2-4 最終終了試験 試験が終わった日の夜
二日間の試験が終わった夜、同級生たちが中庭に集まった。
誰が言い出したわけでもなかった。
気づいたら、20人が揃っていた。
ランプが中央に置かれた。
春の夜の風が、炎を揺らした。
最初に話し始めたのは、クルト・ハーゲンだった。
入学時から陽気な男で、剣術は常に中位だったが笑顔だけは上位だった。
「1年目の剣術試験で、俺は開始5秒で転んだ。石畳に躓いて」
笑い声が上がった。
「俺は馬に3回振り落とされた」と別の声。
「地理で王都の位置を北に書いた。南なのに」
「外交礼儀の試験で、お辞儀の角度を間違えて試験官に謝られた」
笑いが続いた。
誰かが転んだ話。誰かが間違えた話。
2年間の失敗が、夜の中庭に広がった。
エドが珍しく笑った。
声には出さなかったが、口元が動いていた。
俺はそれを見て、少し驚いた。
エドが感情を見せるのは、珍しいことだ。
ヴィクターは笑わなかった。
しかしその表情が柔らかかった。
目が、少し違った。
あの鋭い目が、この夜だけは違う温度を持っていた。
俺も笑った。
本当に、笑えた。
前世では、こういう夜があった。
仕事が終わった後、同僚と居酒屋で失敗を笑い合う夜。
競争があり、評価があり、それでも同じ場所にいた者だけが共有できる空気。
7歳の体で、俺はその空気を再び知っていた。
「エド」
俺は隣に言った。
「何だ」
「2年間、よかったな」
エドが俺を見た。
1秒あってから、小さく頷いた。
「ああ」
それだけだった。それで十分だった。
2年間、俺たちは競ってきた。
序列があり、給金の差があり、選択権の差があった。
それでも…
この中庭にいる20人は、同じ時間を生きた。
しかし、その夜俺は知らなかった。
翌朝から始まる「三年生」が、この穏やかな関係を根底から変える場所であることを。




