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勇者一行、魔界へ

ある日を境に、人間界は魔物の坩堝である魔界と繋がった。魔界の門からは絶え間なく日々魔物が血肉を求め、悦を求め人間界へと足を踏み入れていく。そんな混沌と化した地上を、たった4人で変えようとした勇者一行がいた。

勇者の名をランス。魔法と剣技を極めし彼は、4人の中でリーダーとして振る舞い、人々を助けては見返りの一つも求めず、魔族に怯える世界の為に、尽力した。勇者の剣と盾を持って人の為に生きる良くできた人格者だった。


魔法使いの名をエリーナ。可憐な少女ながら、魔法だけは勇者のランスすら超える才能を持っていた。攻撃魔法を使っての前衛と、メンバー各々にバフをかける後方支援など、勇者一行の頭脳としてランスと共に主力の1人としてあり続けた。


格闘家の名をゼイルス。筋骨隆々な青年は、どんな困難すらも打破する両の拳と、両の脚をもってして、最強の前衛だった。

強さだけを求めた彼は、肉体でいえば間違いなく人類最高峰だろう。


僧侶の名をフォズ。エリーナよりも華奢で、10歳になったばかりの聖女だ。だがあふれんばかりの聖なる力を秘め、人が傷つくのを嫌い、治療役として一行に貢献した。


そんな彼らは、地上にて迷える民を救い

傍若無人の限りを尽くす魔族を滅ぼし

魔界の門すらを突破して、

魔界の魔王城へと足を踏み入れたのだ。


「いよいよ魔王との決戦だ、ここで勝てば、地上には平和が訪れて、魔物の居ない世界がやっと手に入る。」


「魔王…この道中も骨のねぇやつしか

いなかったからな、オレを楽しませて欲しいもんだぜ。」


ランスが口を開き、最終戦に向けての激を皆に飛ばす。一行の中でも戦闘好きのゼイルスは興奮した様子でそれに頷く。


「にしても、ここは魔王城…敵の本拠地なのよね?何でこんなに魔物がいないのかしら…」


「楽な事に変わりはないですが…

逆に恐怖心を煽りますね…こわい、です。」


だが不審な点に気づいたのはエリーナだ

そう、魔王城だというのに、先ほどから

魔物を1匹とすら見ていない。なんなら、魔界の門から城にたどり着くまでの間でさえだ、まるでもぬけの殻のようになっているこの事実に、最年少のフォズが怯える。


「…!オマエら、戦闘態勢に入れ。

何か、来てるぞ」


前線のゼイルスが口を開いた。

するとそれとほぼ同時。激しい足音と共に

1匹の魔族がランスに切りかかってくる。


ガキィン!!!


「ぐぁッ!」


激しい金切り音とともに、ランスは弾き飛ばされ、魔王城の廊下を転がった。


「「「ランス!」」」


瞬時に残りの3人も戦闘態勢に入る

ゼイルスを最前線に、エリーナが後方

フォズは2人に隠れるように構える。


「勇者一行さま…でしょうか?

私、魔王エリュシオンさまの執事。

死剣のメタフィス。と申します。

さて、切りかかっておいてなのですが

本日はどのようなご用事で…?」


姿がしっかりと見え、そこに居たのは

スーツ姿に眼帯をした魔族。

刀を1本携帯しているが女のように華奢だ


(こんな奴の何処からあんなパワーが…)


怖気付くもランスは啖呵を切って叫ぶ


「用事も何もねぇだろ…魔王を倒しに

来たんだよ!!!!!」


【魔法剣 焔雷の(ヴァジュラ)


炎と雷を刀に纏わせてランスが

メタフィス目掛けて突っ込んでいく。

だがメタフィスは呼応するかのように

刀を抜き、疾風のごとき早さで、ランスを吹き飛ばした先程の豪剣を飛ばしていく。

早くて重い攻撃にランスは防戦一方だ。


「魔王様を、ですか…お生憎ですが…」


「うるせぇ!!!!」


火火斗落死(かかとおとし)】!!!


喋っている最中のメタフィスの脳天に

ゼイルスは飛び上がって踵を落とした。


「ゼイルスナイス!このまま私とフォズで

バリケードを貼って閉じ込める!

