第06話 新パーティーで初めて依頼を受ける①
「新パーティーの記念すべき一つ目の依頼、どれが良い?」
俺はリーナに聞いてみる。
「えっ、えーっ?! 私が決められるわけないですっ!」
「いやいや、遠慮しなくて良いぞ? やりたい依頼があれば言ってくれ」
「はっ、はあ。じゃあ、この採集の依頼とかですかね……?」
「E級の依頼だな。よし、これを一つ目にしよう」
「あぁ……、ほんとに選ばれちゃった……」
二つ目は早速C級の依頼にしよう。一つ目とか二つ目とか言ってるけど、全部一気に依頼を受けるから、あんまり意味ない。ただの雰囲気だ。
「C級の依頼は……よし、これにするか」
俺が選んだのはレッドグリズリーの討伐依頼。人間の返り血で赤くなったなんて言われる、非常に獰猛なモンスターだ。ここ最近、近くの森に頻繁に出没するようになったらしく依頼が出たみたいだ。
あとは難易度が低そうなD級とE級の依頼もいくつか受けてっと。
「リーナ、これからもう出発しても良いか?」
「はい! いつでも大丈夫ですっ!」
早速俺達は依頼を達成すべく、近くの森に向かった。
「あのぅ、一度にこんなたくさん依頼を受けて、大丈夫なんでしょうか……? アッ、アランさんの実力を疑ってるとかではなくて、私自身がその、あまり自信がなくて……」
「そうか。リーナはギルドの依頼を受けたことはあるのか?」
「はい。以前お世話になったパーティで受けたことがあります。その時はあまりお役に立てなかったんですけど……」
なるほど。じゃあ自信も持てないかぁ。
「まぁ大丈夫だ。昨日はさっき受けた依頼の倍の数を受けたが、全て昨日中に達成している。昨日と今日で大きく違うのはC級の依頼を受けていることだが、レッドグリズリーぐらいなら俺一人で倒せるから安心してくれ」
「えぇ?! 一日で全部の依頼を? 何日かに分けて進めていくのかと思ってましたぁ……」
「いやいや、それでは稼げない……、ゴホンっ、効率が悪いからな。並行して進めていくのが良いんだよ」
「……オリビアさんがアランさんのこと『賢者』って呼んでたけど、やっぱりほんとなんだぁ……」
んっ? 最後何か呟いてたようだけど、うんうん頷いてるからとりあえず納得してくれたかな?
俺とリーナはレッドグリズリーを探しながら、他の依頼を片付けていく。
リーナが選んだ採集依頼の対象は回復薬の原料になるグリーンハーブだった。薬草類は根っこも使われるから引き抜き方のコツとか、土付きのままだと鮮度が保てるとか、基本的なことを教えていく。
他に受けた素材収集の依頼では、E級モンスターのホーンラビットの角や皮の剥ぎ取りとか、D級モンスターのアーマードボアっていう猪の解体のコツなんかも教えていく。ついでに倒すコツもね。
初めは呆気に取られた顔で俺の仕事を見てたけど、「私も出来るようになりたいですっ!」と言って頑張り始めた。
色々手つきが怪しげな感じはあるけど、初めてだから当たり前。俺の仕事をきっちり真似しようとするこの真面目さは彼女の強みだな。
ただ、ちょっと戦闘が気になる。ナイフで一生懸命戦ってたけど、あんまり得意そうに見えない。
「アッ、アランさんは何でこんなに色んなことを知ってるんですか?!」
D級とE級の依頼達成に必要なものを全て集め終えると、唐突にリーナが俺に聞いてきた。
「何で? 冒険者に冒険者の仕事を何で知ってるか聞くのは愚問だと思うのだが……何か気になるところがあったか?」
「そっ、そうですよねっ?! ごめんなさい……。以前私がいたパーティーの皆さんのお仕事と大分違うので……」
あわわっ! しょぼんってさせちゃった!
「そっ、そうか! 俺の仕事についてだが、色々知ってるのは、前にいた町で色んな種類の依頼を受けてな? なかなか無茶なものも多かったんだが、その度に色々資料を漁って調査したり、解決策を考えたりしていたら、まぁこうなったと言うわけだ。ちょっと我流なところもあるから、良さそうなところだけ盗んでくれると助かる!」
「あと、何でも質問するのは良いことだ! リーナは偉いぞ!」
ちょっと息を切らしながら喋っちゃった……。こんな良い子をしょぼんってさせちゃダメだろ俺! 次から気をつけよう!
「えっ? えへへっ、ありがとうございますっ!」
リーナが照れながらニコッとして言う。天使か!
「あっ、あと、アランさんはモンスターを大体一回の攻撃で倒してた気がするんですけど、弱点とか、分かるんですか……?」
「あぁ。経験で分かる部分も多いが、スキルの効果が大きいな。俺のスキルは良い選択肢を教えてくれたりするんだが、さっきも攻撃のタイミングで時々使っていてね。弱点というのか、効果的な攻撃が分かったんだ」
「良い選択肢……ですか……?!」
リーナが驚いてる。このスキルの便利さに気づいたみたいだ。
「なかなか便利だろう? まあ初めから最適な答えを教えてくれる訳じゃなく、選択肢は俺が考えなくてはならないから、強いて言うとそこが不便だな」
「なっ、なるほど……」
リーナが拳を下顎に当て、何か考えるようにしている。そして、何か思いついたような表情で俺に聞く。
「アランさんのスキルは戦闘以外でも使用できるのでしょうか?」
「もちろんだ。むしろ、戦闘で使う方がイレギュラーだな。問題の解決に使う為のものだよ」
「やっぱり……。アランさん! いきなりなんですが、私の相談を聞いてもらえないでしょうか?」
「んっ? ああ、同じパーティーなんだから喜んで聞くよ。どうしたんだ?」
「ありがとうございます! 私の今後についてなんです!」
〔依頼を受け付けました〕
おっと、【コンサルティング】の声だ。よしよし、なんか曖昧な依頼だけど、解決すれば報酬も手に入るな。
リーナはまずこれまでの経緯を話し始めた。要約するとこうだ。
訳あってこの北アメリゴ大陸に来たが、魔族というだけで怖がられたり、嫌がらせされたりもあり、普通の仕事に就くことが出来なかった。
カナディアの町で冒険者になり、ギルドの紹介で以前のパーティーに入れてもらったものの、あまり役に立てなくてすぐクビになった。
冒険者になったのは良いが、もしかして向いてないんじゃないか、また違う職を探した方が良いんじゃないかっていうのを相談したいらしい。
「ちなみに、なぜ冒険者を選んだんだ?」
「はっ、はい。冒険者は誰でもなれるっていうのと、私のスキルが【短縮詠唱】だったので、魔法をメインに戦えれば少しは役に立てるのかなって……」
「ぶっ?!」
「どっ、どうしました?!」
たっ、【短縮詠唱】?! レアスキルじゃないか! 魔法使いにとって喉から手が出るほど欲しいスキルだ……。
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