episode_5 一人の日に聞いた不穏な話し声
西田さんは足早に急行電車に乗り込んでいってしまった。
「ちょ、ちょっと」
俺も急いで追いかけたが、電車は俺を乗せること無くドアを閉めてしまった。
電車の中にいる西田さんを見ると、すこし表情が暗めな気がした。
頭をみると、やはりなにやら字幕テロップがうかんでいる。うっすらと[もしかして、佐藤くんって⋯]とかいてあるように見えた。
しかし、電車が動き出してしまったので、なんて書いてあるか完全にはわからなかった。
急行電車が出ていくと、ホームは一気に静かになった。急に肌寒くなった。
俺もさっきまでの感情の起伏はどっかへ行ってしまい、冷静になった。
それにしても、俺には西田さんの行動が良くわからない。
学校から出る時はなんか怒ってそうだったのに、その後ショッピングデートに誘ってきて、それなのに余計なことはするなって⋯。俺の気遣いが嬉しいのか、嫌なのか、わかんねぇよ⋯。
女心、難しいな⋯
各駅停車が来た。乗り込む。西田さんが先に帰ってしまったので、わざわざ宮後坂に行く必要がない。
なーんだ、こう考えると、独りってのも悪くはないのかもしれねぇよな。
このときの俺は心の片隅でそう思ってしまった。
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翌日、昨日と同じように西田さんと待ち合わせるために一回宮後坂まで行ってから学校に向かった。
しかし、西田さんは乗ってこなかった。
おいおい、マジかよ⋯。俺と学校に一緒に行きたくないのか⋯?昨日は一人で急行に乗ってっちゃったし。
やっぱ、怒らせちゃったのかな⋯。
いや、でも単にたまたま欠席っていう可能性もあるしな⋯
明日大丈夫かな___、そういやまだ連絡先交換してないからなにか聞くことも出来ないし。
電車は紅葉台についた。なんだか昨日と比べて
昨日とは打って変わって、
学校に着いて、席に座ろうとするとをと須田が俺に話しかけてきた。
「なあ佐藤、ちょっと外出ようぜ 」
「おお、いいよ 」
着ていたベストを席にかけて、俺は須田について外へ出た。
中庭へ出ると、肌寒さを感じた。
俺らは校舎の外にあるベンチに座った。
ベンチに座ると須田は話しかけてきた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。」
「ん、どうした」
「俺ちょっと佐藤に聞きたいことがあるんだよ。 」
「おお、何?」
「お前、もしかして付き合ってるのか? 」
須田がそういった瞬間、木枯らしが吹いた。その風は冷たかった。ベストを着てくればよかったかもしれない。
俺は冷や汗をかいた。
「え、ちょ、な、なんでそんなことを急に⋯ 」
「なんか、俺の彼女から聞いたんだよ。昨日西田さんとお前が一緒に帰ってたって。でも誰も本当なのかどうかわからないらしいからさ。ちょっと気になったからお前に聞いてみたんだよ。」
「え?き、昨日?」
「ああ。昨日の放課後の話だってよ 」
俺は困惑した。というのも昨日の帰りはあまり西田さんと一緒にいたタイミングが少なかったからだ。バスでは俺と西田さん以外誰も乗っていなかったし、電車は別々のやつに乗った。一体どのタイミングを見たのだろうか⋯?
「それは誰かの見間違えじゃないの? 」
「いや俺もそう思ったんだけどよぉ、女子の間ではもう結構話題に上がっているらしいぜ。みきは何人かからこの話聞いたらしくって。ま、俺はお前が西田さんみたいな学年で可愛い女子ランキングTOP5に常連入りするような子と付き合うなんて思えないけど。」
「最後の一言は余計だよ(#^ω^)」
と、冷静に突っ込みつつ、俺はそれ以上に西田さんと一緒に帰ったことがなぜこんな早く拡散されていることに戸惑った。
「それで、実際のところはどうなんだよ。お前と西田さんは付き合っているのか? 」
俺は困った。一応今はカップルってことになっているけど、1週間後には分かれている可能性が高いこの関係、一体どうやって説明すればいいんだ。でも下手に嘘をついても、また一緒に帰ってるところを見られて女子の間の5Gみたいに早い情報網で拡散されそうだし⋯
「それは、た、ただ知り合いなだけだよ。たまたま家の方向が同じで、それで⋯ 」
キーンコーンカーンコーン__
冷や汗をかきながらなんとか弁明してると、チャイムが鳴った。朝のHRが始まる時間だ。
「おっとやべえ時間だ、続きは後で教えてくれよな。とりあえず行くぞ 」
須田が走り始めた。俺も急いでついて行った。急がないと遅刻になってしまうから全力で走った。
でもそんな中で、西田さんと俺の複雑な関係を説明しなくて済んだので、少し安心してしまった俺もいた。
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結局、西田さんは今日は欠席だったそうだ。
とりあえず、朝いなかったのは俺と一緒に登校したくないという理由じゃなくて少し安心した。
放課後、部活を終えて帰ろうとすると、3組から聞いたことあるような声がした。
「あーはっはっは。それおもしろーい」
「だよねだよね〜。ここではこんなおバカなことしてるのに、最後はこの二人、結ばれちゃうんだよ。」
「えーまじで?この二人が??」
「そうなんだよー、胸熱じゃない???」
⋯思い出した。そうだこの声、木曜日の人たちだ。西田さんがモンブランケーキ好きってってこと知ってた人たち。でも、西田さんと仲悪いんだっけな⋯。
気になって三組を覗いたが、窓のカーテンがしまっていて、中は見えなかった。
廊下で誰か待つフリをしながら会話をそっと聞いた。
「こんなバカやってて結ばれるなんて、やっぱ漫画の世界はいいなぁ。それに比べて、私なんて⋯」
「落ち込まないでよ里奈、だからこうして西田に復讐してるんじゃない。来週にはあいつも恥ずかしさでいっぱいになってるわよ。」
「そ、そう、よね。あと五日で私を蹴落としたあいつにも罰が下るものね。」
「そうよ。だから明日、一緒に頑張りましょ 」
えっ⋯、こいつら、西田さんにそんな大きな恨みを持ってるのか⋯?怖すぎだろ⋯。何が一体あったんだよ…。
でも明日って、、俺と西田さんはショッピングに行く日だよな。
じゃあ、あいつらは一体何をするんだ⋯?。あいつらは俺らがデートするなんて知らない⋯よな?
⋯いや、待てよ。朝言ってた須田の女子同士の5Gみたいに早い情報網だったら、俺らが日曜デートすることまでバレてるかもしれない。なんてこった。
このままじゃ、デート中に西田さんの身に危険が降りかかるかもしれない。
ここはなんとしてでも、彼氏である俺が西田さんを守らなければ⋯。
そしてもし守り切ることが出来たら⋯⋯西田さんは今度こそ俺のことを好きになってくれるかもしれない。
いつの間にか、俺の心は一昨日のようにまた燃えていた。
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