第13話 ワタシにとって、大切なモノ
辺りはもうすっかり夜になり、無数の星達がそれぞれ夜空に飾り、煌いている。
ワタシは、この集落の近くの高い丘の上に立つ大樹に背中を寄せて、ぼんやりと空を眺めている。
どうして、ワタシは、あの時逃げ出したんだろう?
あっくんが居たから?
ワタシが化け物だから?
怖かったから? それなら何を?
・・・・ああ、そうか。ワタシは、あっくんに――――――
あっくんの口から、『化け物』だと言われるのが、たまらなく、怖かったんだ・・・・ッ!
小さい頃から、ワタシは聖職者として魔と戦う事を強制的に義務づけられてきた。化け物と戦うためには、自分自身が化け物に成るしかない。ワタシが戦うたびに強くなる一方で、どんどんと人間から、切り離され、孤独の淵へと追い遣られていった。 でも、それでいいと思っていた。ワタシが不幸になることは同時に、他者の幸福に繋がるのだから。 化け物が人間として生きるためには、人間の役に立たなければ成らない。当然のこと。でも――――
今のワタシは違う。
あっくんと出逢って、会話して、心を通わせているうちに、ワタシは、一人になるのが堪らなく怖くなっていた。今まで、戦いに対して、死ぬ事に対して、何とも思わなかったのに今は・・・・・
怖いよ・・っ
「ふぅ、やっと見つけたぜ。」
ふと聞こえた声に、ハッとして、後ろに目を向ける。そこには、いつものあっくんがそこには居た。
「・・・・・あっくん、どうして・・・・?」
「ああ? そんなの目撃者が『クロンがこっちに行った』って言ってたから、着ただけだ」
「・・・・・・」
「なぁ、クロン。いい加減木に隠れてないで、出てきたらどうだ?」
あっくんの言葉に、反応して、木の陰から出そうになった。けど、自分に対する嫌悪感が、それを許すはずも無い。
「・・・・・・嫌よ」
「どうして?」
駄目ッ!! これだけは、言っちゃ駄目ッ!!
「・・・・ワタシが、化け物だから」
「?」
「ワタシが、化け物だからって言ってんのよッ!!」
「―――――ッ」
「あっくんも見たでしょう?あの時のワタシを。ワタシ、怒りで我を忘れて・・・いや、違う。怒りなんかじゃない、快楽よ! 他人を甚振るのが楽しかった!さっきまで笑ってた奴らが命乞いをした時、どうしようもないくらい、興奮した! こんなの人間性に欠けてるよ・・・でも!、止められなかった! だから、ワタシは人間じゃないッ!! 化け物よッ! ワタシは、いつか・・・・大切なモノをこの手で壊していしまう!そんなの耐えられない!!
だからッ!! ワタシのことはもう、ほっといてよ・・・・・ッ!!」
「・・・・・・・それが、本心か?」
声が目の前から聞こえて、顔を腕の中に埋めて、悲しみに染まっていたワタシは、顔を上げた。そこにはあっくんが立っていた。 月明かりを背にしていて、顔は良く見えなかったけど、きっと・・・
ワタシと、同じ顔をしていたと思う。
「・・・・・・・本当に、それがお前の本心なのか?」
「・・・・ええ、そう―――――」
「嘘をつくのも大概にしろッッ!!」
「―――――――――――ッ!」
「お前の本心は、自分が言ったことの真逆なんじゃないか?
『ワタシのことはほっといて』。俺には『ワタシを一人にしないで』って聞こえたけどな」
「・・・・・・・」
「お前はいつもそうだ。いつもいつも、人の気も知らずに自分の意志を貫くのに、こういうときになると、自分に嘘をつく。いい加減にしろッ!! 『いつか大切なモノを壊す』だぁ!? そんなの、壊してから言えってンダッ!! 何も壊してないのに、今何もしてないのに、未来のことグダグダ言ってんじゃねぇッ!!」
「・・・・・・何よ、ワタシに・・・・だったらワタシに何しろって言うの――――」
ワタシが、思いっきり怒鳴り散らしてやろうと思ったときに、あっくんは唐突にワタシを抱き締めた。
「・・・・ああ・・・・・・あ」
「・・・・そんなの決まってんじゃねーか。」
あっくんがワタシの耳元で囁く。
「お前は、お前のやりたいようにやればいい。化け物だとか、人間じゃないとか、そんな事は一切関係ないことだ。俺の知ってるお前は・・・陣堂臥畏クロンは、俺の恋人であることに変わりはねぇんだからな。」
「ワタシは・・・・・・・あっくんの・・・恋人にいても・・・・いいの・・・?」
「当然だろ。さぁ、言ってみろ。お前は、どうしたい?」
「・・・ワタシッあっくんと、一緒にいたいッ!・・・お願いだよ・・・・もう、独りは嫌だよ・・・・・」
「・・・・・分かった」
結局、ワタシはその後、ずっとあっくんの胸に顔を埋めて一晩中、声を上げて、泣いていた・・・・・
いかがでしたか?
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