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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
北伐 龍は北へ向かう

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山賊150人、降る

作戦会議は、焚き火を囲んで始まった。


エリカが集めた情報を広げた。ガルドのアジトの地図、見張りの配置、昼夜の人の動き、食料の補給ルート、そしてガルドの個人的な隠れ家の場所…


「よく調べた。」と俺は言った。


「3日かかりました…」とエリカが言った。

淡々としていた。


「ガルドを降伏させるのに、正攻法は使わない。」と俺は言った。「150名を正面から叩けば、俺たちも消耗する。仲間にしたい相手を傷つける必要はない。」


「じゃあどうする?」とクルトが言った。


「脅迫する。追い詰める、じわじわと4日間かけて…」


「4日間?!」と全員が繰り返した。


「昼間は、不自然なことを起こす。弓で脅す、落とし穴に落とす、警戒中に落石が起きる、木が突然倒れる…何が起きているかわからない状況を作る。」


ラウルが「面白そう!」と言った。


「夜は暗殺未遂だ。ガルドの寝室に入って、首元に刃を置いて帰る。毎晩…」


「毎晩入るの?」とニコラスが言った。

「大丈夫ですかね……」


「大丈夫だ。殺さない。気づかせるだけだ…」


「その方が怖いですね…」


「そう。その方が怖い…そして4日目に俺とエドで直接乗り込む。全員を痺れ薬で動けなくして、ガルドと話す。」


ミア姉様が「昼間の担当は?」と言った。


「ラウルが中心で考えてくれ」と俺は言った。「ラウルが面白いと思う方向で。但し、人を殺すな…。怪我させるず、あくまで脅しだ。」


ラウルが「イタズラみたいなもんだな、任せて!!」と言った。目が輝いていた。


全員がラウルを見た。

「楽しみすぎだろ?!」とクルトが言った。


「だって面白そうじゃん!!」



1日目 昼


ラウルが動いた。

ガルドのアジトから街道に出る山道、見張りが2名、交代で立っている場所だった。


ラウルが前日のうちに、その山道の真ん中に落とし穴を掘っていた。枯れ葉で隠し、完璧だった。


昼過ぎに見張りの1名が歩いてきた。


ズボッ!!

「うわあああああ!!」

落ちた…。穴の深さは腰まで、死なないが抜け出せない。


もう1名の見張りが「どうした!?」と駆けつけた。


ズボッ。


「うわあああ!? なんで、2個あんだ!!」

2人が穴に落ちたまま助けを呼んでいた。

ラウルが遠くの木の陰で笑いをこらえていた。



1日目 夕方

ガルドが部下を集めた。「今日、見張りが穴に落ちた。誰かが昨日のうちに仕掛けたものだ。全員、山道に罠がないか確認しろ!」


部下たちが山道を確認し始めた。


しかし、ラウルはそれも計算に入れていた。


罠を探している部下たちの頭上から、突然、丸太が転がってきた。


「うわっ!!」


丸太は当たらなかったが、転がってきた。それだけで十分だった。


別の場所では、木が突然、倒れてきた。


「うわあっ!!」


また当たらなかったが、倒れてきた。


さらに別の場所では、矢が飛んできた。

人には当たらなかったが、地面に突き刺さった。


ガルドのアジトが、にわかにざわつきだした。


「何が起きてるんだ?」「誰かが仕掛けている?」「何人いるんだ?」「もう、訳がわからない…」


ラウルが木の上で「うまくいった!」と呟いた。



1日目 夜。


ラウルが動いた。

ガルドの寝室、アジトの奥の一番奥まった部屋に、見張りが4名いた。


ラウルが音もなく動いた。見張り1名の飲み水に、ヴィクターが調合した眠り薬を一滴垂らした。10分後、その見張りが「眠い……」と言いながら壁に寄りかかって眠り始めた。


