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親子の家にて2

「ごちそうさまでした」


 小声で食事のお礼を述べた咲良に気付かされて慌てて両手を合わせてそれに倣う。ちらりとルークスに視線を送ると少しだけ照れてそっぽを向いた。


「あの」


 この間に情報を集めないと、皆が言葉を理解できないことを思い出して咄嗟に引き留めてみたけれど。


 一番にどれを聞けばいいのだろう。


 世界の名前を聞けばそれだけで別世界がどうかわかるけど、急にそんなこと聞かれたら怪しまれるんじゃないか、ここの世界の名前はなんですかって。


「メエリタ」

「う、うん……えっ? メエリタ?」


 声に意識を引き戻されて曖昧な言葉が漏れる、質問されたなら返さないとって焦るけど聞いたことない発せられたのは単語でそのまま反芻して返してしまう。


「……さっき言ったじゃん、この世界の名前はなんですかって」

「……え?」


「言ってたよ、ストレートに」

「えっ?」


 追い討ちをかけるように水羽も肯定して、ひやりと背筋に冷たいものが駆け抜ける感じがした。思って留めようとしたけど口に出してたのか、目の前にいる少年は子どもでも知ってる事を知らない私をどう見てるのだろう。


 案の定。ため息がかえってきた。


「世界の名前知らないって、迷子に記憶喪失……? でもそれなら世界じゃなくて場所きくことが多いっけ」


 訝しげに、訊いてるわけではなくひとりごちるのを見て、次々と汗が溢れる。


「み、水羽にパス!」

「そんな、僕言葉がわからないって」

「私がそれを聞くから」

「パスって、この状況でどう……あ!」


 別の場所、じゃなくて異世界に飛ばされたときもこれ以上の焦りと不安があったけれど騒ぎ立てることなくなんとか冷静にいれた。

 けれどそれは孤独を感じた時に寂しさをつよく感じたから、そのせいで何もできなかったのだろう。


 今は違う、友達全員傍にいて孤独を埋めることができたから、逆に言えば今はもう焦りを鎮めるものはない。


 水羽の後ろの結一が口許に人差し指を添えてるのに気付いた時はもう遅かった、口を塞いで、あとは謎の畏怖に震えて後ろを向けなかった。


「え、えっと……」


 ルークスの方も困惑しきった反応だ、もし私が彼側でもきっと同等の反応になるだろう。水羽達がわからない言葉と言ったからルークスにとっても理解できない言葉で聞こえるのなら。


「なに、言ってるの……?」


 言葉遣いの変化から動揺してるのがはっきり伝わる、こっち向いてよ、というように背中をつつく指。

 そこからじわりと湿ったものが伝わってくる、こんな短時間でこんなに汗が出てくるなんで本気の追いかけっこをした時よりも早くて凄い量じゃないのか。


 って現実逃避をしてる訳じゃなかった、自然と下降してた視線を目の前にいる友達に合わせる、結一が前屈みになりすぎて紘が視界に映らないけど、もうこうなったら白状するしかないかもしれない、他に効率がいい誤魔化せ方なんてまだ幼い私たちにはわかりっこない。


 あっても、きっと口元が変に笑う。


「驚か……驚くよ……」


 後ろの少年に向けて掠れた声でひとこと忠告。もう、病院でも連れてかれていいや。


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