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【本編完結済】逆行令嬢リリアンヌの二度目はもっと楽しい学園生活〜悪役令嬢を幸せにしてみせます!〜  作者: 鈴埜
【番外編】

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逆転令嬢リリアンヌのもっと楽しい!?義実家訪問〜アーランデ国でも暴れちゃいます〜7

 学園にあった円形闘技場のような場所が、王宮のすぐ側にあった。年に数度騎士たちの戦いが繰り広げられるらしい。

 婚約式のために着飾ってきていた紳士淑女が、今やすっかりこれからの決闘に熱狂している。

 そういった血が流れているのかなぁと、周囲を見渡して思った。


「ずいぶんと余裕ね。この決闘は相手を殺しても罪にはならないのよ」

「わたくしを殺したら、ジュマーナ様は寂しい余生を過ごすことになるでしょうね……いえ、過ごせるかしら?」

 私の言った意味がわかったのかわからなかったのか、彼女はふんっと鼻を鳴らして横を向く。

 決闘で手に入れた座を決闘で失うことになるだろうと言ったのだが。

 本人もわかっているはずなのだ。

 だから、結論、何かある。


 絶対に決闘以外で何かが起こる。


 私とフィニアスはそう考えている。

 ラーヴェリヒ陛下もわかっているはずなのだ。


 何か、足りない。そんな気がしてならない。


「ジュマーナさん、貴方の後ろには誰がいるのですか?」

「はっ!? なんのこと!?」

 不審がるより怒るのか。

 わっかりやすーい。

 困ったなぁ。何かさせないくらい、最初から全力で行くべきか?


 よし、様子を見るのはやめよう!!

 ぼこぼこにしても怒られないらしい! 人を実際殴るのは、授業で慣れた!!


 何せ私は前の人生で何年も、妄想の中で人を殴り倒してきたのだ!!!




 ラーヴェリヒ陛下が、空に向かって火球を打ち出す。それが、合図だった。


 闘技場は円形の石で出来た台がある。ただ、今回はこの台だけでなく周囲の土の部分も舞台だ。それでも咄嗟に地魔術を使おうとして使えないのが一番困る。

 結論、すべてを土で覆っておくのがいい。

「【土盾】」

 小さく細かく、無数の土盾を作り、それを石台の上までせり上げる。そして、解除。

 ドサリと落ちたそこはもう土まみれ。私の場所だ。


 最近は特に、土と体術の連携を研究し続けていた。体術の先生が降参するくらいに、土のおかげで私の場所はあらゆる空間にできる。


 一部崩さない土盾で二人の間に視界の隔たりが出来る。


「そんなもので私の力を防ぐつもりなの!?」


 ジュマーナは遠慮なく赤目を使う。

 だが、発動前の圧でどちらから来るかは大変わかりやすい。赤目は実際には扱いづらい力なのだと、フィニアスは言っていた。赤目になれば繊細な魔術式を描くのが難しくなる。ジュマーナが国へ戻り、ずっと訓練してきたのであれば恐ろしい相手となっていただろう。だが、調べではそんなそぶりは一つもなかったという。


 とは言え、彼女の人生はこれにすべてかかっている。

 つまり、ちょっとやそっとじゃ降参しない。


「ボコボコ決定ですねっ!」

 

 圧の方向でどちらを向いているか丸わかりだ。

 私は彼女の前方から火球を向かわせ、さらに身体強化で後ろから思い切り殴った。最初からこれを狙っているので私は杖すら使っていない。

「きゃあああ!!」


 んん、手応えがなんかおかしい。


 吹っ飛んだジュマーナ。だが、距離が、もっと伸びるはず。背骨折れててもいいくらいなんだけどなあ。


 倒れて起き上がれないくらいの拳をぶち込んだはずなのに、動けるのか。

 つまり。


「何か魔導具使ってらっしゃいますね?」

「さあ、なんのことかしら」


 身体検査は行われたはずだが、こうなるとそれすらもグルか。

 ううん。これは、拳で殴ってボコボコ計画が難しくなる。

 訓練などで使う、衝撃や魔力を吸収するものを使っているのだろう。


「もう終わりなの? じゃあこちらから行くわね!!」


「【風刃】」

 なかなかに早い術式。まあ、初歩の初歩だから当然なのだが、学園で聞いていたレベルよりかは練習をしたようだ。

「【風幕】、【土壁】」

 風の刃が風の幕に勢いを殺され、土壁で完全に防がれる。

「はあ!? 風!?」


 そう。風。


 私、風を手に入れました。


 闇じゃなかったあああああああああああ!!!!

