表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

1、転生先が悪役一家だった!

新作を読んでくださってありがとうございます!

ブックマーク、感想や評価はとても励みになります。

お気に召したらポチっと押してくださると、作者がニコニコと元気になります!

「おぎゃあああ! おぎゃああ!」

「おめでとうございます、元気なお嬢様ですよ」

 

 生まれつき病弱な体質で死因も病死だった私は、気づけば赤ちゃんに転生していた。

 

 家族はキラッキラの美形揃い。

 羽が生えた白い猫さんもいる。

 というか、生まれたてなのに目が見える。不思議。

 

「うにゃーん」

 

 白い猫さんが愛らしく鳴くと、周りにいた人たちが「おおおおおおっ」とどよめく。

 

「お嬢様には精霊の加護があるようです!」

「でかした、ジュリア……!」

「マキシミリアン様」

 

 白い猫さんは、精霊らしい。

 ジュリアというのがママで、マキシミリアンはパパかな。


「ヴァリディシア侯爵家の長女の誕生だ! 我が娘は精霊の加護を受けた。精霊に愛されし子という意味の古代語からもじって『ルルミィ』と名付けよう」


 パパが名前を付けてくれたとき、私はびっくりした。


 ルルミィ・ヴァリディシア侯爵令嬢。

 それは、前世の私が遊んでいたゲーム『光の王子と宝石騎士団』に出てくる悪役令嬢の名前だったから。

 

 これは夢? 悪役の赤ちゃんになる夢を見るなんて、どういうこと?

 でも、夢はいつまでも覚めなかった。

 

「お……おぎゃああああああ!(どういうことなのーーーーー‼)」

  

「元気な子。うふふ! ほらアルバート、あなたの妹よ」

「わあ。あかちゃんだ……ぼくの、いもうとなの?」

「ええ、そうよ。アルバートはお兄ちゃんになったの。妹を可愛がってあげてね」

「うん! ぼく、とってもかわいがるよ!」

 

 聞こえてくる名前は、全部ゲームに出てくるキャラの名前だ。


 ヴァリディシア侯爵ファミリーは、全員が白銀の髪に水色の瞳の超・美形一家。

 美形で金持ちで貴族としての序列も高い家のお姫様に生まれ変わるって、素敵って思うところかもしれない。

 ただ、この家には問題がある。

 

 私、ルルミィが悪役令嬢。主人公に敵対して破滅するキャラだ。

 父マキシミリアンと兄アルバートは禁断の死霊術に手を染めて断罪される悪役貴族。

 母ジュリアはルルミィが3歳の時に起きる事件で亡くなる予定……。


「あ、あうあう……ふぎゃあああああ!(このおうち、みんな揃って破滅する予定じゃなーーーい!)」


 なんと、このお家、『破滅する悪役一家』なのだ!

 

 一家が悪役になっていく分岐点は、ママの死。

 一家は全員、悲嘆に暮れる。

 

 悲しむパパとお兄様に、敵対派閥が手配した商人が禁書を売りつける。

 弱っている心の隙間を突くために判断力を鈍らせる香りを炊いて、「これを使えば死者が生き返りますよ」と囁かれて――パパとお兄様は、買ってしまう。

 

 禁書は所有するだけで罪になり、読んでも凡人には高度な死霊術は使いこなせるはずがない代物だった。

 でも、パパとお兄様は優秀だったので、使えちゃった。

 

 二人は過去に亡くなった人を死霊として召喚する。

 ガチャをイメージしてほしいんだけど、あんな感じで「また違う死霊が出てしまった。もう一回」と、ママが出るまで召喚し続けた。

 しかし、召喚された死霊を制御することは難しく、死霊は暴走して人々を襲ってしまう!

 

 原作のルルミィはママに会いたい気持ちが強くて、二人を止められなかった。

 結果、一家はママの死霊を召喚することに成功する。

 でも、ママは理性を失った凶暴な死霊になってしまった。

 弱っていた心が打ちのめされて、一家は完全に闇墜ちする……。


 と、こんな流れで悪役になり、「悪の一家を討伐せよ!」ってなって、主人公である光の王子様と、彼が率いる宝石騎士団の美男子たちに討伐されちゃうのだ。

 

「可愛い嫡男に、元気な妹姫ちゃん。パパ幸せだなあ! 愛してるよママ、ちゅっ!」

「あなたったら。子どもたちが見てますわ」

「るるみぃ、ぼくがまもってあげるからね!」


 仲良しのパパとママ。やさしいお兄様。

 この幸せ家族が破滅する? ……いいえ、させない。

 

「ばぶーーーー!(私がこのおうちをまもる!)」

  

 転生先が悪役一家だった私は、自分と家族の破滅を回避することを決意した!


「みゃーん?」

 

 そんな私に、精霊様がふんふんと鼻を近づけてくる。

  

 もふもふした毛並みの精霊様は、猫さん特有のいい匂いがする。

 ごろごろと鳴る喉の音とぬくぬくの体温を感じると、安心する。

 

「あう、あう(精霊様、はじめまして)」

「にゃーう!」

  

 精霊様に挨拶してみたら、わかってもらえたみたい。

 前足でちょしちょしと私の指をつついて、握手っぽいことをしてくれてる。肉球がぷにぷにだ。

 

 この王国は、人間と精霊様が共存している。

 姿かたちも属性もさまざまな精霊様は魔法が使える。気に入った人間に加護を与えてくれたり、おねだりを聞いてくれたりする。

 精霊様に気に入ってもらえる人間の数は少なくて、生まれた時から精霊様が寄り添ってくれるパターンはとっても希少(レア)

 

 そんな精霊様は、確か原作の設定だと……「最初は仲が良かったけど、ルルミィの心が闇に染まるにつれて距離を取るようになり、最後には完全にルルミィの元を去ってしまった」キャラ!


「あああああああん‼(見放さないで、精霊様ーーーーーー‼)」


 必死。もう必死。

 自由にならない手足をばたばたさせながら訴える私を見て、家族は「ルルは元気だな!」とニコニコ顔だ。前世が病弱だったので、「元気だな」と言われるのはうれしい。私、元気!


「きゃっ、きゃっ」

「お、るるが笑ったぞ」


 精霊様は……。


「みゃあ♪」

 

 ……今のところ、仲良くしてくれそうです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