次の1名。また一滴。また眠った。


残り2名が「おい、ちゃんとしろ!」と声をかけたが、返事がなかった。

ラウルがその隙に、するりと部屋に入った。

ガルドが寝ていた。大きないびきをかいていた。


ラウルは、ガルドの枕元に、1枚の紙を置いた。

そこには「おやすみ」と書いてあった。


それだけだった。

それだけで十分だと、ラウルは思っていた。


翌朝、ガルドが枕元の紙を見た。

ガルドが「誰だ!!」と叫んだ声が、アジト中に響いた。


エリカからの報告で、それを聞いた俺は、少し笑った。


「ラウル」と俺は言った。

「お前は天才だな…」


「でしょ!」とラウルが言った。



2日目 昼


ラウルが新しい罠を仕掛けた。

ガルドのアジトの食料庫、そこに通じる道に、落とし穴ではなく「音が出る仕掛け」を作った。踏んだら大きな音が鳴る。中に何かが入ったことが全員にわかる仕掛けだ。


昼過ぎ、部下の1名が食料を取りに行った。


ガン!!

という音が鳴り響いた。


「うわっ!!」

全員が食料庫に駆けつけたが、結局は誰もいなかった。


ガルドが「誰が入った」と言ったが、誰も答えられなかった。


2時間後、また大きな音が鳴った。


「うわっ!!」

また誰もいなかった。


3時間後、また鳴った。

今度はガルド自身が食料庫に走り込んだ。


「誰だ!! 出てこい!!」

誰もいなかった。


だが、食料庫の壁に、紙が貼ってあった。

「まだいるよ」


ガルドが「……ぐっ!」と言った。


エリカからの報告でそれを聞いた俺たちは、全員で笑った。


「ラウル、どこにいたんだ?」とヴィクターが言った。


「食料庫の天井の梁の上。暗かったから見えなかった」


「怪物か?」とクルトが言った。


「褒め言葉として受け取るよ!」



2日目 夜


今度はミア姉様とエリカが動いた。

同じように見張りを眠らせ、ガルドの寝室に入った。


ミア姉様がガルドの首元に、短剣を置いた。昨夜のラウルの剣より、小さかった。しかしより近かった。喉の皮一枚のところだった。


エリカがその短剣の柄に、小さな花を一輪、添えた。


2人は音もなく部屋を出た。


翌朝、ガルドが目を覚ました。

首元に短剣と花があった。


ガルドが「なんだ?、女か?」と言ったとされる。


エリカからの報告でそれを聞いたミア姉様が「当然でしょ!」と言った。


「花を添えたのは誰のアイデアだ」と俺は言った。


「エリカ」とミア姉様が言った。

エリカが「……効果的だと思いました」と淡々と言っていた。


「ある意味、女性的だがさすがだな、頭に付けてやれば良かったのに…」と俺は言った。



三日目 昼


ガルドが警戒を最大にした。

見張りを増やし、山道に人を配置した。

食料庫には鍵をかけた。


しかし、それもラウルは予想し、それも計算していた。


増えた見張りたちの間を縫うように、矢が飛んできた。人には当たらない。地面に刺さる。今回は矢には、紙が巻いてあった。


見張りが矢を抜いて、紙を読んだ。

「今日で三日目だ。まだ気づかないのか?」


別の矢が飛んできた。

「お前たちの頭領は、毎晩、枕元にある物を置かれている…」


また飛んできた。

「今夜で何を置くか、楽しみにしておけ…」


ガルドの部下たちが、ざわざわし始めた。

「頭領、大丈夫なのか」、「誰がやってるんだよ」、「見えない」、「何人いるんだ?」


ガルドが「うるさい!! 全員持ち場につけ!!」と叫んだ。


しかし、全員の顔が、少し青くなっていた。



3日目 夜


クルト、ニコラス、ヴォルフガングの3名が動いた。


今度は寝室ではなかった…


ガルドの隠れ家、アジトの外にガルドだけが知っているはずの小屋…エリカが三日かけて突き止めた場所だった。


そこに、矢文が飛んだ。

きっちり1時間ごとに。合計10本。


1本目「この場所を知っているか?」


2本目「お前の隠れ家だ」


3本目「部下の数も知っている」


4本目「昨夜の夕食が何だったか知っている」


5本目「逃げ場はない」


6本目「明朝、単独で北の峠の石碑の前に」


7本目「来なければ…」


8本目「明日」


9本目「全員」


10本目 何も書いていない、白紙だった。


