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一本目 ハッピーナイフライフ part1 朝

 朝、戸桐は自然と目が覚めた。

 アラームもかけないで起きることができるのは、戸桐の数少ない特技である。


『んんっ!』


 日の光がカーテン隙間から差し込むが、それでも部屋は薄暗い。

 戸桐は手を合わせて伸びをした。


 今日は何食べようかな。


 まずは朝食の支度に取り掛かる。

 顔を洗って口をゆすいだり、トイレに行ったりすることなど戸桐にとっては二の次だ。

 すぐさまキッチンに向かい、備え付けの棚を開ける。

 戸桐は数秒悩んで、ちょうど目線ほどの高さにあったシリアル食品を掴んだ。


 これ、結構うまいんだよなぁ。

 それに一番簡単だし。


 シャララララ~といい音を立てながら、ボウルにシリアルを注ぐ。

 そして、牛乳を注ぎながらテレビのリモコンに手を伸ばす。


 !?

『やべぇ、時間!』


 アラームをかけない弊害がこれだ。






 戸桐が支部に着いたのは9:13だった。

 テレビで時間を確認してから急いで出発の支度をしたため、ご飯は食べっぱなし、テレビは付けっぱなしだった。


 家の鍵、ちゃんと閉めたっけかな。

 僕の家に金目のものなんかないけど。


 しかし、戸桐が気にしていたのは家の鍵がちゃんとかかっているかどうかである。

 それに出勤時間は毎日8:30と決まっているため、戸桐は40分以上の遅刻をしている。

 すぐに戸桐は覚悟を決め、また一応頭の中で言い訳を作り始めていた。


 あれ?


 支部の玄関の扉を静かに開けると、そこには誰もいなかった。

 人が少ないのは毎日のことだが、一人もいないことは今まで一度もなかった。


 みんなどこ行ったんだろ。

 城山(キヤマ)さん、スタンバってると思ったんだけどな。


 他の構成員の所在を気にしつつ、そして怒られないことに若干安心しつつ、戸桐はさっそく作業に取り掛かった。

 戸桐が支部長直々に仰せつかった作業は、<支部内の清掃>である。

 戸桐が苦手とする分野だ。

 まずは山谷が散らかしたであろう床を片付ける。

 散乱している本や雑誌をスタンドに戻し、床に落ちてるポテチの食べカスなどはほうきとちりとりで対応する。

 とりあえず、目につく一番汚いところは大体綺麗になった。


 次はデスクかな。


 そこで戸桐は内ポケットからナイフを取り出した。

 戸桐のナイフの能力は<近くの物体の吸引>である。

 つまり、近くにある物をナイフへ吸い寄せることができる。

 そしてナイフに長時間触れたものは跡形もなく消えてしまう。

 吸い込まれた物がその後どうなっているのかは、誰にも分からない。


 よし、いい感じに取れてるな。

 支部長のデスク周りもやっとくか。


 つまり、世界で一つだけの超お手軽掃除機だ。


「あれ?戸桐じゃーん。来てたんだ」

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