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第28話 英雄になる

 スタンピードがおさまったので、今後俺とリーナはダンジョン攻略の続きを進める予定だ。


 ダンジョンでできそうな依頼はないかと朝からギルドに向かう。



 ギルドに入ると、すぐにオリビアに声をかけられた。


「アランさん、リーナちゃん、昨日はお疲れ様でした。カナディア防衛依頼の達成報酬をお渡ししますので、カウンターまでお越しください。またその後、ギルドマスターからお話があるようなのですが、お時間ありますでしょうか?」


 あ、報酬忘れてた! 楽しみすぎる!


 ギルマスが話って何だろ?


「ああ、大丈夫だ。リーナも問題ないか?」


「はい!」



 早速カウンターに向かい、達成報酬をもらうことにする。


「アランさんとリーナさんは特別な貢献をされましたので、報酬は一人金貨五枚となります」


「ご、五枚?!」


「は、はい……。国を救った英雄に金貨五枚は少ないと思うのですが、ギルドとしてはこれが精一杯でして」


「いやいや、想像してたより多くて驚いたよ。一年は遊んで暮らせる額だし充分だ」


「そうです! そんなにもらえるなんてビックリですっ!」


 リーナも驚きの表情で同意する。


「そう言っていただけると助かります。こちら、金貨五枚ずつになります」


 オリビアが金貨の入った小袋を二つカウンターに置く。


 よっしゃー! 頑張ってよかったー! でも二人分を合わせてやっと経費代が戻って来ただけか……。



 すると【コンサルティング】の声がした。


〔依頼達成を確認しました。報酬はこちらです〕


+-------------------------


金貨五十枚

サンダーストームの魔法書

バーストファイアの魔法書

アトミックレイの魔法書


-------------------------+


 え、えぇ??!!


 金貨五十枚?! それに高価な魔法書が三冊……。


 どういう基準で報酬が決まってるかよく分からんが、今回は国の危機レベルだったし、やっぱり難易度とかなのかなぁ。


 すんごい報酬。何かスローライフの夢が近づいてきてる気がする。ふふふっ。



「それではギルドマスターがお待ちですのでこちらへどうぞ」


 オリビアが俺達を二階の会議室に案内する。


「ようアラン! そしてリーナだったな? よく来てくれた。まずは座ってくれ」


 革張りのソファーに腰掛ける俺達。


「お前達の活躍は聞いている。グレーターデーモン相手に良く頑張ったな! 結構強かっただろ、あいつ?」


「いや、結構強いレベルじゃないぐらい強かったが……」


「わははははっ、そうかそうか! 昔アメリゴの〈自由のダンジョン〉で戦ったことがあるが、まさかこんなとこに現れるとはなぁ」


 おっとこの人、勇者パーティーよりも下の階層に到達してたのか……。少なくともA級以上確定だ。


「国王の警護に駆り出されてたからお前達を助けに行けなかった。すまなかったな。アランに任せて良かったぞ!」


「いやぁ、リーダーは俺じゃないんだが。まあみんな無事で良かったよ」


「おう。それはそうと、アランとリーナに国王から伝言があってな? 今日の午後お前達に会いたいらしい。礼をしたいんだそうだ」


「こ、国王?!」


「王様ですか?!」


 俺とリーナは驚いて聞き返す。


「そうだ。国王にもお前達の活躍が伝わっててな?」


「そもそも冒険者は国が危機の場合、協力するのは義務だ。つまり今回も当然っちゃあ当然なわけだ。それでもお前達には特別な功績があるからってんで、礼がしたいんだとさ」


 随分軽い感じで言うな、このおっさん。


「分かった。それまで何とか準備をする」


「ああ、そのままの格好で良いぞ? カナディアの王はそんなの気にしないお方だ」


「そっ、そうか」


 どんな王様なんだろ……。アメリゴでも王様に会う機会はあったけど、その時はかなり身なりを整えた記憶があるが。


「そんじゃ、また午後ギルドに来てくれ!」



 俺とリーナは全然落ち着かず、結局身なりを整えることにして服屋に行った。とりあえず新品の服に着替えて昼食を済ませ、ギルドに向かう。


「おっ、なんだか小綺麗なってるな。じゃあ、そろそろ行くかあ」



 軽い調子のギルドマスターに連れられて城門に着いた。フルプレートメイルを装備した門番は、ギルドマスターを見るなりビシッと敬礼し門を開けた。


 門をくぐると位の高そうな使用人が待っていた。その人に案内されて待合室のような部屋に入る。


 かなり広く、豪華な調度品があちこちに置かれている。使用人から部屋の中央にあるソファーに座って待つように言われる。



 しばらく待っていると部屋の扉が開いた。兵士らしき人が5名と彼らに守られるように豪華な衣服を身にまとった男性が入ってくる。


 なんだなんだ?



「ブラッドよ。そこの者達が我が国を救った冒険者か?」


「そうです」


「ふむ。我の名はフィリップ、この国の王だ。よく来たな」


 ええ?! こんなところに王様?!