 絶対、絶対三属性目、闇って決めてたのにっっ!! もおお!!


 ちなみに、フィニアスが二属性、闇を手に入れてるの。悔しいよおお。今は四属性を目標に頑張ってます。メイナードに無理だ諦めろって言われたけど、諦めきれないっ。魔力さらに倍。頑張る。


 ボコボコはオッケーだと思うけど、ずたずたはちょっと怒られそう。

 だが、彼女が何かしら使っているのを分かってもらうためには、目に見えて異常な魔力吸収を見せなければならない。

 火はダメだな……。もし考えが違っていたら丸焦げだし。

 風の、力押しか。


「【突風】」

 素早く杖を取り出し、振るう。

 私のすぐ横から、空気の塊がジュマーナに向かって飛び出した。彼女も意図をわかってか、赤目の力を解いてまで逃げようとする。


「【突風】」

 さらにもう一つ。迎え撃つ形で放つ。

 二つの突風の真ん中で、彼女がしたのは、何やら魔導具。

 そんなあからさまに、負けを認める行為に、私は唖然とした。

 だが、ジュマーナは笑っている。


 そして、彼女がその紫の魔石を使ったそれに魔力を込めると、大きな魔方陣が彼女の前に展開される。


 二つの突風はその中へと吸い込まれた。



 次の瞬間、空気が揺らいだ。

「え?」

 何かがカシャンと崩れた。音が聞こえたわけではない。そう、感じた。




 石台の中央では、ジュマーナが涙している。

「ごめんなさい、あまりに怖くて、魔力を転送する魔導具を使ってしまいました」


 違う。

 そんなことじゃなくて。


 私はぐるりと辺りを見渡す。


 ラーヴェリヒ陛下が、用意された席を飛び出してこちらに向かっている。


 フィニアスが、私の名を呼んでいる。


「貴方が、学生時代に作ったものでしょう? リリアンヌ。私にくれたじゃない」

「はあぁぁぁぁ??」

「だってほら、これは貴方の魔力で作られているでしょう?」


 まったく身に覚えのないことを述べるジュマーナに、なんとも気分が悪くなった。


 王はここに来て以来見たことのないような恐ろしい顔をしていた。


「リリアンヌ。怪我は?」

「いえ、私は特に。だけどなんか、空気が変わりました」

 それには、フィニアスが黙り込む。

「わかるのか」

 ラーヴェリヒ陛下の問いかけに、私は首を傾げた。

 何が違うかは分からないが。


「捕らえよ。宮殿に戻り状況報告を」


 そう言って、騎士が、ジュマーナと、私の腕をとった。




 うーん、早く状況を説明して欲しい。何が起きた?

 フィニアスが騎士の私の扱いに抗議しているが、私がまったく抵抗しないので彼らも必要以上に何をするわけでもない。ただ一緒に歩くだけだ。


 フィニアスがその横を歩くのを、騎士たちも止めなかった。なので好き勝手しゃべる。


「つまりジュマーナさんが企んでいたのがこれですよね。で、何が起こったんですか?」

「……」

 珍しくフィニアスが答えない。答えられないのか?