ニコラスが「10本目、何も書かない方が怖いかなと思って」と後で言った。


「おもしろっ!」とラウルが言った。


「大丈夫ですかね……」とニコラスが言った。「でも怖いと思いますよ……きっと」



ヴォルフガングが満足そうだった。


翌朝、ガルドが隠れ家を出なかった。

昼になっても出なかった。

夕方、ようやく出てきたガルドを見た部下が言ったとされる言葉がエリカから届いた…


「頭領、顔色が悪いですよ…」

ガルドが「うるさい」と言ったとされる。

俺たちは、全員で大笑いした。



4日目の夜明け前

俺とエドが動いた。


ヴィクターが調合した痺れ薬を昨日のうちにエリカがアジトの水源に仕込んでいた。手足が痺れて動けなくなる量…死なないし、眠らない。ただ、動けなくなる。


アジトの中、150名の大半が、「足がおかしい」「手が動かない」と言いながら地面に座り込んでいた。


ラウルたちが仕掛けた偽のボヤ騒ぎが起きた。残りの部下がアジトの外に出た。


俺とエドはガルドの部屋に入った。

ガルドが、短剣を握って立っていた。


動けないはずなのに、立っていた。


「……来たか」と言った。

声がかすれており、眠れていなかったのだろう、目の下のクマがはっきりわかった。


ガルドが、俺を上から下まで見た。

「……子供じゃねえか」と言った。


「そうだ…」


「……4日間、俺たちをここまで翻弄したのが、この子供か……」


「そうなるな、私は王国軍として北伐に参戦予定の第5王子のルークだ。」


ガルドが、少し笑った。

力が抜けたような笑いだった。


「……参った。本当に参った。毎晩何かを置かれて、昼間は訳のわからないことが起きて、もう何が怖いのか、わからなくなった…」


「よく耐えてたよ」と俺は言った。


「耐えてない。怖くて眠れなかっただけだ…」


「それを耐えたと言うんだ。」


ガルドが、短剣を床に置いた。

「北伐に連れて行くと言ったな…」


「そう言った…」


「本気で勝つつもりか。名誉のために死ぬつもりじゃなく…」


「生きて帰る」と俺は言った。「お前たちも、全員生きて帰す。それが俺の仕事だ。」


ガルドが「……降参だ」と言った。

「お前の部下になる、第5王子…」



150名が俺の前に集まった。

「俺はルーク・ヴァルト・レギナルド。第5王子だ。今日からお前たちは俺の部下だ。北伐が終われば、過去の罪は帳消しにする。ただし今後は民を傷つけることは許さない。従えるか!」


「ガキじゃねえか?」という声がした。


「ガキだ」と俺は言った。

「しかし、4日間、お前たちの頭領をそのガキが追い詰めた。俺のやり方はこれだ! 文句のある奴は俺が今この場で過去の罪を処断してやるから前に出ろ!」


静かになった。


ガルドが「お前たち、従え…」と言った。

全員が頷いた。


「よし。まず全員の名前を教えてくれ。覚える!」


「……全員の名前を?」と誰かが言った。


「俺の部下の名前は全員覚える。それが将の仕事だ。」


ガルドが「やっぱり正気じゃねえな…」と言った。


「よく言われる。」


「……嫌いじゃない。」


150名もの名前を覚えるのに半日かかった。

それでも全員の名前を覚えた。


俺たちは160名になった。


その夜、ラウルが言った。「4日間の作戦、最高だったな!」


「お前の落とし穴が一番笑えた。」と俺は言った。


「でしょ! 2個目を踏んだ時の顔が最高だった!」


「見てたのか」


「遠くから!」


エドが「お前は何をやっても楽しそうだな…」と言った。


「楽しまないと損じゃん!」とラウルが言った。


全員が笑った。


160名の中に山賊出身の男たちの笑い声も、混じっていた。


「勝ちを知る者に五あり。戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ……」

ーー孫子ーー


戦うべき相手と仲間にすべき相手を見極めることが将の第一歩だ。

4日間、誰も死ななかった。

誰も傷つかなかった。

しかし、ガルドは降参した。

部隊を作る為の、それが俺のやり方だった。

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