学院が変わる日 説明会
三年生最初の日、全員が大ホールに集められた。
しかし、そこにいたのは、俺たち20名だけではなかった。
三年生から十年生まで──上級生が、全員集まっていた。
ざっと見て、150名以上。
ホールが、人で埋まっていた。
上級生たちは俺たちとは明らかに違った。
立ち方が違う。
目の動き方が違う。
俺たち新入三年生を見る目が、観察している目だった。
測っている、値踏みしている…
その視線の意味を、俺はすぐに理解した。
派閥が、新しい駒を品定めしている。
エドが小声で言った。
「……なんか、雰囲気が違う」
俺は頷いた。
「違う場所に来た、ということだ」
壇上に立ったのは、学院総長ではなかった。
見覚えのない男だった。
40代そこそこ…
軍の正装に近い服。
胸に複数の勲章。
立ち方に隙がなかった。現役か、元軍人だ…
「私は学院副総長グスタフ・アウアーだ。三年生以上の学院運営を担当する」
副総長…
基礎学習の2年間では、一度も名前が出なかった人物だ。
つまりこの人物は、基礎学習とは切り離された場所にいた。
「三年生以上の学院は、基礎学習と異なる原理で動く。説明する」
アウアーの声は低く、よく通った。
感情がなかった。淡々と、事実だけを告げる声だった。
「本学院の三年生以上は、派閥制を採用する。学生は何れかの派閥に所属し、派閥が学内の権限・資源・序列を管理する。個人の成績は、派閥の力によって増幅もされ、減衰もされる」
増幅もされ、減衰もされる。
つまり、個人でどれだけ優秀であっても、弱い派閥にいれば評価が下がる。
逆に、強い派閥の中にいれば、個人の評価が底上げされる。
これは個人の競争ではなく、集団の戦争だ。
「現在、学院内には四つの主要派閥がある。各派閥は王宮の下部組織と連携しており、派閥の力は王宮における実際の影響力に直結する」
王宮との連携。
学院の派閥が、そのまま王宮の勢力図と繋がっている。
学院の序列は、卒業後の実際の権力に直結する。
つまりここで負けた者は、この国の中枢から遠ざかる。
「新入三年生は、来週中に所属派閥が決定される。決定は本人の希望ではなく、派閥側の判断による」
俺は静かにその言葉を整理した。
希望ではなく、派閥側の判断。
つまり、俺たちは選ぶのではなく、選ばれる。
今この瞬間も、上級生たちの視線が俺たちを測り続けている。
アウアーが最後に言った。
「以上だ。質問は受け付けない」
壇上から降りた。
それだけだった…
この場で何が起きるかを知っている者は、当然そうなる。
説明することが全てであって、意見を聞く必要などない。




