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【本編完結済】逆行令嬢リリアンヌの二度目はもっと楽しい学園生活〜悪役令嬢を幸せにしてみせます!〜  作者: 鈴埜
【本編】

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始末していきましょう

 夏の休暇と違って、冬はなかなか帰ってこいと言われなかった。それをいいことに、私は図書館に通い詰めていた。

 フィニアスが当然のように隣にいるが、まあそれは……良いです。

 イライジャも一緒にいることが多かった。

 フィニアスはちょっと、先日のことで調子に乗っているのかスキンシップが多いので、イライジャがいると少し安心だ。反対にフィニアスは不満そう。


「鍛錬でもしてこい」

「人が少なくなったから、あまり離れられない。ダメ」

「ならせめて少し離れたところにいろ」

「イライジャさんも一緒にお勉強しましょう」

 慌てて引き留める。

「……フィニアス、俺のいないとこでリリアンヌ嬢になにしたの」

 それに対しては肩を竦めるだけで明言しない。されても困るけど。


 それでも手を握ろうとしたり、顔を寄せたりが多くてそのたびにわたつくのだ。

「勉強するために図書室にきてるのか、いちゃつくためなのかわからないんだが?」

「リリアンヌがガゼボはダメだという」

「ぜっったいダメです」

 あれは完全に私が隙を見せすぎました。絶対もうダメ。

 イライジャがフィニアスをジト目で見ていた。

「ご褒美とするしかないのか。さて、何があるかな……?」

 そういいながらまたもや私の手の甲を指でなぞる。

 やめーー!!


「フィニアス……ちょっと抑えろ。リリアンヌ嬢がここまでパニックになってるのは面白いけど、さすがに可哀想になってきた」

 全然面白くないです。

「あと二年も待つのは辛いなぁ」

 あと二年もこの調子なのは私も辛い!

「午後からは訓練場に行きましょう!」

 図書館でこうやって隣り合って座ってるのが危険なのだ、きっと。

「いや、午後からは城に行かないといけないんだ」

「あら、お呼び出しですか?」

「だね。残念だけど大人しく待ってて。部屋にいてね。変なのが周りをうろちょろするといけないから」

 人が少なくなってるからこそ気を付けてと言われた。





 だが、この日の夕方、急にお母様とアシュリーお兄様が迎えに来て、翌日、登城することになった。


 ニーナにまたもや飾られる。寮から持ってかえってきていた、星降る宴に着たドレスを着せられ、上から下までフィニアス色にされる。

「本当に素敵ですこと! ご趣味が良いのですね」

「皆でカタログを見て選んだのよ」

「それでも最終的に決められたのはフィニアス様なのでしょう?」

 スカーレット様とだいぶ戦ってましたけど。

「歌劇座でもとても紳士的でいらっしゃいましたし、本当に、本当に、リリアンヌ様に素敵な殿方が現れて、嬉しゅうございます」

「ニーナ、ちょっと涙腺弱くなりすぎよ」

 年を取ったというほど年ではない。

 ふと、ドレッサーにあるものが目についた。

「ニーナ、これも髪に飾って?」

「かしこまりました」


 すべての準備を終えて、私はお父様お母様と一緒に城へ向かった。お父様は連日登城していたらしくかなり疲れているように見えた。

 が、お母様から婚約を取り交わす日にちをどうするのかという話題が出た途端、目をギラつかせる。

「フィニアス様の親はあちらの王だ。そうそう国を出られないだろう。こちらから出向くしかない。だから、婚約は卒業してから! 結婚するならその一年後だ!!」

「この夏に婚約は終わらせるとお話ししたでしょう、あなた」

 今度はお母様がギロリとお父様を睨めつける。

「変な輩にリリアンヌを狙われても困るでしょう? 婚約したほうがわたくしは安心ですわ」


 まあ前例があるからなぁ。

 正直あの、話を聞かないアゴわれ男のことを思い出すと、背筋が寒くなる。

「リリアンヌや。お前はどうしたいんだ?」

「ええっと……フィニアスと結婚しないという選択肢はもうありませんね。時期などはお任せしますが……」

 フィニアスとお母様の望みが合致しているのでお父様の負けだと思います。夏にはと言っているフィニアスを止められるとも思わない。


「それより今日はやはりスカーレット様の婚約破棄のお話なのですよね?」

 お父様とお母様の戦いとか見たくないので話を変えます。

「ああ、話というよりもう処分だな。リリアンヌが呼ばれたのは、証言などのためだ」

「任せてください! 証拠はたくさんありますし、紛失したとか言い出したら複製したものがございます」

 そう、ユールは証拠となるものならばと複製する技術まで手に入れたのだ! 素晴らしすぎる。これなら歌劇座の演目を、かなりの高値にしなければならないが、売ることも可能だ。ただまだそれには早かろうという話にもなっている。


「あの上映場の売り上げはかなり良いですわね。ほんと、アシュリーとリリアンヌの先見の明が素晴らしいわ。我が家もかなり潤っていてよ」

 お母様がご満悦だ。

「ですから、リリアンヌの新生活にはかなりの援助ができましてよ」

 話を戻さないでくださいませお母様!!