 慌てて立ち上がる俺とリーナ。


「よいよい、座ってくれ。驚かせてしまってすまんな。我も座るとしよう」


 そう言って正面のソファーに座る王。綺麗に整えられた茶色い髪と、立派なカイゼル髭を生やしている。50代ぐらいだろうか。随分気さくな感じの人だ。


「まずは礼からだ。アランとリーナだったか。君達があの悪魔を討伐したらしいな。良くやってくれた」


「いえ、冒険者として当然のことです。それに、スタンピードを止められたのは我々というより冒険者全員の功績です」


 俺がパーティーを代表して返事をし、一礼する。


「ふむ。なかなか謙虚で礼儀正しい男だ。お前とは全然違うな、ブラッド?」


 王はニヤッと笑みを浮かべ、ギルマスに話しかける。


「ええ、まあ。だからって無茶なことは言わないでくださいよ? アランはウチの大事な冒険者なんですから」


 えっ? どういうこと?


「なに? 確かにお前には色々仕事を頼んできたが、無茶というほどじゃあないだろう?」


「いやいや! この前のカナディア山脈に住むアースドラゴンの討伐依頼、無茶どころか無謀でしたよ! もう冒険者は引退したってのに……。誰もやれる奴がいないから引き受けましたけど、危うく死にかけたんだよなあ」


「そう言いながら依頼をこなすのだから、さすが元S級冒険者だ。あれからドラゴンの被害も無くなった。助かったぞ」


「まっ、まあ、それなら良かったですが」


 そう言って頭をかくギルマス。おっさんちょっと照れてるな。


 ギルマスは王からの評価が相当高いみたいだ。それもあって色々仕事を頼まれてたのか。


 ってかギルマスってもう冒険者を引退してるのかと思ってたけど、ほぼ現役じゃん! それも元S級なのかよ?!



「まあそれは良いとして、今日は依頼ではなく礼をする日だ。特別な活躍をしたアラン達にはそれ相応の報酬を渡さなくてはならん」


 王はそう言うと、そばに控えていた執事から紫色のビロード製と思われる美しい小袋を受けとり、それをテーブルの上に置いた。


「まずは白金貨二枚だ。パーティーの活動資金にするなり、個人で分け合うなり、好きに使って良い」


 白金貨ってなんだっけ? リーナも分かってない様子。


 前に本で読んだな。たしか市場には出回らない特別な硬貨で、金貨百枚と同じ価値だったような。


 …………嘘だろ?! 二人で分けても二十年は遊んで暮らせる額じゃないか?!


「こっ、これはさすがに貰いすぎでは?!」


 俺が驚愕してそう口にすると、


「悪魔の魔法が我が国に放たれていた場合、これ以上の被害額になっていたかも知れんのだ。気にせず受け取ってくれ」


 と当たり前のように答えるフィリップ王。


 なんか器でかいなこの人……。



「次にパーティーで利用できる家を贈る。今後もカナディアの冒険者を続けていくならあったほうが良いだろう? どこに建てたいかは後から使用人と話を詰めてくれ」


 ……んっ?


「そして最後に、アラン達を<カナディアの英雄>と認める。ブラッドに与えているのと同等の称号だ」


 ……えっ? なんか色々意味が分からないんだけど……。


 リーナも着いて行けないようでぽけーっとしている。


「この称号はカナディアを救った功績を評したものだが、それだけではない。今後もカナディアに貢献することを期待し、年に金貨10枚が年金として支払われる。また君達に何かあれば、カナディアは出来る限りのことをして君達を守るだろう」


 おっ、俺達が英雄……?


 何かとんでもないことになってないか?!



「異論がなければ我はそろそろ別の用事に向かう。良いかな?」


「はっ、はあ。大丈夫です……」


「そうか。落ち着いたら君達にも国から依頼を出させてもらおう。さらばだ」


 王はそう言ってニヤリと笑うと、兵達と共に部屋を出ていった。




「わははははっ、お前達もまんまと嵌められたようだな!」


 まだ放心状態の俺達に、ギルマスが嬉しそうな顔をして言う。


「どう言うことだ?」


「家も称号も、お前達をカナディアから逃さない為の手段なのさ。ここまでされると、別の国に行こうなんて思わないだろ?」


「た、確かに……」


「私も、ずっとカナディアで頑張ろうって思っちゃってました!」


「それだけ高く評価されたってことさ。さっきは嵌められたと言ったが、悪いことにはならんから安心しろ。まあ、これから色んな仕事が舞い込んでくるだろうがな!」


 まるで仲間を見つけたかのように嬉しそうなギルマス。



 こうして俺達はカナディア王国から英雄の称号を与えられてしまった。何か色々期待されているみたいだが、俺はスローライフの夢を諦めていない。


 今回特別にもらった報酬でその夢にかなり近づいたが、俺好みの土地を買って家を建てるにはまだまだ資金が足りない。


 今後も冒険者としてどんどん金を稼ごう。


 勇者パーティーを追放されたけど、結果的には良かったかな?


 そんなことを思いながら、俺はカナディア城を後にしたのだった。

【★読者の皆様へお願いです★】


本話で第一章完結になります。


ここまで読んでいただきありがとうございました!


まだ☆☆☆☆☆の評価をされていない方、

お手数ですが、どうかここまでの評価をお願いいたします!


評価をいただけると今後の執筆のモチベーションになります!


またもし良ければ、合わせて感想やブックマークなどもいただけると幸いです。


よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一章完!お疲れ様でした! [気になる点] …いろいろ疑問が残りましたね~!…マック…マックズという思い上がりの自己中クズ馬鹿の“聞いてねえ”発言や、その後パーティーごと行方不明が、気になり…
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