余計な戦いは無視して先に…」


そこまで言いかけたエリーナだったが

急速に喉が締まった。

なぜなら、メタフィスが音もなく

自身の後ろに表れ、首を絞めたからだ。

ランスが振り向きフォズに目をやると、

もうすでに首元に刀をあてられている。


「あっ、あぁ…ランス…らんすぅ…」


今まで安定した勝利をしてきたからこそ

フォズに身の危険が生じた事はなかった

それがいま事実として現れたことで

幼いフォズは恐怖で動けなくなった。


「貴様…2人を離せ!」


ランスが吠えると、メタフィスは呆れて


「私の話を聞いてもらって良いですかね

魔王様ですが、生憎今は不在です。

戻ってくる見込みもございませんし…

そもそも、今魔界がどのような状況か

あなた方はご存知なのでしょうか?」


と言う。


「魔界の状況…?何の、話…」


エリーナの問いにメタフィスが答える


「そもそも、魔界というのは、地上のように

統一されているわけではございません。

領土が分かれ、そこを収める魔王が居るのですその数がざっと12個…」


「12…!?ってことァ、魔王ってのは

12体も存在するってことか?」


「ええ、冥獄 殺戮 虚無 破壊 強欲

祝福 戦火 赤血 残虐 究極 暴力

そして空白。魔界はこの12地方を元に

存在し、各地を統べる魔王が居ます。」


そして、メタフィスが衝撃的な一言を放つ


「現在は、この12の魔界をひとつにすべく、魔王が各国の軍を使い、魔王同士の戦争が行われているのです。」


「なに…それ」


「有り得ない…何その話…」


エリーナとフォズがあまりのスケールに

萎縮してしまう。だが、この2人は違った。


「関係ない、ならばその戦争に乗じて

魔王を12体葬り去るだけだ。」


「強えやつがそんなにいんのか

最強にワクワクしちまうな…」


ランスとゼイルスはこう言い放つと

気を高めてメタフィスに近づく。

メタフィスはそんな2人を見て、

ハァとため息をついてこう言った。


「お早いお帰りですね。エリュシオン様」


「「!?」」


ふたりが後ろを向くとそこには、

白目と黒目が反転し、角の生えた魔族。

紫のローブを纏ったその姿は、

一見、人間の青年と背格好が変わらないが、その立ち込める魔力が、只者ではない事を肌で感じさせる。


「掃除が、」


ドスの効いた低い声。魔王エリュシオンは

そう言うと目にも止まらぬ早さで

ゼイルスの顔面を殴りつける。


ドゴォン!ゴッ…!!!!


交通事故が怒ったかのような

爆音が鳴り響き、ランスが目をやった先には、顔を変形させてゼイルスが壁にめり込み意識を失っていた。


「終わっていないようだが?メタフィス」


血がついた拳をピッピッと振り払いながら

エリュシオンはメタフィスに話しかける。


(やらなければ殺される…)


衝動に駆られたランスは、刀を持って

背後から首を一閃。はね飛ばそうとしたが


パキ…。


手打ちのパンチであっさりと折られ

重さのバランスが崩れたランスが

前のめりになったところで


ドボォンッ!!!!


エリュシオンの後ろ回し蹴りが

ランスの右アバラを全て砕いてしまった。

途端に白目を向き、ランスは意識を飛ばす


「申し訳ありません。エリュシオン様」


メタフィスが深々と頭を下げる。


「うあ、うあぁ…ランス…ゼイルス…

ひっぐ…ぐ、す…。」


惨劇を目の当たりにしたフォズは

年相応にボロボロと泣き出してしまった。


「なんて…強さなの…」


魔法を日々使うことで魔力に精通した

エリーナだからこそ分かる。

エリュシオンの底の知れない魔力。


「ところで、この羽虫共は何だ。

我が魔王城に土足で来おって。」


「あぁ、現界の勇者一行だそうですが…

エリュシオン様がもう倒されてしまいましたね。如何いたします?」


メタフィスの説明をつまらなそうに聞くと


「我が軍の激として明日公開処刑にする。

その時までに地下牢にでも繋いでおけ」


エリュシオンはローブを翻して

つまらなそうに玉座に戻っていく。


「…だそうですので、すみません。」


ギュグッ!!!!!!


「くぁ…がっ…」


メタフィスは、エリーナの首を強く締め

ランス、ゼイルス同様に気絶させた。


「ひっ…ひぃ…」


それを見て、いくら幼いフォズでも察する

次は自分であるということに


「嫌…やだ!やだやだ!やめて!!」


「う〜む…すいませんね、私とて

幼女を痛ぶる趣味はないのですが。

なにぶん、魔王様というのは絶対なので」


ギュゥ…


動けないフォズの首に手を伸ばし

エリーナ同様に、フォズの首を締める。


「ぁうあ…かは、か”はっ…」


「ふむ…どうしたものでしょう。

力加減を間違えては首を折りそうですね」


「がっ、ひゅ、…だぶ、…っだふ…」


もがき苦しみながら、フォズが

何かをメタフィスに伝えようと声を出す。


「抵抗しても辛いだけですよ?

力を抜いてもらって…」


「せん…ぞう、てづだうっ…」


フォズは、確かにそう言った。


「らんずも、ぜいるずも、えりーなも…

まかい、ひとつにずる、てづだいずるっ

だから、みんなを、ごろさないで…」


「…なるほど」


ギュッ!!!!!!!


フォズの訴えを最後まで聞くや否や

メタフィスは瞬間的に力を込めて

フォズを気絶させた。


「…聞くに絶えない絵空事ですね。

魔王と勇者が共闘して…魔界統一など」


吐き捨てたタフィスの元に


「そうだろうか?」


エリュシオンが顔を乗り込んでやってきた


「…エリュシオン様!戻られたとばかり

それで、そうだろうか。というのは?」


「クク、死んでも良いそこそこの兵士が

4人手に入るのだろう?我が軍にとって良い事ではないか。」


「…そういう考え方もございますか」


かっはっはっと大笑いをして

エリュシオンは続けてこう言い放つ


「それにメタフィス聞いたか?このガキ

皆を殺さないで、と言ったのだ。

私を殺さないで、ではなくな。

仲睦まじいこの面子が

魔界の戦争にて一人一人欠けたら

此奴らの良い表情が見れそうだろう?」


ニィと笑って再び去るエリュシオンに

執事ながらメタフィスは

背筋に冷たい物を覚えた。


(流石ですね…破壊の魔界、魔王

“破壊の子” エリュシオン様)


メタフィスは心の中で呟くと

勇者一行4人をそっと担ぎ上げ、

魔王城の医務室へと向かっていった。



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