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【本編完結済】逆行令嬢リリアンヌの二度目はもっと楽しい学園生活〜悪役令嬢を幸せにしてみせます!〜  作者: 鈴埜
【本編】

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星降る宴への準備です

 再び、マーガレットの姿が学園から消えた。

 私とデクランは空き時間にすぐメイナードの研究室に走る。

 駆けつけた私たちに呆れながらも、現状を話してくれた。


「前回と同じく罠には前日までは日に一匹掛かればいい方だったそうだ。さらに、見慣れない男たちの目撃もあった。今はその追跡を行っている」

 みすぼらしい馬車でフードを被った者たちが移動していたという。

 魔物の量が多く、結界の強化が必要だそうだ。


「なんだかんだと、神殿が増長しますね」

「仕方ないことだな。この時代に聖女を得たという時点で神殿は政治介入を狙っているだろう」

 聖女が王子、やがては王の寵愛を受けているとなればさらに国を左右する決定に意見を差し入れることが出来る。

 大神官の実家であるオンズロード公爵家とウォルポート公爵家はもう繋がっているのだろうか?


「聖女の価値を上げて得をするのは二つの公爵家です。そこに繋がりは……」

「リリアンヌ。そういったことを考えるのは我々大人の役目だ。ラングウェル公爵が今暗躍しているだろうさ。もう試験が始まる。君の最高品質の回復薬(ポーション)を期待しているぞ」

 次の薬草学実技はもう少しレベルの高い回復薬作りだった。

「わたくしあれ以降さほど素材の処理はしていないんですけれど」

「泣き言は聞かぬ」

 横暴だ!!




 とはいえ、今回の試験も座学はまあ余裕だった。

 多少問題は違っていても、やはり二度目の授業ということと、イライジャに教えているのがかなりの復習になっていてよかったようだ。

 試験期間になるとマーガレットは戻って来ていた。魔力を限界まで絞り出して疲れているようだが、あれはあれで魔力の底上げになる。使い切れば死ぬが、倒れる直前まで使えば魔力練りと同じような状態になる。

「今回もリリアンヌ嬢のおかげだよ~」

 イライジャはまたCクラスのトップだった。これで来年度からはBクラス間違いなしだ。意外にもクリフォードの成績が上がっている。彼も進級時にBクラスへ行けそうだ。


「フィニアスさんは、法律も満点なんですね」

 アーランデの王子がこの国の法律でこれだけの得点をたたき出すのは純粋に素晴らしいと思う。

「未来のためにね、法律は大切だろう?」

 よくわからない。なんのことだ?


 明日からは実技の試験になり、その後少ししたら星降る宴である。生徒が主体のもので、三年生の卒業パーティーとも言える。本来は最高学年の三年生が中心となるのだが、どうしても王族がいるとそこが中心になる。

 一年のときは普通にギルベルト殿下がスカーレット様をエスコートした。が、今回はどうだろう。スカーレット様にドレスは贈られるそうだ。それは当然。国王陛下が許さないだろう。だが当日は教師以外は入れないのだ。当日そこで行われることに王族は介入できない。


 普段は使われていない大きなホールがあるので、そこでダンスパーティーとなり、三年生はほとんどが出る。二年一年も、爵位が高くなればなるほど出る傾向にある。スカーレット様は出なければならない。私もスカーレット様についていくため毎年ドレスを新調していた。

 星降る、と言われるがこれは昼間行われる。ホールに仕掛けがあった。天井は高くそして暗い。ダンスが終わり、交流が終わると最後に杖に魔力を込めて天井へ放つ。すると、この世界原始の流星が現れる。たくさんの光が天井のさらに上から降ってくるような姿が見られるのだ。

 一年のときにそれを見て、私はとても感動した。

 そう、ダンスパーティーなのだ。




「実技が終わったらダンスの練習に励まないとね! リリアンヌさんはフィニアスさんがいらっしゃるから踊るでしょう?」

「いえ「もちろん、リリアンヌと共に踊るつもりだよ」」

 ダンスとなれば手を握らないわけにはいかない。

 婚約者、または恋人同士と公言している者は当然踊るのだが、この日だけはそういったことなしにフリーの相手にはダンスを申し込むことができるのだ。

 そして受けることも許されている。

 でも、手を握るのだ! 無理無理。


「まだ、正式な婚約者じゃありません!」

「でも、他の男にエスコートはさせないし、踊るのはなおさら許せないよ?」

「エスコートは、その、お願いしますけど……」

 ダンスはダメだと思う!!

