第十話
バンガローに到着するなり、僧侶が
「私、この部屋取った! 」
と、唯一の個室を陣取ってしまった。
もう。うちの僧侶様は、とんだジャジャ馬娘だ。
仕方がない。いくら『男女平等だ』といっても、ここはレディファーストを貫こう。
僧侶の部屋は、テレビ、エアコン、ベッド完備で、なかなかのものだ。
私たちは、何もないリビングで雑魚寝をしなくてはならない。
男同士、むさ苦しい一夜を過ごさなければならぬが、これも旅の良い思い出になるだろう。
若干、戦士が戸惑った様子なのが気になるが。
しばらくゴロゴロして、夕食を作ることになった。
ここに女子力の高い女子が一人でもいれば、楽しいひとときになっただろう。
ところが、うちの女子きたら、スプーンと皿を持ったまま、仁王立ちだ。
料理は、意外なのか意外でないのか、チャラ魔法使いが上手かった。
何でも趣味が高じて、野菜ソムリエの資格まで持っているらしい。
地獄に落ちるが良い。
私たちが、肉のないカレーライスを食べ終えると、戦士が武器のトゲトゲ鉄球の中からスイカを出してきた。
あ。それ、スイカケースだったのね。
食後のデザートまで頂き、私たちは満足して床についた。
賢者は布団の中で、夏休みの宿題の王道、絵日記を書いていた。
少年よ、我々と旅をしなければ、こんなスリリングな一日は過ごせなかっただろう。
思う存分、感謝の気持ちを書き記すが良い。
旅芸人は、よほど楽しかったのか、布団の中で鼻唄を歌っていた。
「旅芸人! うるせーよ! 」
はい。旅芸人、また僧侶様に怒られたー。
たとえ僧侶様に怒鳴られても、仲間がいるって楽しい。
こんなひとときが永遠に続けばいいな……。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。