 闘技場からは徒歩だ。というか王宮の裏にこれがあるのもどうかと思う。


「答えられないということは国家機密系ですね。うーん。空気が変わった気がしたんです。なんかこー全体がまったく別の世界になったような。ということは、……ああ」


 わかった。


「わかったんだけど、聞いていい?」

「リリアンヌ。ちょっと待ってくれるかな」

 仕方ない。黙るか。いやでも気になる。


「それってどこにあるの?」

「リリアンヌ……」

 困らせてしまった。仕方ない黙ろう。


 ジュマーナはうつむいたままだ。が、さっきの発言からこちらをはめるための準備は万端だった。

 私が作った魔導具? 魔導具作りは学生になってからしていない。あれはもう丸投げするのが一番だと思った。






 再び、謁見の間。さっきとはまるで空気の違う場。

 私と、ジュマーナが並んで立たされる。私の側からフィニアスは離れなかった。


「何が起こったか、申し開きを」

 婚約式の口上を述べていた宰相の口から、今度は厳しい口調で尋ねられた。

 ここは私からではなく、ジュマーナから語られるべきことなのだろう。


「圧倒的な力の前に、わたくし怖くなってしまいました。風の塊が目の前に迫って、魔力を余所へ反らす魔導具を使ってしまいました。これは、……リリアンヌさんが留学先でわたくしにプレゼントしてくれたものです」


 プレゼント、プレゼントと……。


 陛下の視線が私に移ったので、一応事実を述べておく。


「プレゼントするほどの仲になった覚えはありません。学生になってからは魔導具を作ったこともございません」


 研究はしたけどねっ!


「それは嘘でございます。リリアンヌさんは男性の方々と一緒に魔導具のための素材採集によく行かれてました」


「それは誤解だな。彼女の敬愛する方のための素材採取、そして、私とデートするための口実だ」

「ええっ、それはちがっ」

「リリアンヌ?」


 えええー。新しい嘘つかれた。いや、結果的にそうなってたときもあったけど。


「なによりその魔導具が証拠です。彼女の魔力で作られております」

 それがなあ……魔力なあ。


 陛下の視線が向くので答えないといけないのだが、糸口が見つからない。

「先ほどから考えているのですけれど、わたくし魔力を流すようなことをしたのが、何かあったかしら……と。魔力……魔力……そういえば、魔族の方々は魔力量が多い故に魔導具を作ることが苦手とお聞きしました。となると、作ったのは人族? そちらの魔導具は魔族の方が作るのは難しい類いですか?」

「何を白々しい! 貴方が作ったんじゃないの!?」

「正直わたくしもその魔導具、作れるか疑問なのですよね。設計図を見て理解するのに時間がかかりそうです。だって吸収と放出。さらに放出先の設定ですよね? ……放出先にも魔導具があったのではありませんか?」


「……あったな」

「ならば、そこにわたくしが入ることができるか、から考えていただくとして、魔力を盗られるようなことはそうない……あ」


 あー、いや、でもそうなると一日でこれを仕上げた? いや、作っておいて私の魔力を流し込んだだけとか?


「何か思いついたならすぐ述べなさい。そなたの立場はそこまでよいものではない」


「ええ、そう、ですね……」

 ちらりと隣のフィニアスに目をやる。彼は私の様子にすっと目を細めた。


「陛下だけに言うとかは――」

「リリアンヌ、ここで、述べるんだよ」

 フィニアスへの隠し事はこうやって露呈すると怒られる。絶対怒る。やだなあ。


「昨日、エブレン様の庭園で、迷路を楽しんでいたのですが……」

「その話は聞いている。そなたの主張はターネルと会ったそうだな」

 結構しっかり報告されてるのか。さすがに王子がらみだから証拠がないとかでうやむやだと思ってた。


「それは嘘です!」

「黙れ、お前は今、口を出す許可は得ていないだろう!」


 かぶせて怒られてる。

 そして続きだ。


「そのとき右腕を掴まれまして、状況が異様だったので気分が悪くてめまいがしたのかと思いましたが、魔力をとられていたのならば、あのときのふらつきもわかるなと……」

 と、言い終わらないうちにフィニアスが私の腕をとって手袋をはずそうとする。

「ダメダメダメフィニアス人前で手袋はちょっと待ってダメだって!!」

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