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第07話 新パーティーで初めて依頼を受ける②

 たっ、【短縮詠唱】って、魔法使いにとって喉から手が出るほど欲しいスキルじゃないか……。


 魔法使いの弱点なんて、俺から言わせれば詠唱に時間がかかることぐらいしかない。他の部分は鍛えれば何とかなるし。


 詠唱の速い遅いは人によって違いがあるけど、どんな人でもある程度速くしたところで頭打ちになる。それはそうだ、詠唱は初めから長さが決まっていて変えられないというルールがあるから。


 【短縮詠唱】はそのルールを無視する。スキル持ちしか分からない独自の詠唱で魔法を発動できてしまうのだ。


「いや、すまん。少し驚いてしまってな。確かにリーナの言うとおり、魔法使いにとって重要なスキルだ。それがあるのに、なぜ向いてないなんて思うんだ?」


 それに、何で前のパーティーをクビになったんだろう?


「……実は私、魔法が使えないんです! 適性があるって言われて、冒険者ギルドで教えてもらったんですけど、魔法が発動しないんです……」


「……そうか。ちなみに知ってるとは思うが、MPとか知力が足りていないと魔法は使えないが、そこは足りているんだよな?」


「はい!」


 そう言って、リーナが細かくステータスを教えてくれる。


+-------------------------


Lv:5

HP:20/20

MP:55/55

攻撃:10

防御:10

知力:60

素早さ:20

スキル:【短縮詠唱】


-------------------------+


 やれやれ、簡単にステータスを人に教えるもんじゃないんだけど……。


 でも確かに、魔法を覚えるには問題ないステータス。ナイフでの戦いは向かないだろうな。……というか、むしろゴリゴリの魔法使い向きって感じに見える。つまり……


「リーナ、【短縮詠唱】持ちは独自の詠唱をしないと魔法が使えないはずなんだが、それは知っているか?」


「……えっ? 何ですか、それ……?」


 まじか……。【短縮詠唱】持ちの偉人達は初め魔法が使えなくて苦労した、なんて逸話が、昔読んだ歴史書に冗談っぽく書いてあったけど、ほんとなんだ……。


「普通の詠唱はできないらしいんだ。その代わり、魔法を学んだら独自の詠唱が頭に浮かぶはずなんだが」


「えっ? ……あっ、言われてみれば詠唱? みたいなのが何か頭に浮かんできましたっ……。でもこれ、古代魔族語……? えっと、ふるぐる?」



「ズドーーーーーーン!!」



 一瞬辺りが暗くなったかと思うと、目の前に雷が落ち、不幸にもターゲットとなった木が丸焦げになった。


 俺とリーナはしばし呆然とする。先に気を取り直した俺が


「でっ、できたようだな。あれは……サンダーボルトか? とんでもない威力だが……」


 木が燃える程だったっけ? と疑問に思いつつも、リーナに言う。リーナは「えっ」と小さい声を返すが、まだ信じられないらしく固まっている。


 しかし、次の瞬間ぽろぽろと涙をこぼし、俯いて泣き始めてしまった。リーナの足元にいた黒猫も心配そうに見上げている。


「リっ、リーナ、大丈夫か?!」


「ふえーん! ……ぐすっ……だいじょうぶですっ……はじめて魔法がでぎまじだぁ……ぐすっ……」


「おっ、おめでとう。良かったな」


 リーナは頷きながら、ハンカチを取り出して涙を拭っている。こんな時でも上品だなぁ、この子。


「これなら冒険者としてやっていけるんじゃないか?」


「……はい! ……ありがとうございますっ!」


 リーナはまだ少し瞳を涙で濡らしながら、俺に満面の笑顔で返事をする。



〔依頼達成を確認しました。報酬はこちらです〕


+-------------------------


銀貨一枚


-------------------------+


 やっぱりパーティーメンバーからの依頼だと、報酬ってこんなもんなんだなー。前のパーティーでもそうだったし。でも嬉しい。



 ……あれ、『最適解』全然使ってないわ。ちょっと使ってみるか、一応。リーナの将来はどれが良いかっと。


 1.冒険者

 2.宮廷魔道士

 3.魔法研究者


 こんな感じでどうかな?


〔三つ全ての選択肢が最適です〕


 えー全部?! 最適とは一体……。まっ、どれでも大成するんだね、リーナは。


 気を取り直して俺達はレッドグリズリーの捜索を続ける。ここまでの道のりで、木に爪痕があったり、アーマードボアを食い散らかした痕なんかがあった。おそらくこの辺りがやつの縄張りだろう。



「シャーー!!」


 突然リーナの側にいた黒猫が、俺達の後方を威嚇する。来たか。


「ゴォォォォォオオオ!!」


 耳に途轍もない音量の咆哮が響く。振り向くと、真っ赤で毛羽立った体毛の、体長3メートルを超える熊が両手を広げて立っている。


 おっいたいた、『最適解』もこいつと戦って大丈夫って言ってる。


 この手の魔獣には魔法が良く効くんだよな。リーナに攻撃してもらおう。あっ、そうだ。


「リーナ、あいつを魔法で攻撃してくれるか? あと、良かったらこの杖を使ってくれ」


 『解決報酬』で手に入れた(かし)の杖をリーナに渡す。


「あっ、ありがとうございます! 分かりました!」


 リーナはやる気満々だ。しっかりとレッドグリズリーを見据え、戦闘の構えをとっている。


 俺はリーナが魔法を発動するまでやつを引きつけていれば良いな。背負っていた鋼の盾を持ち、構える。


 レッドグリズリーが近くにいた俺の方に向かって突進してくる。なかなかのスピードだな。鋼の盾で耐えられるか?


 すると一瞬辺りが暗くなり



「ズドーーーーーーン!!」



 と轟音が鳴り響く。次の瞬間目に写ったのは、黒焦げになったレッドグリズリーだった。


 あっ、もう死んでる……。


「……あれ? 動かないです?」


 リーナが俺に声を掛ける。


「あっ、ああ。もう死んでるよ」


「えぇ?! ほんとですか?! 私がC級のモンスターを倒したっ! やったぁー!」


 まじで凄いです。【短縮詠唱】もやばいし、魔法の威力もなかなかだ。


 その後、上機嫌のリーナと一緒にレッドグリズリーを解体し、町に戻ったのだった。

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