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【本編完結済】逆行令嬢リリアンヌの二度目はもっと楽しい学園生活〜悪役令嬢を幸せにしてみせます!〜  作者: 鈴埜
【番外編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/82

逆転令嬢リリアンヌのもっと楽しい!?義実家訪問〜アーランデ国でも暴れちゃいます〜1

今日の一冊で紹介していただきました!

https://syosetu.com/issatu/index/no/235/

記念番外編です。お楽しみください。


本編終了後のお話のため、ネタバレがたくさんあります。

どうぞ、本編未読の場合は本編よりご覧ください。

 馬車を停め、降りて宮殿内に入ったはずなのに、そこにあったのは庭園と池と噴水。草花が咲き乱れ、美しい蝶が舞っている。

 その先には光が乱反射する灯りが天井から吊され、もう夕暮れが近いと言うのに昼のような明るさだった。


「ようこそ」


 通された部屋には大きな丸いテーブルが用意されていた。あくまで私的な晩餐会で、身分の上下をなくすためだという。

 テーブルの中央にはたくさんの果物が、原型を留めぬ姿で綺麗に切られ、飾られていた。透明なガラスのボウルにはその果物を丸くくりぬいたものが蜜に浸かっていた。それを炭酸水やお酒で割って飲むのが、アーランデの流行りだと教えてもらっている。


 まずはラーヴェリヒ陛下との挨拶だ。それから席へ座るよう促された。私は、フィニアスがエスコートしてくれて、ラーヴェリヒ陛下から一つ空けて座った。私の左隣はお父様が。そして順番に座っていく。

 ラーヴェリヒ陛下の右隣にはほっそりとした、緩やかなウェーブの黒髪の女性がいた。フィニアスと同じく空色の瞳をしている。

 さらにその隣に、とてもよく似た女性が座っているのだ。


「紹介しよう、フィニアスの母、第三妃のアイリーン。その隣は妹のマクブーレだ」


 フィニアスの表情も固定されたままで、たぶん知らなかったのだろう。


 父が挨拶をして家族を紹介する。今回、引っ込んでいてといったのにアシュリーお兄様だけじゃなく、ジャスティンお兄様とフレデリカお義姉様もついてきた。みんなやる気満々で困る。

 全員の紹介が終わると料理が運ばれてきて、あくまで私的な晩餐会が始まった。



 アイリーン、マクブーレの二人は本当に似た姉妹だ。双子ではないそうだ。二歳違いだということだった。

「去年の夏に、お土産にいただいた化粧品がとてもよかったの。香りも素敵だし、定期的に買い付けに人をやっているのよ」

「お気に召していただけて幸いです」

「香りだけじゃないわ、お姉様。あれをつけたときと、他のもので済ませたとき、肌の調子が違います」

「本当に。こちらで店を出すことは可能かしら?」

 すごいな、元聖女印の化粧品。日々新しいものを、よりよいものをと研鑽を重ねる彼らの努力も素晴らしい。


「支店、ですか……ふむ。少し相談してみます。悪いお話ではないと思われます」

「お父様に紹介するわ。商売ならうちの専属も交えて話していただかないとね」

「我が家は出資をしている立場ですので、製造元と話し合ってからになりますが」

「もちろんよ、色よいお返事を期待しているわ」


 姉の第三妃、アイリーンは口調はゆっくりだがよく考え話している人に思えた。言葉を紡ぐ前に思考を巡らせているような感じだ。

 妹の第五妃、マクブーレはハキハキとした受け答えで明るい。思いつきを瞬時に口に出しているような印象だ。黙っているときの儚げな様子は消え失せる。


 これがフィニアスとジュマーナの母か。

 どちらもとても若い。


 そして、どちらも腹が出ている。

 フィニアス……妊娠中だって聞いてなかったよ。




「リリアンヌさんはお勉強もできるのでしょう? 今回の試験も優秀な成績を残されたとか」

「おかげさまで」

 食事も終盤へ進んだ頃、マクブーレが問いかけてきた。

 笑顔ではあるが、瞳の奥は笑っていない、貼り付けた笑みだった。

 まあ、それはそうだろう。なんといっても娘を王位継承者から引きずり下ろした相手だ。憎しみしかないだろう。


「魔術もお勉強されているとか。ずいぶんと学ぶことに熱心なのね」

 私はそれにはにこりと笑顔を返しておく。

「恐れ入ります」


「リリアンヌはとても優秀ですね」

 彼女の意図が読み切れずにいると、フィニアスが横から口を挟む。


「婚約者であるあなたより?」

「ええ、私よりずっと知識も力もありますよ」

「力? まあ、すごいわね」

 その笑い方に家族がぴくりと口元を揺らした。


「魔力の扱い方も私より上手いです。身体強化も素晴らしいですね」

 それでもフィニアスは私を褒め続けた。スカーレット様の側近として働くために頑張ったからねっ!

「宮廷魔法使い筆頭を狙っていますので」

「あら、本当にすごいのね」

 フィニアスの母、アイリーンが目を丸くしてつぶやく。


「リリアンヌは教師陣にも期待されております」

「特別授業をしようと、教師間で奪い合いなのだそうですの」

「リリアンヌは昔から努力家でしたからね。私の教本をこっそり読んで勉強したり」

「小さな頃から魔塔にも出入りしておりましたね」

「魔術式を書くスピード、大きさも、現役の宮廷魔術師顔負けですのよ」

 ここぞとばかりに褒めてくるのはやめてください。家族の皆さん。

 だがその勢いに、マグブーレは開きかけた口を閉じる。


 これだから、これだから全員連れてくるのいやだったのー! ティファニーお義姉様がいないだけまだまし!? 一人分のパワー減ってる!?


