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【本編完結済】逆行令嬢リリアンヌの二度目はもっと楽しい学園生活〜悪役令嬢を幸せにしてみせます!〜  作者: 鈴埜
【本編】

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32/82

今度はアシュリーお兄様と!

 王都の外れも外れ。王都をぐるりと囲む壁のさらに外側に、グラドン商会が経営する工場が建てられた。


「これはこれは皆さま。王都の外れまでありがとうございます」


 今日は私が完全に趣味の工場見学に来たのだが、まさかのアシュリーお兄様がついてきた。連日見張られている気がする。

 ちなみに護衛はハンスだ。

 アシュリーお兄様はどちらかというと文官よりだ。魔術は使えるが基本防御になる。戦力として数えてはならない。


「お父様と一緒に見に来られれば手間もかからなかったのだけれど」

「いえいえ滅相もない。ぜひいつでもいらしてください」

「ユージンはどう? 冬休み満喫してる?」

 学園を出れば貴族と平民である。その線引きはきっちりしておかねばお互い不利益となる。


「毎日工場や店で仕事を学んでいます」


 その後はガッツリ見学させてもらった。

 今は肌を整える化粧水や乳液、クリームなどを製造販売しているが、この春には化粧品も販売する予定にしているらしい。


「赤すぎず、艷やかな紅を開発しました。ぜひ持ち帰って試していただきたいです」

「へぇ……アンジェラを連れてきたかったな、これは」

「アンジェラ様は美容にかなりお詳しいので、学校が始まったら試していただこうと思っております」

「それなら、わたくしが化粧類に興味のある女子生徒を集めるから、あなたはそこで紹介してちょうだい。学園内での販売はダメだから、全部サンプルとして渡してもらわなくてはならないけど。なんならその費用は私が持つわ」

「いえいえ、滅相もない。そのような素晴らしい場を設けていただけるのなら、商品より小さい瓶などに小分けにして準備いたします」


 新しい商売の話に花を咲かせつつ、商会長が席を外した隙に、聞きたかったことを尋ねる。


「ねえ、彼女が街なかをうろついているのよ。クリフォード様はほんとうにたまたまのようだったけど、デクラン様は一緒にランチをしていたの。彼女の動き、どうなっているの?」

「言われていたように、商売仲間内に気にするように言っていたところ、どうも恐ろしいほど的確に男性と接触しているようです。アーノルド様が行きつけの本屋にいらっしゃったときも時間ピッタリに鉢合わせしてらっしゃいました」

 ヒソヒソと交わすやりとりに、兄が待て待てと割って入る。


「君たちはそんな、諜報の真似事を……」

「商人仲間の網はなかなか捨てたものではありませんよ、ね、ユージン」

「リリアンヌ様には返し切れない恩がございますので、こちらも最大限コネを使って手助けできればと思っております」

「彼女は本当に、出会うことに長けているのですよ」

「……その情報こちらにも回してくれ」

「お兄様が、どこまでそれを伝えるかによりますわ」

 殿下に回されたら困るし。


 たくさんの化粧品のサンプルをもらって、お互い有意義な時間を過ごせたと、満足のまま帰路につく。

 ハンスは御者席。そして、少し時間を掛けてくれと言う。


「さて、リリアンヌ話し合いを始めようか」

 アシュリーお兄様との会議です!




「まず一つずつ片付けよう。リリアンヌは聖女をなんだと思っているんた?」

「わたくしは……その、突拍子もないと思われるかもしれませんが、いいですか?」

「とりあえず聞かせてくれ」


「私は彼女を、他国の諜報員だと思っております」


 兄様は固まってしばらく動かなかった。

 ようやく動いたと思ったら、御者席に向かって壁をノックし、さらに遠回りしてくれと言った。


「理由を聞いてもいいだろうか?」

「その前に、お兄様はフィニアス様のことをしってらっしゃいますか?」

「と、いうと?」


 間違いなく知っている、とは思うがきちんとしておこう。


「目の奥の赤の話です」

「スカーレット様から聞いたのか?」

「いえ、フィニアス様から先日劇場で確認されました。わたくし、アーランデ公用語は話せますし、お会いした当初語尾に少しですが訛があってかなり早い段階では気づいていました。カスティル男爵を知らなかったというのもあります。それで、学校で彼女はいつの間にか殿下と親しくなっているし、フィニアス様やイライジャ様にも近づこうと躍起になっていたんです。こう、気を引こうとしたり? 先日クリフォード様のところにも現れ、デクラン様とランチを召し上がっている場にも遭遇しました。仲の良さとしてはギルベルト殿下に対してが異常なほどですが、他にもアーノルド様、クリフォード様、デクラン様。ただ、この御三方はまだわかるのです。親がかなり高い地位にありますから……」


 目に見えて、将来の優良物件たち。


「ですが、フィニアス様とイライジャ様は、表向き男爵令息です。たしかにお顔は良いかもしれませんが、貴族は皆ある程度は器量が良いでしょう? なぜフィニアス様とイライジャ様に拘っていたのか? 彼女はその素性を知る機会なんてなかったんですから」

