を気にせず旅できるのだが、ここは、ごく普通の世界。
一泊二日という制限時間が与えられているのだ。
我々は再び山道に戻り、歩を進めた。
山道は再び上り坂となり、私たちのテンションは下り坂となった。
二人の負傷者を出したうえ、海でかなりの体力を消耗した。
もうこれ以上、ドキドキイベントも何も起こらないだろうという気持ちもある。
我々がグダグダと歩いていたその時、目の前にモノノケが現れた。
モノノケと言って、読者の『またまた~』という、心の声が聞こえたが、今回は本当にモノノケなのだ。
猿? いや、猿より大きい。
この辺りにマントヒヒやゴリラはいないはずだ。
賢者は、
「アレレ~? おっかしいぞ~? アレレ~? 」
と、珍妙な声をあげて混乱している。
彼の全知能をもってしても、敵のデータが取れないのだ。
チャラ男は、チャラ男なので
「運営、最後にボスキャラ仕込んでおくなんて、やるね。フゥ~」
と、言いながら、むやみにモノノケに近づいて、引っ掻かれている。
戦士は、
「アタシは変わり種は苦手なんだからっ」
と、逃げる体制だ。
いえ。変わり種はアナタですから。
旅芸人は、慌てすぎて、その場で何度もスッ転んでいる。
さすが、ハプニング王。
よし。ここはボス戦といこうではないか。
我々の最強ボス、僧侶様を横目でチラッと見ると、珍しく僧侶様が震えていた。
今更、女子力をアップして、どうするのですか。
それにしても、この敵、何かおかしい……。
そうだ。今までの敵は、我々から攻撃を加えない限り襲ってこなかった。
言ってしまえば、無視して通りすぎれば、何事もなく、ここまでたどり着けたのだ。
しかし、今回の敵は我々を攻撃する気満々だ。
木と木を飛び移ったり、吠えたり、ドラミングしたり、チャラ男を引っ掻いたり、もう手に負えぬ。
私が『仲間を置いて逃げる』を選択した瞬間、
「ぎゃぁぁぁ……! 」
チャラ男の悲鳴がこだました。