駒の値段 全体集会
翌朝、俺たちは第七棟の大ホールに集められた。
三年生から十年生まで、全員が集まっていた。
150名以上が、段状に並んだ席に座っている。
四大派閥それぞれが、ブロックに分かれて着席していた。
蒼穹会が左翼。
紅炎団が右翼。
白鷺閥が中央後列。
玄狼衆が中央前列。
俺たち新入三年生20名だけが、ホールの中央に立たされていた。
立たされている…
その言葉が、正確だった。
椅子は用意されていなかった。
壇上にアウアー副総長が立った。
「本日は、新入三年生の派閥配属を決定する。方式を説明する」
アウアーは感情なく続けた。
「本学院の派閥配属は、入札制による。各派閥は、新入三年生の基礎学習終了試験の序列を参照し、全ての新入三年生の者に対して入札を行う。落札した派閥に、当該学生は配属される」
入札制…
俺はその言葉の意味を、一瞬で整理した。
オークションだ。
俺たちは、買われる。
「入札に用いる通貨は、各派閥が王国内の活動によって得た報酬を原資とする」
「派閥は、王国の依頼を受けて戦闘参入、情報収集、警護、交渉、調査、その他の活動を行い、報酬を得る。その資金を派閥の運営費、情報購入費、武器・備品の調達費、そして今回のような人材獲得費に充てる。派閥は国家から認められた自律的な組織であり、資金の用途は派閥の裁量による。尚、支払いは金貨のみである。」
派閥は小さな国家だ。
王国に守られ、王国の仕事をこなし、報酬を得て、自分たちの勢力を維持し、拡大する。
そしてその拡大の一環として…
今日、俺たちを買う。
中央に立たされた20名の顔を、俺は横目で確認した。
ラウルの顔が青い。クルトが口を引き結んでいる。
エドは無表情だった。
ヴィクターは…
最初から表情がなかった。
「入札は序列の高い者から順に行う。最高入札額を提示した派閥が、当該学生を獲得する。配属の拒否は認められない」
配属の拒否は、認められない…
ここに人権はない。
俺たちは今日、駒として市場に立っている。
アウアーが最後に言った。
「開始する!」