 城の会議場へ通されると、ああ……とんでもないことになりそうです。

 私が部屋へ入ると、フィニアスが嬉しそうに駆け寄ってきた。もちろんエスコートするために。

 お父様は大変貴族らしく笑みを貼り付けたまま、フィニアスに私を託した。

「髪飾り、着けてきてくれたんだ」

「……スカーレット様とおそろいです」


 かなり長い机に見知った顔と、まるで知らぬ顔と、そして……フィニアスによく似た色味の、やたらと威厳のある男性が並んでいる。我が家はラングウェル公爵たちと、その男性の間の席に着くこととなった。

 イライジャも壁際に立っており、目が合うとウィンクする。

 そしてギルベルト殿下と、マーガレットもやってきて、文化祭で会った国王陛下妃陛下も席に着いた。

 錚々(そうそう)たる顔ぶれに軽く震える。


「さて、今日集まっていただいたのは、第一王子、ギルベルトとスカーレット公爵令嬢の婚約破棄についてだが」

 国王陛下はかなりお疲れだ。

「こちらは最高の女性であるスカーレットが嫁に来るのを楽しみにしていたのだが、愚かなギルベルト自ら断ったというのだから仕方ない。学園での礼を欠いた態度と合わせてラングウェル公爵家にお詫びとそれ相応の慰謝料を、ギルベルトの資産から払わせる」

 後ろに控えるアーノルドの父親、ヘルキャット伯爵が、ラングウェル公爵に紙とペンを差し出した。それに目を通してサインをする。

「承りました。金額などにも異論はありません」

 わー、どれだけ払ったんだろ……。というかすでに話し合いは終わっているようなんだけど? 証拠とかいるの??


 続いてトルセイ男爵だ。こちらももちろん支払いをすることになる。が、おまけのようなものだ。男爵位に払えるものはたかが知れている……と思っていたのだが、ラングウェル公爵は差し出された紙を突き返す。

「この程度では、王族を誑かした罪は拭えないかと」

 トルセイ男爵はもちろん、国王陛下も驚いていた。予定外の出来事らしい。


「ラングウェル公爵、これ以上は搾り取っても何もでないぞ?」

 陛下の言葉に、公爵はとても悪い笑みを浮かべていた。

「少し調べさせたのですが、トルセイ男爵は先日王国の西、少し先に行ったところにある山を買ったとか。そちらの山の権利をいただきたい」

「あの山は、友人が困っていたので買っただけの、価値のない――」

「ならばよかろう。賠償はこちらの山だけで良い」

 トルセイ男爵だけでなく、マーガレットも顔色を変えていた。

 山……何かあったっけ? 思い出せない。


「ではそのように書き換えよう」

 その場で書類が作られて、公爵と男爵はサインをする。マーガレットがお父様、と焦ったような声を出していたが、サインはするしかない。


「さて、紹介するのが遅れたが、そちらはアーランデ国の国王、ラーヴェリヒ国王陛下だ。はるばる今日のために来てくださった」

 やっぱり……似ていると思ったのだ。フィニアスが年をとったらこんな感じという顔をしていた!


 ラーヴェリヒ陛下は立ち上がると国王陛下に軽く頭を下げたあと、こちらに向かって深々と頭を下げた。王よりも深く。むしろ、王が頭を下げるなどといったことは前代未聞だ。

「この度は、ジュマーナが赤目の力を使いリリアンヌ子爵令嬢を傷付けてしまい、誠に申し訳なかった。アレには相応の処分を下した。金品でどうなるものでもないが、こちらから詫びの品も用意してある。後で届けさせるのでぜひ受け取っていただきたい」

 お父様でなく私への謝罪だ。私が答えなければならない。問題なかったや、私も煽ったからなどとは言えない。あちらを悪くしておかねばフィニアスのせっかくの優位が消え失せるかもしれない。だが、では受け取りますとも言いがたかった。

 ので、言えることは一択だ。


「すぐフィニアス様が駆けつけてくださいましたので」

 にこりと微笑む。

 するとあちらも笑う。

「そちらの品はイライジャに届けさせましょうか」

「ああ、ではそなたが采配しろ」

「かしこまりました」

 そしてラーヴェリヒ陛下は、お父様へ向き直る。


「フィニアスから、リリアンヌ嬢との婚約を認めてほしいとの旨連絡はもらっている。この会議の後にでも話をしたい。こちらとしては婚約に異議はないと先に申し上げておく」

「ぜひ、このあとお話をさせてください」

 お父様、まだ粘る気か!

 こちらも喜んで、などといった言葉がなかったことにラーヴェリヒ陛下は軽く目を見張ったあと、面白そうに頷いた。


「では次に、ギルベルトのことだが」

 厳しい表情のまま、真っ直ぐギルベルトを見据える。

「王たる資格なしとして廃嫡、今後はオズモンドを王太子とする」

「父上!?」

 そこまでされると思っていなかったかのような顔してるけど……え? 本人に知らされてなかった?

 マーガレットやトルセイ男爵も驚いていた。

「なぜですか!? 原則第一王子が王太子として次の王になるべきです」

「なにがなるべき、だ。そなたが言うのはおかしかろう。しでかした本人なのだから」

「ならば私から言わせていただきましょう、陛下。何百年も続いていた慣習です」

 壮年の男性が口を出してきて、ギルベルト殿下や、トルセイ男爵の顔に光が差す。

「ふむ、ウォルポート公爵。そなたは反対なのか」


 


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明日2話更新でリリアンヌのお話は終わりとなります。

あと少しお付き合いください。

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