玄狼衆 呼び出し
説明会から三日後。
俺のもとに、一枚の手紙が届いた。
朝食の時間、食堂のテーブルの上に置いてあった。
いつ、誰が置いたのか。
気づいた者は一人もいなかった。
封蝋に紋章があった。
狼の横顔。
玄狼衆の紋だ。
「本日の夕刻、第七棟三階を訪ねよ。一人で来ること」
以上だった。
差出人の名前はなかった。
日付もなかった。
なぜ俺の食卓にあったのかも、書かれていなかった。
エドが横から覗いた。
「玄狼衆か」
「ああ」
「行くのか」
「行く」
エドは何も言わなかった。
しかし、俺の顔を一度だけ見た。
何かを言いかけて、やめた。
それがエドなりの「気をつけろ」だと、俺は受け取った。
第七棟。
学院の敷地の一番奥にある建物だ。
基礎学習の二年間で、一度も立ち入ったことがない。
講義棟でも、訓練棟でも、寮棟でもない。
用途を聞いたことがあった。
誰も答えなかった。
教官でさえ、話題を変えた。
夕刻、俺は一人で第七棟に向かった。
渡り廊下を抜けると、空気が変わった。
音が消えた。
学院の中にいるはずなのに、喧騒が届かない。
石造りの廊下の壁が厚いせいか、あるいは──この場所が、意図的に音を遮断しているのか。
扉の前に、人が立っていた。
二十代と思われる男だ。
学生服ではない。黒い詰め襟の上着。
腰に短剣を帯びていた。
学院内で、帯剣を許可されている者がいる。
それが何を意味するか──俺は理解した。
男は俺を見た。何も言わなかった。
ただ、横に一歩ずれた。
通れ、という意味だ。
廊下の空気が、また変わった。
重くなった。




