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誕生日の時

これまた移してきました。

ゴー・・・ン


 ゴー・・・ン


  ゴー・・・ン


「・・・まー!・・さまー!

 アカ様ー!アカ様ー!!」

「何処に行かれたのですかー?」

「居ませんね・・・」

「メイリア!そっちは?」

「居られませんでした・・・。」

「そう・・・」

慌ただしく走り回るメイド・執事達。

否、彼らは王族直属の使用人たち。


「ああ・・・なんかやばいかも・・・。」


走り回る使用人たちを見ながら少女はつぶやく。

少女の名は、”赤のアリス”。

使用人達の言う、”アカ様”だ。

「うー・・・どうしよ・・・」

少女は大きなトランプのオブジェの後ろに隠れていた。

不意に。


ガッシャーーーーーーーーーーーーンッ


あ、やべ。

トランプのオブジェの横に置いてあった

ウツクシ草の植木鉢を倒してしまった。

「あーーーーーーーーッッ!アカ様!」

「げっ!見つかったっっ!」

メイリアが叫ぶ。

途端に走り出すアカ。

「お待ち下さい!アカ様!」

「うおおおーーーー!!」

負けじと追いかけるメイリア。

メイリアが次に言った言葉はこうだった。


     「今日こそメイリアがアカ様を捕まえるのです!!!!」


おおー、がんばれーメイリアー、アカ様も負けないでくださいー、わー

などと応援の声。

そして、ついにメイリアの手がアカに届きそうになった。

わー!いけー!その調子だー!

きゃー!アカ様ー!がんばってー!

応援もいっそう大きくなる。

そして、廊下の角を曲がった時・・・


      ゲームは決着の着かないまま終わった。


-使用人室にて-

「何をやっているのですか!!!!」

「ううう・・・」

「はうう・・・」

教育係のナノの声が部屋いっぱいに響く。


(後で聞いたが、ナノの声は

 遠く離れたクローバーの港でも観測されたそうだ。)


「何のために、使用人と姫が王宮内で追いかけっこを

 しなければならないのですか!!しかも他の使用人たちも巻き込んで!!」

彼の名は、ナノ=サルバルト。姫の教育係である。

「あ、あの、他の使用人たちは、わ、私がお願いしたんです!」

「ごめんなさい!ナノ!許して!私が暇だったからメイリアにお願いしたの!!」

「許しません!もう当分アカ様は学問に励むこと!

 メイリアは、一ヶ月間、大広間の掃除をやるのです!」

「「えええええええーーーーーーーーーーっ!?」」

「文句は言わせません!さあ、アカ様は部屋で学問をお教えしましょう。

 メイリアは、これから自分の持ち場に戻ってそこが終わったら大広間の

 掃除へ行くのです!」

「「はぁあーい・・・。」」

メイリアが去っていく。

「さあ、部屋でおべんきょーするのです。姫。」


そう。

さっきから怒られているこの少女が不思議の国の姫。

そして・・・・

「アカ、またメイリアとおいかけっこしていたの?」

「あ、クロ。見てたの~?」

クロと呼ばれた少女もまた、姫。

”黒のアリス”。アカの双子の妹である。

「アカ様、もう少しクロ様を見習ったらどうですか?

 クロ様は、朝からずっと勉強していたのですよ?」

「ええっ!?クロ、すごーい・・・」

「あたりまえのこと」

少し恥ずかしそうにクロが言う。

「このままでは、女王の座はクロ様のものに

なってしまうかもしれませんねえ・・・」

横目でアカを見るナノ。

「ええっ!?・・・負けてられないよぉ!!」


それもそのはず。

姫が双子で生まれたので、優秀なほうが女王になる。


アカは運動は得意だが、学問は苦手。

クロは学問は得意だが、運動は苦手。


だからアカは学問でクロに勝てばいいのだが、

最近、クロが急激に運動能力が良くなり始めたのでさあ大変。。

「よぉーしっ!ナノ!今日こそ4桁の引き算をマスターするのよ!!」

「おお!アカ様がやる気になられた!このナノが張り切ってサポート致します!!」

「4けたのひきざんって・・・」

(クロは既に掛け算をマスターしている。)


