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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

"Insane"

掲載日:2025/10/21

『かつて、「魔女が箒で空を飛ぶ行為」は』


『男根を跨いでトリップする事のメタファーとされて居た』



『私生児は「箒を跨いだ子供」とも呼ばれ』


『淫猥な悪徳の象徴として、魔女の絵は必ず箒を跨いで居た』


僕は魔女でも無ければ、女でも無い

しかし行っている行為自体には、幾つかの符合が有った



刃を昏い部屋で、うっとりと眺めて居た


ナイフによる刺突は、ある種の性交を思わせる要素を含んでいるが、この刃物は銃刀法に違反して居ない


この刃の銀色は、あらゆる無辜の他人を傷付けて居ない


いま流れ落ちて居るのは、全くの合法なる出血なのだった



最初の悪魔は、誰よりも神を愛したが故に悪魔となったのだと言う


僕も神を愛している

愛し方が神の望んだ方法ではないというだけだ


また一つ左腕に刃を突き立てる

湖面に立つ波のように血が液体の王冠を宙へと描き、真赤な肉の繊維一つ一つに、ナイフに塗られた痺れ薬が染み渡っていく


快楽だった



既に腕のあちこちが穴だらけだったが、もう痛みは無かった

薬液が血中に浸透し終えた為だろう


「血が足らない」


僕は誰にともなく呟いた


『失血で血が足らない』という事では無い

この視界に映るすべてに、血の赤が足らないと強く感じて居た


この世界は汚れて居る

塗り直す為には、美しいものを使わなくてはならない



肋骨の合間を眼掛けて、僕は自分の左胸をしたたかに突き刺した

ようやく切っ先が動脈を捉えたらしく、かつて無い程の血が撒き散らされる


それは、手で触れると暖かかった


僕は思った

『総ては善いのだ』と



ナイフの鋭い面を嘗める

舌が刻まれて、新しく血が流れ出す


舌が紅いのは血の色だ

吐瀉物の様な血の濁流が、口から止め処なく溢れ出る


 


綺麗だ


それでもまだ、この世界を塗り替えるには全然足らなかった

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