ブラック企業から解放されたらトラウマ級の出来事に遭ってしまった。
夜勤明けに家に戻り、そのまま寝床に倒れたという記憶が最後だった。
目が覚めて気がついたら誰かの腕に抱かれる赤ん坊だった。
我ながら小さくて可愛い手だ。ムニムニしたい。
これ、夢かな…いや、夢であってください!
だって…漏れそうだからね。
そんな俺を覗き込む会ったこともないダンディーな男性とポワポワとした雰囲気の女性が目にうつる。
「オンギャァァァァァ!!(う○こ漏れるゥゥゥゥ!?!?)」
「あら、ジン?お腹が空いたのかしら?…あらあら。」
異世界転生をしたのだろうなと肉体と精神の年齢差がすごいことになっている事や見た事のない部屋やら自分の見た目を考えて理解してしまった。
それにしても、初めてのイベントは酷いものだった…この後、母親にオムツを変えてもらい綺麗にしてもらった際に未知の扉を開きそうになってしまった。
…我ながら気持ち悪いと思うが誰にでも似たような経験はあるだろう。
ちなみに、この話を友人に話したら、「わかる。僕にも似たような経験がある」と言っていた。
男ならそんなものだ。
俺の名前はジン・ムラクモというらしい。
前の世界ではマシオタクマというブラック企業に勤める社畜リーマンだった。
名前がなぜか思い出せない。それなのに前の人生の記憶が鮮明に思い出すことが出来る。
そんなトラウマを思い出した。
そんな俺も12歳。年頃なのだ。
「アルティメットォォ!!ファイヤァァ!!!」
コレは俺の考えた必殺極大魔法。
かめ○め波の様に両方の手のひらを前に向けて広げてポーズを取る。
日課の必殺技の練習をしていると、後ろから声をかけられた。
「ジン様。何をしていらっしゃるのでしょうか。ダサいのは顔だけにしていただけますか。」
「!?!?」
俺の秘密の特訓を見て絶対零度の視線を放ち侮蔑を隠さず声に乗せるのは俺の専属メイド。
シンラ・クロカミ
黒髪ロングの和風メイド美少女だ。
鋭い目つきがかなり怖い。
美人な分、その鋭さはまさに名刀の如きである。
「し、心臓がドキドキだ!恋かもしれない!なんてな!」
「はい?」
美人にゴミを見る目で見られると本当に怖い。
おっと…マジなトーンですね…
「すみません。えっと…その、ノックを…ほら、鍵掛からないからさ。」
「次からはいたします。魔法の授業がありますので、早くして下さい。」
…行くか。
「はい。」
気を取り直して。
どうやら、この世界には魔力とやらがあるようだ。
そして、魔法というものもあるらしい。必殺極大魔法を練習するのもこのためだ。
いつか使えるかもしれない。
その魔法の勉強をする様になった。
講師はシンラだ。
色々と自分で試したが、俺には最強の力みたいなものは無いらしい。
よくある女神様とかに会うような事も無かったから当然か…