大切第二場 村境の野原の場
大切第二場 村境の野原の場
本舞台、前場と同じ道具。道祖神、元に戻る。こゝに千歳、太郎助を膝枕している体にて幕開く。ドロドロを打ち上げ、時の鐘。太郎助は目を覚ます。千歳、娘の声にて、
千歳「○起きなさんしたか」
太郎助「こゝは」
ト起き上がる。
千歳「ミシャグチ様のところじゃ」
太郎助「○お主にはすまぬことをしてしまった」
千歳「すべて過ぎてしまったことじゃ。もう何も言うまい」
太郎助「されども○」
千歳「もうよいのじゃ。いずれはあゝなる定めじゃった」
太郎助「○これからどうするのだ○行く当てがなければおらが内に」
千歳「○太郎助」
太郎助「○わかっておる○どうしても、行かねばならぬのか」
千歳「もうこゝにはおれまい」
太郎助「そうであろうな」
ト両人、思入れ。千歳、立ち上がる。
太郎助「もう行くのか」
千歳「これ以上いても別れが辛くなるばかりじゃろう」
太郎助「そうじゃな」
ト千歳、よきところにくる。太郎助、思入れ。
太郎助「千歳」
ト千歳、振り返る。
千歳「なんじゃい」
ト太郎助、思入れ。
千歳「太郎助。わかっておるわい」
ト両人、思入れ。
キザミ幕
ト幕外になる。千歳、一度だけ幕を振り返るとキッとなり、向うを見込み、見得。篠笛、誂えの合方、六方にて向うに入る。