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第8話 ケルビムとドミニク

「これはっ・・・・・何なの!?」


 急いで村へと舞い戻った俺達の前には、ほぼ壊滅に等しい村の残骸と、無数の此処に住んでいたであろう住人の死体が転がっていた。



「教えてあげましょうか? 招かれざる客人よ」



 その声が聞こえて俺達が振り返ると、真っ白の双翼を持った2人組みが立っていた。


「これは・・・・貴方たちがやったの・・・・・」


「そうですよ。 可哀想に。君達さえ此処に来なければ、彼らも、もう少しは生きれましたのに」


「・・・・・」


 クロンはただ、ひたすらに無言を貫いている。その眼に、溢れんばかりの『何か』を乗せて・・・・


「・・・お・・御二人共・・・にげ・・・逃げて」


 瓦礫の中から、ソフィアが今にも倒れそうな足取りで、俺のところに来て言った。


「おやおや。まだ生き残っていたとは。意外にしぶといですねぇ・・・」


「・・・・どうして・・・ですか・・・・・同じ・・・・天使を」


「フフフ、愚問ですね。先に反旗を翻したのは、君達の方ではありませんか? 我らが神は、そこまでお見通しなのです。」


「ケルビム。そろそろ、お喋りを止めよう。予定が狂う」


「はいはい。そうですね、ドミニク」


 そういって、二人の天使はそれぞれの武器を構えた。ドミニクと言う天使は、槍。ケルビムと言う天使は、筆らしき物を手にした。


「・・・・・いい、二人共。ワタシが合図したら、すぐに逃げなさい」


「クロンっ!! 馬鹿いうなっ!! お前も一緒に――――」


「駄目よっ!! こいつらの狙いは、十中八九、ワタシ達なんだからっ!! いいから逃げなさい・・・ ワタシなら、大丈夫だから・・・・」


 クロンは右手を前に差し出す。そして、その右手は、人外とも思ってしまうように、グニャグニャと形を変えていく


「あまり、見てたくなかったけど・・・・」


 そう言い終える頃には、右手の大部分は黒く染まり、破れた袖から見える、肩の辺りまで達していた。 そして、手首には、これも真っ黒に染まったカラスの翼のようなものが出ていた。


「ほう・・・・これはまた、面白い芸当ですねぇ」


「御託はいいわ。さっさと掛かってきたらどう? それとも、天使ともあろう者がこの程度で、怖気づいたのかしら? 滑稽だわ」


「ふん、減らず口をっ!!!」


 その瞬間、この3人の戦闘は開始された。クロンは地を蹴り、敵の頭上で広げられた翼から羽根を撃ち込む。しかし、それは全て、ケルビムの筆によって書かれた『護』の文字で一行に当る気配がない。


「・・・・・く。」


 俺の後ろで辛うじて立っていたソフィアが倒れた。


「くそっ!・・・・クロン・・・死ぬんじゃねーぞ・・・・」


 その後、俺はソフィアを背中に背負い、この戦場を後にした

 


 

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