「それにしても、クロ様はまだ50歳なのにもう80~90歳の勉強をやっていらっしゃる・・・

 天才ですね。」

「それほどでも(照」

照れるクロ。

彼女は、あまり感情を表に出さないほうだが、

照れる・怒る・喜ぶの三つは、しっかり分かる。

それに対してアカは感情がすぐに顔に出てしまう。

「ちょっとぉーー!早く教えてよ!」

「はいはい、今。」

今日も、平和な時が続いていた。


「・・リア、例の<アレ>。・・・ってるの?」

「・・・・ん調に進んでおります!」

「しっ!声が大き・・・」

「なーんーのーはーなーしー?」

「「わあああああああああああああ!!!!??」」

「ひゃあっ・・・声が大きいなあ、二人とも。」

メイド二人がひそひそ話をしているのが気になったのか、

割り込むアカ。

「す、すみません。何でございましょうか。アカ様。」

「さっきの話、何~?」

「そ、それは、お教えできません。」

「え~。きーにーなーるぅ~」

「駄目ですっ!これは、さぷ・・・ムグッ」

メイリアの口を塞ぐ。

「さぷ?さぷ・・・何?」

「い、いいいいいぃいえっ何でもありませんのっ

 オホホホホホホホ・・・」

笑ってごまかすドリカ。

んで、メイリアの口を塞いだまま去っていった。

「何だろう・・。さぷ・・・?」

「どうかなされましたか、アカ様。」

「あ、ナノッ」

「はい?」

ナノに詰め寄るアカ。

「さぷ・・・なんちゃらで、私に教えれないことって何~?」

「えっ?・・・てゆーか、まず。さぷなんちゃらって何ですか。」

「しらーん」

「じゃあ、ナノにはお答えできません。」

「え~、ナノって何でも知ってるんじゃーなかったのー?」

「いくら私でも分からないことだってあります。」

そのままナノは去っていってしまった。

「くっそーどいつもこいつもごまかしやがってー。」

前、いとこのクランが言っていた言葉を真似してみる。

・・・むぅ。気になる・・・。

「さぷなんちゃらに一体何が・・・?」


‐夕食の時間-

「いただきます。。」

「いただきます。」

うーんなんだろう。

「母様?」

「なに?」

「さぷ・・・なんちゃらって何?」

「え?」

首をかしげる。

母様にも分からないのか・・・。

こうして、既に夕方。

「結局何もないのかな・・・」

「アカ!」

「え?」

クロの声。

「アカ様!こちらです!」

メイリアが手を引っ張る。

「えっちょちょちょちょッ」

引っ張られていったのは・・・・

大広間。

「え・・・?えええええええッ!?」

そこには・・・

「すっごーいッ!!」

ステージの垂れ幕には大きく

”アカ様・クロ様ご生誕10周年!!”

と大きく書かれており、

その下には大きなケーキがあった。


     「「「「アカ様・クロ様!お誕生日おめでとうございまーす!!」」」」


そこに居る全員が口をそろえてそういった。

「みんな・・・・」

「もう、アカ様ったらこーゆー時だけ

 すっごく勘がいいんですから。いつバレるかと・・・」

「ヒヤヒヤしましたよ・・・」

「えっ?じゃあ、さぷ・・・なんちゃらって・・・?」

「”サプライズ”なのですよ。」

「ナノ!ナノも知ってたの??」

「勿論なのでございます。元々これをやろうと言ったのは私なのですから。」

「ええええええっ!!??これナノの提案なの?!」

「え、何でそんなに驚くんですか?((怒」

「さ、ささささささあっケーキ食べましょうよアカ様!」

ドリカは慌ててアカをケーキの方に連れて行った。


一方、クロはというと。

「クロ様!おめでとうございます!」

「これ、誕生日プレゼントです!」

「ぷ、ぷれぜんと?」

「さあさあ、お料理を召し上がってください!」

「え、えと、その・・・」

なんか囲まれて困っていた。


『さあ!最後に、アカ様からのメッセージを頂きましょうか!』

マイクを通したナノの声が聞こえる。

『ええっ!・・・えーと、私っこんな凄いことやって貰えて、とーっても

 幸せです!!』

アカの声。

ワアアアア・・・と歓声。

『これにて!パーティーは終了と致します!各使用人は自分の持ち場に戻ること!

 担当の者は会場の片付けを開始して下さい!』

そして人々は自分の場所へ戻ってゆく。

私は・・・

うれしいと思う。

こうやって祝ってもらって

パーティーを開いてもらって。



本当は存在するべきではない、私のことを。



まあ、こんな感じで。

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