「お父様が許すかどうか」

「あら、このダンスパーティーに限っては許可はなくていいのよ。参加したいからその日だけのパートナーというのも認められているわ」

「そこにかこつけて、っていう方々もみられますね」


 横から余計な情報が開示される。知ってるけど! フィニアス知らないかもしれないからやめてよ!

「ただし、手袋は普通のものをね」

 あらやだと、令嬢たちがキャッキャと笑い合っている。

「一応前日に届くよう手紙を送っておこうかな」

「当日お父様が乗り込んでこないか心配です」

 父兄は一応参加禁止である。


 ダンスの練習はダンスホールが開放される。個室の予約もたくさんあるという。

「リリアンヌ、放課後練習しない?」

 フィニアスに言われて私は頭をブンブン振った。

「わたくし、一応踊れますからっ!」

「私が心配だから相手をしてくれると嬉しいんだけど?」

 しないともするとも言えなくて口ごもっていると皆が笑った。

 ちなみに教師がダンスを見てくれたりもする。だが、全員は見られない。

「教師は三年生の方に時間を取られるし、教師役も必要ね」

 この練習期間も手を取ることがわりと大目に見られる。が、普通はダンスを知っている女性が男役を買って出て練習したりする。


「男同士で踊るなんて絶対嫌なんですけど〜」

 イライジャが本当に嫌そうにしている。

「男性は踊ることのできる方の踊りを見て盗むしかなさそうですわね」

 伯爵位でお相手がすでにいる生徒は、入学前にレッスンを受けていたりする。この場合クリフォードやアーノルドだ。


「上級生の方々のを見るのもよいですね」

「ならやはりダンスホールに行かなくては」

 試験が終わったのであと少し授業があるだけで、皆わりあい自由だった。

 学園には不思議な建物がいくつかある。

 杖を得る間もそうだし、このダンスホールもだ。原始の流星を見せるダンスホールは何時ごろ、何のために作られたのかもわかっていない。

 学園を作るとなったとき、当然のようにそこにあったと言われていた。

 杖の間でも闇の中に星々が輝いていた。


 私たちは星に常に見られている。




 ダンスホールは本当に大きい。不思議と全員が入れてしまう。そう、なっていると説明された。

 上級生がお手本のように中央でくるくると回る。

 私もある程度は踊れるが、自信がない者もたくさんいるようだ。

 カタリーナはあえて出ないと言っている。オズモンド殿下が相手と決まっている。王族相手なので余計な誤解を招かないためだそうだ。ダンスはそこまで得意でないので、その方が良いのだとも言っていた。ちなみにスカーレット様も来ていない。妃教育ですでに完璧に踊れるし、カタリーナと同じく相手は王族だ。