「それは素晴らしいな」

 ラーヴェリヒ陛下もそんな家族の様子を見て面白そうに言う。


「私にはもったいない女性ですね」

 とどめのフィニアスだ。


 一人マクブーレが面白くない様子だった。が、何を思ったのか笑顔になる。

「本当に、もったいないくらいの女性ね」


 その後も当たり障りのない話題で時は過ぎ、晩餐会は終わった。

「婚約式までは好きなように過ごせるよう手配している。何かあれば言えばいい」

「お心遣い恐れ入ります」

 陛下に感謝を述べる。

「フィニアスをよろしくね」

 アイリーンも柔らかく微笑む。

「後でお茶会の招待状を送るわ」

 と、マクブーレ。

 ……いや、いらん。いらんよそのお茶会。絶対ヤバイお茶会でしょう!!

 悪い予感しかしない。だが、陛下も、アイリーンもいるこの場で即お断りの言葉を述べることはできないのだ。

 私とお母様はふふふと微笑んで曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。





 今年の夏はアーランデに行こうとフィニアスが言い出したのは冬。結婚してからよりもする前の方がお互い身軽ではある。婚約はすでに二年の秋に周知した。おかげで男子学生からのアプローチもピタリと止まったのだ。

 一度育った土地を見てみたいとも言ったし、臣籍降下をしたとはいえ元王族、親族に挨拶も必要かもしれないと思った。


 思いはしたが、こんな大がかりになるとは!

 もちろん、お父様とお母様はついてくる。それは当然だし、ついてきてくれないと困る。

 アシュリー兄様も話が出た瞬間仕事調整に走った。表の仕事も裏の仕事もきちんとしてきたらしい。

 まあ、ここまでは想定内。


 まさかジャスティンお兄様たちまでとは。


 いつの間にかフィニアスとお父様が旅程のあれやこれやを調整してあっという間に夏になった。婚約式ということでたくさんのドレスを積んで、いざ出陣です。

 ちなみに、期末試験が終わった瞬間、イライジャはアーランデに飛んで行った。あちらで色々と働いて来いと、フィニアスが命じたそうだ。


 大変しかないと泣きながら旅立って行ったのだ。


「アイリーン様にもご挨拶しなければなりませんしね」

「……母は、たぶんしなくても気にしないというか、良くも悪くも陛下一筋の人なんだ。私の臣籍降下にもまったく興味がなかったお人だ。自分の子が王になろうともならなくとも、ラーヴェリヒ陛下の妃であり、自分に一番目が向いているというだけで満足な人。私たちの邪魔もしなければ、助けもしない。むしろ親族の方がうるさかったな。祖父なんてこちらに殴り込みに来そうな勢いだったよ」

 去年の夏、一週間くらい出掛けてくるといって帰ってきたら王子の地位を捨てていた。それはもうあっさりと。


 アーランデ国は、昔は魔素深く、魔物の生まれ易い土地だった。魔素に耐性を持つ魔族はこの土地で暮らし続けていた。ただ、見かけはそう人族と変わらないし、身体を構成する物も変わらなかった。

 より多くの魔素に触れることにより、力が強く魔力が強い。それが魔族だ。

 そしてその代償が、その魔族の中でもより強いものが最後に魔王となってしまうことだ。狂化は魔族をも脅かし、そして人族から忌み嫌われる存在となってしまう。


 力を得る代わりに、この世界のほとんどを支配する人族と対立してしまう。


 それが、大聖女エリザベートが研究し生み出した魔導具によって、魔王の狂化を防ぎ、土地の魔素を薄めることに成功したのだ。

 五百年以上前のことだ。


 そして、魔素が薄れることにより、その自然溢れる美しい姿が現れた。


 フォースローグ王国から、今は真っ直ぐ道が敷かれている。これは三百年ほど前に当時の王同士が協力し、魔術師たちを総動員して作らせたそうだ。今でもたくさんの人々が行き交う道となっている。

 途中山の中腹をくりぬいて進むという大胆な方法が取られたが、このおかげで旅程が三日も縮んだ。そしてその山を抜ければ、緑豊かな花咲き乱れるアーランデ国だ。

 アーランデの首都はまた、水の豊かなところだった。水路が整備され、宮殿内もあちこちに池や小川が作られている。噴水がいくつもあり、水が高いところから落ちてくる。日が落ちると、さらに明かりが点り、水に反射しきらきらと美しい。昼間と見まがうほど、灯りがつけられていた。


 私たちが通された客用の建物も噴水と小川が交互に作られ、ピンク色の可愛い花が浮いていた。

 夕暮れに浮かび上がる白亜の宮殿に、私は感嘆の声を漏らした。


 王宮にそのまま連れて行かれて、与えられた部屋で簡単に身支度を整えての晩餐会だったので、やっと一息つける気がする。何もなければ。予定では一週間。今日が一日目。婚約式は五日目だ。


 馬車が止まると使用人たちがやってくる。その中に見知った顔を見つけた。


「イライジャ!」

「遠いところようこそいらっしゃいました」

 最近よく見るようになった騎士の正装だ。いや、ここにいる間はずっとこれか。


「イライジャ、この後私の部屋に。成果報告を」

「かしこまりました」

 こうなると完全に主従で、同級生をやっている二人の仲の良い姿を知っているので、ちょっと寂しいなと思う。


「リリアンヌ、部屋に案内するよ」

 フィニアスは私の手を取り誘う。


 後ろでうめき声を漏らしているお父様がいるが、本当に、もう、諦めて!

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


アーランデ編、お楽しみいただければ幸いで。

本日2までUPします。

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