序列最下位
クレアが採点票を持ったまま、俺を見ていた。
感情のない目だった。しかしその目が、1秒だけ止まった。
「集計する」
それだけ言った。
5分後、総長が壇上に戻った。
「序列順位を発表する」
名前が呼ばれていった。
1位から順に。
1位と2位には、特権入学者の名があった。
貴族の子弟だ。この試験の構造を最初から知っていた者たちだ。
エドの名前は7位に呼ばれた。
ヴィクターは8位だった。
そして最後。
「20位、ルーク・レギナルド」
会場がざわついた。
入学生代表。
それがマイナス100点一つで、最下位になった。
エドが俺を見た。
何も言わなかった。
ヴィクターが俺を見た。
眉が、わずかに動いた。
それだけだった。
クレアが採点票を持ったまま、立っていた。
こちらを見なかった。
結果を教える気はない。
それがこの試験の作法だと、今わかった。
俺は静かだった。
悔しいか、と自分に聞いた。
ー悔しい。
序列最下位。
給金は最低額だ。推薦権も、家紋授与権も、家への恩給もすべて圏外になる。
数字は見ていない。しかし、計算はできる。
マイナス100点一つが、すべてを覆した。
父王の言葉は正しかった。
「仕組みを守ることと、人を守ることは、時に矛盾する」
その矛盾に、俺はまだ答えを持っていない。
自分の思考の限界を、父王に今日初めて見せられた。
20位。最下位。
孫子は言う。
「敵を知り、己を知れば、百の戦いで危うくなることはない」
俺はまだ、己を完全には知っていない。
しかし最下位から始まるなら、上がるしかない。
見くびられた者は、警戒されない。
警戒されない者は、自由に動ける。
序列最下位という「位置」を、どう使うか。
俺はゆっくり考え始めた。




