第05話 パーティーを組む
「おいおい、マジかよ……」
俺は自分のスキルにドン引きしていた。
朝からギルドで出来そうな依頼を片っ端から受けたんだけど、スキルのお陰で勝手に金やアイテムが貯まっていった。手に入れたものを整理するとこんな感じ。
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銀貨五十枚
鋼のロングソード
鋼の鎧1
鋼の盾1
樫の杖1
体力回復薬2
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「銀貨五十枚って、2ヶ月働かなくても暮らせる金額。一日で稼いじゃった……」
今日受けた依頼はD級冒険者以上のものが四件と、E級冒険者以上のものが二件。スキルの報酬は、D級の方は銀貨十枚で、E級は銀貨五枚で固定。
もらえるアイテムはランダムって感じで、それぞれの依頼のランクに合ったアイテムがもらえるっぽい。
「D級の報酬がE級の二倍だったから、C級の報酬って銀貨二十枚とかいっちゃう感じ? うへへっ、早くC級の依頼受けてみたい!」
「でも俺みたいなC級冒険者の場合、C級以上の依頼を受けようとするとパーティーを組まなきゃいけないんだよなぁ。どうしよう? まっ、しばらくはこの調子で稼いでいくかぁ。このまま依頼をこなしてくだけでも相当稼げるしな!」
俺は次の日も同じようにD級とE級の依頼をどんどんこなして稼いでいった。ギルドの受付嬢には、魔物の解体や素材の剥ぎ取り、薬草採集の仕方がすごい丁寧だって褒められた。
カナディアの冒険者はダンジョン攻略の合間にこういう依頼をちょろっとやるだけだから、あんまり丁寧じゃないらしい。
また次の日も依頼を受けにギルドに来たら、いつもの受付嬢、オリビアから話しかけられた。オリビアは赤茶色のロングヘアーに眼鏡が特徴的な、落ち着きのある綺麗な女性だ。
「あっ、アランさん、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが、今ちょっとよろしいですか……?」
「……何だ?」
「アランさんは時々、C級冒険者向けの依頼書をじっくり読んでおられますよね? もしかして、パーティーメンバーをお探しだったりしませんか……?」
「ん? あっ、ああ、確かに。C級の依頼を受けたくてな……。どうしたものかと考えていたところだよ」
「本当ですか?!」
オリビアの顔がパアッっと笑顔で明るくなる。美人の笑顔は破壊力が高い……。
「そっ、それがどうかしたのか?」
ドキドキしながら俺が言うと、オリビアが近くにいた女性を紹介する。
「こちらE級冒険者のリーナちゃんと言いまして、歳は15です。もし良かったら、この子とパーティーを組んでみませんか?!」
「いきなりだね……」
紹介されたこの子、前にギルドの前で俯いてた魔族の子だ。背は150センチぐらいか。深くフードを被っていて、ほとんど顔が見えない。黒猫は相変わらず彼女の足元にいて、今は俺の方を値踏みするように見てる。
これは悪い提案じゃない。むしろ、何とかパーティーを組めないかと思ってたし、ありだな。でもE級冒険者ってことは、仕事を覚えたりレベルを上げたり、色々育てる必要がある。ちょっとリスクはあるんだよなぁ……。
俺が悩んでいるとオリビアが言う。
「もし組んでくれたら、依頼の報酬額をちょっと多めにします!」
何それ嬉しい!
「でも、なんでそこまで?」
「……はい、せっかく天使のようなリーナちゃんがこの町に来てくれたんですけど、良い冒険者を紹介してあげられなくて……。ギルドはE級冒険者をサポートする義務があるんですけど、全然役に立ててなかったんです……」
すると今まで俯いていたリーナがバッと顔を上げ、
「いいえっ、オリビアさんは私のことをたくさん助けてくれましたっ!」
と言う。目は真剣そのものだ。随分真面目そうな子だなぁ。
フードが外れてしっかりと顔が見えた。まだ全体的にあどけなさが残るが、大きく意志の強そうな目に美しい紫の瞳、色白の肌、将来相当な美人になるだろう。天使というのも頷ける。
「りっ、リーナちゃん!」
オリビアが感動してちょっと泣いてる……。
そして、やっと落ち着いたオリビアが話を続ける。
「それに、アメリゴ王国で活躍されていたアランさんでしたら、安心してリーナちゃんをお任せできますので」
なっ?! この人、俺のこと知ってたのか……。
「でっ、では俺の噂はもう聞いてるんだろう?」
「噂、ですか? それはもう、アメリゴ王国に無料で相談を聞いてくれる親切で優秀な冒険者がいる話なら、何度も耳にしていますが……?」
「そうか」
まだカナディアまで勇者パーティー追放の話が伝わってないのか。ってか、俺ってそんなふうに噂されてたの?! 恥ずかしいけど嬉しい……。
なんかリーナからも尊敬の眼差しを感じるし……。
そもそもE級冒険者って、パーティーを組まないとギルドの依頼を受けられないんだよな。E級より下の依頼ってないから、ソロで受けられるものがない。
でも色んな理由で、パーティーを組めない冒険者だっている。俺も自分のスキルが理解されなくて、パーティーを組むのに物凄い苦労したんだよね……。
昔の自分を見てるような気持ちにもなるし、……よし、決めたっ!
「ではリーナ、今日からよろしく頼む」
「ひぇ?! わっ、私で良いんですかぁ?!」
リーナが俺の言葉に目を丸くしている。
「んっ、何でだ?」
理由がわからず尋ねると、
「あの、役に立つか分からないですし……。あと、私って魔族なんですけど……、ご存じです……?」
とリーナが言う。なんだ、そんなことか。
「あぁ、俺も役立たずなんて何度も言われて来てる。それに、種族とか気にするタイプじゃないんだ。そっちの方が良かったかな?」
「いっ、いえ! ……では、よろしくお願いしますっ!」
リーナは満面の笑みを浮かべて挨拶をしてくれた。やはり、美人の笑顔は破壊力が高い……。
こうして、俺はリーナとパーティを組むことになった。
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