第十一話
翌朝、旅芸人の鼻息がピープーうるさいので、目を覚ました。
この赤い鼻、寝る時いらないよね。
私は今、この赤い鼻を取りたいという衝動に駆られた。
しかし、仲間の装備を外すことイコール仲間の防御力を下げることに繋がるので、取りたい気持ちをグッとこらえた。
この赤っ鼻に、どれくらいの防御力があるのかは知らないが。
戦士も鎧を装備したまま寝ていたらしく、オッサン臭がMAXになっている。
この臭い、戦士のスイカケースに詰め込めたら、攻撃に使えそうだよね。
魔法使いチャラ男は、脱いだ黄金の鎧を枕元に綺麗に並べていた。
それだけで腹立たしく思えるのは何故だろう。
その点、私はステテコなので身軽だ。
通気性もよく、いつも快適に過ごせる。
しかも、腹巻き付きで寝冷えの心配もなく、最強と言っても過言ではない。
そう言えば、ゆうべの賢者、絵日記に何と記したのだろう。
こっそり見てやるか。
『今日、サマーキャンプに参加したら、馬鹿っぽい大人の集団の中に入れられ、大変苦労しました。動きがクネクネして気持ちの悪いオッサンと、モリタシゲゾウという変な……』
……何だろう。
これ以上読む気にならない。
涙で前が見えない。
私はそっと日記を閉じ、賢者の枕元に戻した。
よし。立ち直った。私は勇者だ。
小さいことでクヨクヨしない。
顔を洗って歯を磨き、仲間を起こして出発だ。
「ゥルサイ、しげぞう! 」
僧侶様、予想通りの寝起きの悪さ。
この人の機嫌が良い時は、いつですか?
しかし、この目の前の魔物にひるんでいる暇はない。
早めに戻らねば、帰りのバスの発車時刻に間に合わなくなる。
私は、こう見えて時間にはうるさいのだ。
ここは魔法使いの出番だ。
「行け! チャラ男アターック! 」
寝起きのチャラ男を僧侶目掛けて突き飛ばした。
僧侶はヒラリと身をかわし、魔法使いに強烈な一撃をお見舞いした。
さすが僧侶様。
哀れ、魔法使い。鎧を装備していなかったので、かなりのHPを消耗したことだろう。
僧侶がスッキリ目覚めたところで、改めて出発だ。




