入学生代表の挨拶
式典会場は学院の大ホールだった。
天井が高い。
石造りの壁に、歴代総長の肖像画が並んでいる。
正面の演台には、学院総長ヴァルター・クロイツが立っていた。
70代、白髪、背が高く、痩せている。
声は低く、よく通る。
「王立学院は、この王国の未来を担う人材を育てる場である。入学諸君に求めるのは、学ぶ意志と、問い続ける姿勢だ」
総長の挨拶が終わった。
次は…
入学生代表の挨拶だ。
慣例として、論理力試験の1位が代表を務める。
俺が呼ばれた。
演台に上がった。
20人の新入生と、上級生、教官、来賓の視線が集まった。
俺は5歳だ。会場で最も背が低い。
俺は一度、ゆっくり息を吸った。
「本日、王立学院に入学できたことを、心より光栄に思います」
声が、会場に通った。
静かになった。
「学問とは、知ることではないと、私は考えています。知ったことを使って、問いを立てることだと」
「答えを覚えることは、誰にでもできます。しかし、なぜその答えが正しいのかを問い続けることは、決して簡単ではない」
「私たちは今日、この学院の門をくぐりました。それは、答えを受け取る場所に入ったのではなく、問いを立てる場所に入ったのだと、私は思います」
「先輩方、教官方、どうかその問いに、時に厳しく、時に寛大に、向き合っていただければ幸いです」
「以上を、入学生を代表してのご挨拶とします」
一秒の間があった。
拍手が来た。
静かな拍手ではなく、本物の拍手だった。
俺は演台を降りた。
エドが俺の隣に戻ったとき、一言だけ言った。
「……うまいな」
俺は答えなかった。
答える必要はなかった。
ヴィクターは何も言わなかった。
しかし目が、少し違っていた。