 本当にスカーレット様をエスコートするかも、今は怪しいが。


「クリフォードさんとコリンナさんは完璧ですね」

 言われた通り、彼らは上手に踊っている。

「リリアンヌ、一緒に踊ろう?」

「目立ちそうで嫌です……」

「何を今更。ほら、こちらがきちんと踊れるか不安だから」

 とフィニアスが笑顔で言う。なんかきっと絶対違う。

「是非踊ってらして。ほら、身長差がかなりありますから、ヒールで上げるとしても今のうちに感覚を確かめておきなさい」

 令嬢たちに追いやられて、私は差し出されたフィニアスの手に自分の物を重ねる。

 一応今日は普通の方の手袋だ。

 フィニアスのステップには迷いがなく、むしろこちらをリードしてくれる。


「全然心配ないですよね?」

 見上げる形で抗議すると、空色の瞳が細くなる。

「好きな子にはチャンスがあるなら触れたい」

 いつからそんなことを平気で言うようになったのだ。

「むしろこのまま抱きしめたい」

 ダメダメダメ!! 何を言われるかわかったものじゃないと、反射的に身体を離そうとしたが、腰に当てられた手に力が入り阻止される。


「フィニアス!」

「しないって。ダンスの練習だろ?」

「もう、練習の必要もないです!」

「なら、お手本だ」

 そう言って一曲、二曲と踊り続けてぐったりだ。

「終わりです、歩けなくなってしまいます」

「それなら私が抱きかかえて――」

「自分で歩けます!!」

 が、かなり足にきている。やはり本番はヒールもあるし、一曲が限界な気がする。体術とはまったく違ったものだった。


 練習をしにきた令嬢たちも、クリフォードやアーノルドに相手をしてもらっていた。コリンナとアイネアスが許可を出し、普段からの関係性もあるので許される範囲だった。

 私は疲れ切ったので壁際にある椅子に座っている。

「フィニアスもお相手してきてあげたらどうですか?」

「残念だけど私とリリアンヌはまだ正式な婚約は交わしていないからね。他の女性の手を握る気はないよ」

 こんなときだけずるいいいわけをする。

 と同時に、少しほっとした自分がいることも自覚していた。


「イライジャさんは誰かエスコートなさるんですか?」

 彼もモテるタイプだと思うのだが。その日限りの、はありそうなのだ。

「いや、俺はフィニアスの護衛だからね~リリアンヌ嬢が、一緒に踊ってくれるならもちろん喜んで!」

「許さん」

 即答で、イライジャは口を尖らせた。

「ちょっとくらいいいじゃん?」

「ダメだ」

「酷いと思わなーい?」

 二人のやりとりに笑みがこぼれる。

 主従と言うよりは友人にも思えるのだ。

「まあ、俺はもしもの時に控えておきますよ」

 もしも? と瞳で問いかけると、イライジャは少し困ったように笑った。

「スカーレット様、エスコート役が来ないこともありそうじゃない?」

 その返答に、私は、己の感情が表に出ないよう表情を固定しなければならなかった。

「怖い怖いって。リリアンヌ嬢、魔力ダダ漏れしてる」

「そこまで考えて気を遣っていただき感謝しかございませんわ」

「口調も!」

 イライジャに言われても、感情を抑えるのに時間が掛かった。


 フィニアスの手が肩に触れる。

「すみません」

「悪いのは、明らかだしね。ただ、スカーレット様が恥をかかないようにはしたいなって。本当は未婚の俺よりももっと地位のある人の方がいいんだけどね~」

 イライジャは完全にフィニアスの護衛と認識されている。だからギリギリセーフ。それでもギリギリだ。

「親族は宴には来られませんから、仕方ありません」

 エスコートなしにはさせたくない。

「本当に、本人以外周りの人材は完璧なのに」

 どうせ今日も例の談話室でダンスのレッスンでもしているのだろう。頭より身体を使う方が上手いギルベルト殿下は、ダンスもそれなりにこなしていた。マーガレットは教育されていないだろうから、きっと教えているはずだ。

「当日もしそのようなことになった場合は、よろしくお願いします」

「もちろん、まかせて」

 イライジャが頼もしい。





 そして、星降る宴まであと一週間ほどになった頃。

 朝から食堂が騒がしかった。何かと思えば、国が、神殿に財産目録の提出を請求したという話だ。

「思い切ったことをされましたね」

「神殿に対してなんたることを」

「でも、わたくしの家からも毎年多大な寄付をしておりますから」

「収支報告は欲しいですわよね。寄付であるからと詳しくは出すことがないといいますから」

「神官たちの暮らしも清貧とは言いがたいですし」

「特に王都は。他の地方は慎ましく神殿としての在るべき姿だとは思いますよ。特にうちの領の神殿は――」

「王都の神殿は……豪華ですものね」

 貴族からすれば当然のように受け取っていく寄付の金額にはそれなりに不満を抱えている。叩けば埃が必ず出るとわかっていたが、それでも平民に絶大な支持を得ている、そして宗教の頂点にある神殿に直接権力を振るうことはここしばらくしてこなかった。

 何が原因であるかは一目瞭然であった。

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土曜日2話更新で完結となります。

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