「……殿下と仲が良いから、とか?」

「いいえ、彼女がフィニアス様に一番最初に接触しようとしたのは、入学試験のときです」

「何!?」


 私はあの時あった彼女の行動を語った。


「明らかに、フィニアス様に接触しようとしていたんです。それにわたくし彼女に呼び出されまして、とっても怒られました。邪魔をするなと」


 あの映像は今グスマン伯爵の手元だ。


「しかし、聖属性は……偶然しかあり得ない」

「そうですね。私もそこはちょっと不思議で。ただ、本当に聖属性はオマケで、たまたまで、彼女の目的が最初からこの国の次世代を担う筆頭の学生だったとしたら……」

「少し、検討させてくれ。突拍子もないが、そのフィニアス様の辺りはリリアンヌの言う通り不可解だ」

「わたくしも引き続き彼女の動向には気を付けます。……わたくしの懸念はスカーレット様です。このままだと、スカーレット様はどうなるのでしょう。今だって婚約者を放り出して彼女のもとに行こうとするのに……あ、そうだ。お母様にもまだお話ししてないのですが、フィニアス様と観劇に行った際、ギルベルト殿下と彼女が一緒に劇場にいらっしゃいましたよ?」

「はぁ!?」

「見張りはどうなっているのでしょう? 内部に支援者でもいらっしゃるのでしょうか?」

「頭が痛い」

「最近頭痛持ちの方をたくさんお見かけします」


 お兄様がじろりと私を睨め付けた。


「そうだ、お兄様。難しい話はもうやめて、楽しい商売の話をしません?」

「商売?」

「はい! わたくしこのまま令嬢たちを真実の恋に引きずり込みたいのです」

「……彼女に婚約者を奪われるようなことがないように、か? そう考えるとお前のリクエストはやたらとニーズに合っていたな。何をどこまで考えていたのだ? 我が妹ながら怖い」

「ふふ。殿下周りの地盤がためをしっかりしておきたかっただけですよ。スカーレット様の輝かしい未来のために。で、今回の劇、とても人気だと聞きました。連日満席人が溢れていると」

「だなぁ。どこかのお貴族様がボックス席を抑えてしまったようだし?」

「支払いはみんなそれぞれするようになっておりますよ?」


 今のところ空いている日はない。登城日は最初から押さえていない。


「けれど、ずっと同じ劇をしているわけにはいかないでしょう? 次を始めたい」

「またシュワダー・レフサーの続編を公演予定だそうだ」

「あら、大人気ですわね」

「そのうち新作まで強請られそうだ。子爵令嬢と異国の王子の話でも書かないといけないのか?」

 それの需要はない。


「それで、座長さんの友人が魔塔にいるんですが、ユールさんと言います。ユールさんの開発した魔導具が、その場の出来事をそのまま絵のように保存して、またその絵を他の場所に映し出せると言うものなんです」


 お兄様は何を言いたいのかわからないと、首をかしげる。


「音声も一緒に保存します。ですから、かなりの魔石が必要ですが、今の公演をそのまま動く絵として保存し、他の場所にあたかもそこにあるように映し出すことができるんです」

 なかなかピンとこないようで、さらに首を傾げる。


「今回の公演丸ごと映像に残して、別の場所で映します。劇は人が動いているので臨場感は多少減るかもしれませんが……それでも同じ公演をやり続けることはできませんが、映像として残せば公演に間に合わなかった方々も見ることができる。劇団の方は新しい演目を続け、映像は過去の演目を映し続けるのです」

「……ものすごい金の匂いがするな」

「お金大切でしょ? お兄様。魔導具を大規模な物にする開発費用とか、ぜーんぶ綺麗に取り戻せそうな気がしません? 支援しましょうよ! お兄様お金持っているでしょう? あれだけ本が売れてるんですから」


「リリーはいつ頃から気付いたんだ?」

「的確な新刊が出すぎなので、最初はお兄様がお友達なのかと思ったんですけど……『SwadharLefcer』が『AshleeCrawford』のアナグラムだと程なくして気付きました。まあ、この関係がない限り気付かれないかと」

「アナグラムなんてやめときゃよかったな」

「お母様には……」

「まだバレてないよ! 一応な!」


 バレてもまあ、恋愛モノを書いているうちは平気かと。令嬢に絶大な人気を誇っているのだから。多少貴族らしからぬとは言われるかもしれないが。


「印刷の魔導具と、紙を作る魔導具が足りないって、感謝の悲鳴が聞こえてきてる」

 やたらと速筆だし。それに対応する出版社も大変そうだ。


 そしてとうとう、私はシュワダー・レフサーにお願いを口にする。


「近々、王子様と平民の少女が恋に落ちる話を書きません?」

「……リリー、お前は何がしたいんだ?」

「私は、……スカーレット様が円満に婚約破棄されるのを望んでいるんです」

 兄が目を見張る。


「男爵令嬢ですらない少女と恋に落ちる王子様。貴族と平民の恋。誰にでも優しく愛される平民の娘。視察中事故に遭った王子が、それを王子と知らない少女に献身的に看病され愛が芽生えればいいのです! 身分違いの恋モノで二人を煽って欲しい!」

「俺、王室に殺されない?」

「家族に被害がないようにしてください」

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リピートで読んでます。 アシュリーお兄様ガンバ(^_^;)
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