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まじない

 夕暮れの公園。

 滑り台を跨いで真っ直ぐに伸びる影、手を繋ぐ子どもたち、休みの日に公園に寄るのは最近になっては当たり前で、そこで皆と遊ばないと1週間の終わりと始まりを感じることができない。


 帰宅の促す、寂しさを感じさせるメロディが流れ出した、楽しい時間はあっという間に過ぎていってもう帰らないといけないのかと涙が滲む。

 おかしいね、明日も明後日も会えるのに。

 こうやって遊べはしないけれど。



『も、もうすぐ、だな!』


『言いだしっぺが1番震えてどうするの』


『う、うるさい! ふるえてないし』


『震えてるけど……』


『そんなこと言って、あれだよ、お前も心の中では震えてるんだよ!』


『やめなよ2人とも』


 皆は手を斜めに突き出すように繋ぎ合い、星を描くように立っている、私もその星を描くうちの1人、とくんとくんと大きく胸が高鳴る。喧嘩にか、それともこれからするおまじないにか。多分両方だろう。


 これはひとつのおまじないの実験、日が沈む前に5人で五芒星をつくって、その中心に飛びたい世界の西暦をきっちり書く、そしたら日が沈むまで五芒星を保つ、ただそれだけ。


 ただの遊びの一環、なのに。なにかが起こりそうな予感がした。


『そろそろ目を瞑った方が……』


『そうだね、ここまで来たからやらないとね』


 2人の喧嘩を見守ってた残りの2人が口を開いた、そうだった。最後に目を瞑って待つんだった、デタラメだとわかってるからあんまり内容最後まで見てなかった。


 喧嘩をやめた2人がはっとしたようにしてから、ひとりはぎゅっと目を瞑り、もう1人はため息を零してから目を閉じた。


 私も1人だから目を閉じないと、なのに。そんなこと関係ないようにまったく別のことを考えてた、沈む前の少し怖い光に照らされる皆、初めて見るなぁ、とか。


 これからも仲良くいられるとか――



『……?』



 カチッ。遠いような近いような、曖昧な距離からの時計の短針が動いた音。時計塔の音かと思ったけれど、長針なら錆び付いてるから鈍い音がする筈で。こんなにクリアな音はしない。

 嫌な感じがかけ巡って、視線が空に向かう。


『!』


 そこに、空に亀裂が走ってた。


 いや違う、空ほど遠く離れてない、すぐ近く、すぐ近くに亀裂がある、ガラス板が空中に浮いてるわけなんてないし。

 何がなんだかわからずに、声を上げることも忘れて亀裂を見つめると地響きに似た振動音を立てながら亀裂が口を開いた。


 なに、これ。おまじないが成功してるの? 私まだ目を瞑ってないのに! このおまじないって別世界に飛ぶんだよね。成功しない前提で考えてたけどいざ飛ぶとそんな心の準備なんてできてない。

 手を離せば途切れるのかな、でも同時に離したくないと思うし、もう遅いとどこかでわかってた。


 せめて誰か顔を上げて。


 なんて心の声を上げてもなにも変わらず亀裂から開いた穴は皹を無数に生み出しながら広がる、夜空。みたいなそれが穴から覗いて広がってた。こんな時でも、こんな時だからだろうが。全てを投げ出して綺麗だなと傍観してた――



 もしこれがトリップの成功例なら。


 ……その世界でも、皆の関係が今までみたいに続きますように。



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