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クラス分け試験の構造

入学式が終わった直後、総長が再び壇上に上がった。


「これより、序列決定試験を行う」


会場の空気が変わった。


「本試験は、新入生20名の序列順位を決定するものである。この順位は、在学中のあらゆる待遇に直結する」


総長は続けた。


「第一に、給金。本学院の在学生には国より月額の学習奨励金が支給される。上位者ほど額が大きい。最下位と最上位では、その差は10倍を超える」


「第二に、卒業後の進路選択権。上位20%以内の者には、卒業時に国王推薦状が発行される。これは、どの機関・どの職位にも推薦が届く権利を意味する。軍、宮廷、外交、財務、いずれの道も本人の意志で選べる」


「第三に、家への恩給。上位20%以内の者の親権者もしくは保護者には、国より定期恩給が支給される。学生本人だけでなく、その家そのものが国の庇護を受ける」


「第四に、家紋授与権。卒業時の序列に応じ、自身の家紋の作成権が与えられる。授与された家紋は財務省に登録され、以後、その家紋を持つ者には国から家紋俸禄が継続的に下賜される」


静寂があった。


入学式の直後に、これが始まる。

これは──この国の権力構造への、最初の入口だ。


隣でエドが小さく息を吐いた。

「クラス分けじゃなかった。これは家ごとの戦争だ」

俺はうなずいた。

家紋俸禄。卒業後の推薦権。家への恩給。

個人の試験が、家の命運に直結している。

特権入学者の10名は、最初からその構造を知って来ているはずだ。

つまり今日の試験は、知っている者と知らなかった者の間で、既に始まっていた。


「試験は二問構成。各受験者に教員1名が専任で付く。採点は担当教員が行い、総長が最終確認する」


教員が20名、入室してきた。


俺はその瞬間、全員の顔を確認した。


全員が、見たことのない顔だった。

学院の教員ではない。

服装が違う。

立ち方が違う。

目の動き方が違う。

視線が鋭く、部屋の全体を一瞬で把握するような見方をしていた。


俺はヴィクターに、小声で言った。

「あの教員たちを知っているか。お前は兄の入学式に来たことがあったはずだ」


ヴィクターが、教員たちを一瞥した。

その目が、わずかに細くなった。

「……知らない。兄の入学式では、試験官は最上級生が務めていた。在校生の代表だ」

「今回は違う」

「ああ。あれは学院の人間じゃない」


ヴィクターが、それ以上は言わなかった。

しかしフォン・クラーゼン家の息子が「知らない」と言った。

それだけで十分だった。

今回の試験は、前例がない。


そのとき、総長が付け加えた。

「本試験の担当教員は、王直属特務機関より派遣された20名である。彼らは王の執務室を最上位とする機関に属し、通常の教員とは別の序列にある。評価は絶対であり、異議申し立ては認められない」


特務機関。

王直属。

評価は絶対。


俺の前に来た教員は、眼光の鋭い女性だった。

黒髪を後ろで束ねている。表情に起伏がない。

「ルーク・レギナルド。担当はクレア・ヴェンツェルだ」

「よろしくお願いします」


クレアが俺を見た。

5歳の子供を見る目ではなかった。

評価対象を見る、まったく感情のない目だった。

それが俺には、むしろ清潔に感じた。


「第一問は、論理課題だ。総長から出題される。制限時間は30分」


「第二問は、ディベート対決だ。上級生代表5名と議題について対決する。制限時間は30分。評価は担当教員と総長が行う」


俺は静かに聞いた。

上級生5名と1対5のディベート。

試験の設計者は、受験者を追い詰めることを前提としている。

それ自体が、問いだ。

追い詰められた者が、どう応じるかを見ている。


そして教員が特務機関の人間であることの意味も、俺は考えた。

彼らは学問を教える者ではなく、人を評価することを専門とする者だ。

正確に、冷静に、感情なく。

誤魔化しは通じない。

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