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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
北伐 龍は北へ向かう

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山岳殲滅作戦 前編

作戦会議が始まった。


8名の隊長と16名の副隊長が、地図を囲んで座っていた。焚き火の明かりが地図を照らしていた。明後日の夜明け前に敵が動くはず、時間がなかった。


ヴィクターが立ち上がった。

地図に指を当てた。


「現状を整理します」と言った…

「敵6000は北西の山岳地帯を拠点にしています。主力は騎馬部隊と馬上槍部隊。山の3つのルートに分散配置されています。」


指が3か所を示した。


「友軍3万は山の麓で後方支援中です。敵はその友軍を狙っています。動くのは明後日の夜明け前と見ています。友軍は依然、気づいていません…」


「なぜ気づいていない?」とガルドが言った。


「偵察が薄い場所に配置されているからです。山岳地帯からの奇襲は想定していない様子です。」


バロックが「敵の数は正確か?」と言った。


「エリカが3度確認しています。6000で間違いありません。」


バロックが頷いた。


「では俺が話す…」とルークが言った。


全員が俺を見た。



「この作戦の条件を改めて確認する…」とルークは言った。「火は使えない。この先の街に被害が出る。そして、こちらは1兵も犠牲を出せない。全員、前線に連れて行く…」


ドレンが「1兵も、というのは難しくないか?」と言った。正直な答えだった。


「難しい。しかし、そのつもりで動く。覚悟の問題だ。」とルークは言った。

「では作戦だ…」


地図に手を伸ばした。


「敵の主力は騎馬と馬上槍だ。平野では強い。しかし山岳では…」


「機動力が落ちる」とエルザが言った。


「そうだ。山道では隊形が崩れる。馬が走れない場所が多い。それを使う。」


バロックが「続けろ」と言った。


「第一段階、影狼隊が先行して山中に潜入する。敵の動きを全部把握してくれ。配置、数、交代の時間、死角全部だ…」


「承知した」とフォルクが言った。


「第二段階、黒獅子隊と雷撃隊が正面から敵を引き付ける。」


ドレンが「俺が囮か?」と言った。不満そうだった。


「一番大事な仕事だ…」とエドが言った。

「俺たちが引き付けなければ、他の隊が動けない。」


ドレンが「……そうか」と言った。

「わかった。やる!」


「第三段階、双翼隊と鉄壁隊が両翼から回り込む。敵が正面に引き付けられた瞬間に側面を突く。」


エルザが「弓隊が先に崩して、槍隊が突く」と言った。


「そうだ!」


「第四段階、礎隊が中央を押し上げて圧迫する。敵を山の奥に追い込む。」


ヴェンツェルが頷いた。


「第五段階、盾牙隊が退路を全て塞ぐ。逃げ場をなくす。」


ヴァルクが「承知した」と言った。


「黒刀隊は温存する。最後の切り札として、俺が直接指示する。」


バロックが「……わしの隊をそう使うか」と言った。少し面白そうだった。


「最も信頼できる部隊だからです。」とルークは言った。


バロックが「口がよく回るな…」と言った。


「おじじ殿が何度でも言わせるので…」とルークは言った。


バロックが「…うるさい子だ」と言った。

しかし笑っていた。



ヴェンツェルが手を挙げた。

「殿下。退路を塞ぐ前に、降伏の機会を与えるべきではないでしょうか?」


場が静かになった。


「与える」とルークは言った。

「第五段階で退路を塞いだ後、降伏を促す。でも応じなければ、一才の容赦しない。」


「降伏した者はどうしますか?」


「捕虜にする。後で友軍に引き渡す。」


ヴェンツェルが「…承知しました」と言った。


「ヴェンツェル殿がそれを言ってくれて良かった…」とルークは言った。


「なぜですか?」


「俺が言い忘れていたからだ。あのままだと、殲滅にしなければならなかった。」


ヴェンツェルが、少し笑った。

初めて見る笑顔だった。



議論が続いた。

クルトが「正面から引き付ける際の撤退のタイミングを決めたい…」と言った。

「エドとドレンが深追いしすぎると、とても危険です。」


「俺は深追いしない…」とエドが言った。


「ドレン殿は?」とクルトが言った。


ドレンが「…気をつける。」と言った。


「気をつけるではなく、ドラ2打で必ず引いて下さい。」とクルトが言った。


「わかった。2打で引く!」


ヴィクターが「山道の幅を確認したい。重戦車は入れますか?」とヴァルターに聞いた。


「主要ルートは入れる。細い道は無理だ」とヴァルターが言った。「細い道はケルバーの軽装隊が走る。」


「わかりました!」


シャルナが「弓の射程距離を確認したい。山道での射角はどうなりますか?」とエリカに聞いた。


「上から撃てる場所があります。地図に印をつけます。」とエリカが言った。


話し合いが続いた。

細かい部分が埋まっていった。


バロックが黙って聞いていた。口を挟まなかった。全員が自分で考えていたので、それでいいと思っていた。



作戦会議が終わった頃、夜が深くなっていた。


「明日の昼、影狼隊が先行する」とルークは言った。

「全隊、準備を整えろ。明後日の夜明け前に動く。」


「承知した」と全員が言って、散会した。


バロックがルークの隣に残った。


「どうだ?」とバロックが言った。


「緊張しています…」とルークは言った。


「それでいい…」


「いいんですか?」


「緊張していない将は、慢心しておる。」とバロックが言った。「緊張は集中だ。お前が緊張している間は、うちの連中は安心して動ける。」


ルークは、バロックを見た。


「おじじ殿……」と言った。


「なんだ?」


「ありがとうございます…」


「礼はいらん…」とバロックが言った。

「勝ってから礼を言え!」


ルークは「はい……」と言った。


夜空に、星が出ていた。

明後日、この星の下で、黎明義軍は初陣を迎える。



翌日の昼、フォルクの影狼隊500名が山中に消えた。


黒い影が山道に溶けていった。


その夕方、ミア姉様が合流した。

馬で来たが、息を切らしていた。


「間に合った……」と言った。


「ありがとうございます。」とルークは言った。

「とても無理をさせてしまいました。」


「無理じゃないよ。」とミア姉様が言った。「でも、もう少し早く言ってちょうだい。黒で統一って…、大変だったんだから!!」


「申し訳ありませんでした…」


ミア姉様が全軍を見渡した。

黒い甲冑、黒い鎧、黒い剣が広がっていた。


「でも、かっこいいじゃない…」と言った。

目が輝いていた。


「ミア姉様のおかげです…」


「わかってる!」とミア姉様が言った。

上品に笑った。


バロックが「来たか…」と言った。


「おじじちゃん、待たせたわね」とミア姉様が言った。


「来るなりそれか…」とバロックが言った。


「あははっ!」とエルザが笑った。



夜明け前、全軍が動き始めた。


4400名が静かに動いた。黒い甲冑が闇に溶けた。銅貨の首飾りが揺れた。馬が低く嘶いた。太鼓は鳴らなかった。全員が静かに動いた。


ルークが馬上から全体を見た。


黎明義軍の初陣だった。


「ヴィクター!」とルークは言った。


「はい…」


「影狼隊からの報告は?」


「先ほど届きました。敵は予定通りの配置です。動き出しは夜明け前、あと1時間です。」


「わかった!」


バロックが馬を並べてきた。

左足をあぐらに組んで、眼帯をした白髪の老将軍が、闇の中に座っていた。


「若いの…」とバロックが言った。


「はい…」


「怖いか?」


ルークは少し考えた。

「怖くないです…、不思議ですが…」


「そうか…」


「怖くないことが、少し、怖いです…」


バロックが、小さく笑った。

「そういう感覚は大事にしろ!」


「はい…」


「では行くぞ!」とバロックが言った。


夜明け前の空が、少しずつ、白み始めていた。


「善く攻むる者は、敵、その守るところを知らず……」

ーー孫子ーー


善く攻める者は、敵に守る場所を悟らせない。

黎明義軍の初陣が始まった。

黒い影が山岳に向かって動いた。

銅貨の首飾りが揺れた。

夜明けまで、あと1時間だった…

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