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第27話 コンサルは無双する

 障壁の中から俺が出てくると、悪魔はそれを見てゆっくりと降りてきた。


 先程のイライラした表情とはうって変わり、おもちゃでも見つけたかの如く、顔が下卑た笑みで歪んでいる。



 完全に舐めてるなこいつ。空を飛んでたほうが有利なはずなのにわざわざ降りてきた。人なんて、こいつにとっては虫ケラ同然なんだろう。


 こっからは全力で行こう。早速【コンサルティング】を使う。


 どうやって攻撃するべきかっ、と。


 1.剣

 2.スクロール


〔2の選択肢が最適です〕


 オッケー。


 俺は炎魔法と風魔法が込められたスクロールを使用した。


 突如悪魔を覆うように炎のハリケーンが出現し、敵を焼き尽くそうとする。


「グギャァア!」


 叫び声を上げる悪魔。


 次に水魔法と雷魔法が込められたスクロールを使用する。


 空に暗雲が立ち込め、悪魔の周囲にバタバタと勢いよく大粒の雨が振る。


 その雨で悪魔を包んでいた炎が消えるが、ずぶ濡れになった悪魔を今度は電撃が襲う。


「ギャァァア!!」


 しっかりと魔法が効いているらしい。漆黒の翼は焼け焦げて所々に穴が空いている。


 ナタリーのスクロールって基本ぶっ壊れ性能なんだよな。前のパーティーにいたときも使いまくってたけど、大体の敵に効いたもん。



 悪魔は俺の攻撃でここまでダメージを受けると想像してなかったらしい。怒りに震えながらこちらを睨みつける。そして何かの詠唱を始めた。


 攻撃魔法か? 防ぐアイテムとかないな。じゃあどこに避けるべきか、っと。


 1.横

 2.前

 3.後


〔1の選択肢が最適です〕

 

 俺はひょいっと右横に避ける。すると、悪魔の掌から放射された光熱のビームが、先程まで俺がいた場所を穿つ。中級魔法のアトミックレイだ。


「ギ、ギィ……?」


 この程度の魔法はアメリゴのダンジョン攻略で何度も処理してきたから俺にとっては余裕なのだが、あまりにも簡単に魔法を避けられたからか悪魔が呆気に取られている。



 チャンスだ。



 もう一回、どうやって攻撃するべきか、っと。


 1.剣

 2.スクロール


〔1の選択肢が最適です〕


 ふむ、今度は剣か。


 俺はまず攻撃力上昇と素早さ上昇の魔法が込められたスクロールを使用した。そして全力で悪魔に迫る。


 悪魔はすぐに反応し横蹴りを加えようとするが、すでに避け方は分析済み。


 蹴りが放たれる直前に余裕をもって後方に避けた。誰もいない場所を蹴っているように見えるからちょっと間抜けだ。


 そしてあっさりと敵の間合いに入る。どこを攻撃しよう?


 1.角

 2.首

 3.心臓

 4.しっぽ


〔4の選択肢が最適です〕


 一秒にも満たない時間で攻撃する場所を判断する。


 そして敵の背後に回り込み、ブルーメタルの剣を思いっきり振り下ろした。


「バギィン!」


 金属音に似た音が響き、衝撃で手が少し痺れたが、何とか硬いしっぽを切り落とした。


「グギャァァァァァア!!」


 国中に響き渡るような悲鳴。うるさいなあ、こいつ。


 さっきまで悪魔が発していた禍々しいオーラが完全に消えている。こいつの弱点ってしっぽだったのか。


 そろそろリーナの魔法でとどめを刺したい。でも魔法書を渡してまだ十分ぐらいしか経ってないし、流石に無理だよなあ。



 ちらっと城壁の上を見ると、リーナが必死にぴょんぴょん跳ねながら、両手で丸を作ってアピールしていた。


 もっ、もう覚えたの?! 天才だわ……。


「リーナ! 頼んだ!」


 俺が城壁に向かって叫ぶと、リーナはすぐに反応する。


 杖を頭上に高く掲げて、口を動かすのが見えた。



 すると、先程よりもさらに黒く分厚い雲が空に集まり始める。雲は一筋の光も通さず、一気に誰の顔も見えないほど暗くなった。


 そして次の瞬間、直径2メートルはある円柱のような電撃が悪魔に降り注ぐ。


 中級魔法のライトニング…………のはずだ。


 ライトニングって単体攻撃で強力なんだけど、普通こんな風にはならない。強化され過ぎていて別の魔法にしか見えない……。


 リーナの魔法はよく分からん!


 グレーターデーモンは調べるまでもなく死んでる。だって消し炭になってて、原型が残ってないもん。



 かくして俺達はグレーターデーモンを討伐し終え、スタンピードは終焉を迎えたのだった。




 倒れていた冒険者達は、いつの間にか立ち上がりこちらを見守っていた。オーウェンとユリアがしっかり回復してくれたらしい。


 障壁のギリギリまで来て戦いを見ていたベテラン冒険者のローガンが、驚愕の表情で俺に話しかける。


「お前、こんなに強かったのかよ?!」


「えっ、そうか? まあ、色々ずるいアイテムとか使ったからな」


「いや、普通に戦闘能力が高い気がするんだが……。敵が動く前から敵の攻撃を避けてたよな?」


「よく見てたな。スキルを使ってるんだ。あんな感じで使えて結構便利なんだよ」


「結構便利どころじゃないだろ、それ?」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。前のパーティーでは役立たずって言われてたからな」


 ローガンが信じられないといった表情で首を振る。自分のスキルが褒められると嬉しいもんだな。



 話が終わるとローガンが、


「賢者アランのパーティーが悪魔を倒したぞ!!」


 と戦いを見守っていた冒険者達に向かって叫ぶ。


 すると、あちこちで大きな歓声が上がる。


「アラン、よくやったぞー!!」


「さすが賢者だ!!」


「アランはこの国の英雄だ!!」


 ちょっと褒めすぎじゃないかとは思うが、今は素直に受け取っておこう。



 あちこちから声をかけられ、お互い労いの言葉を交わしていく。


 いつの間にか城壁の上から降りてきたリーナが、


「アランさん! 無事で良かったですっ!!」


 といって目に涙を浮かべながら、俺に抱き付いてきた。


 少し驚いたが、かなり不安な思いをさせてしまったんだろうな。


 俺の指示を聞いて、こんなに小さい体でよく頑張ってくれた。



 よしよしとリーナの頭を撫でていると、今度はなぜかオリビアも、俺とリーナに抱き付いてくる。


 ちょ、ちょっと?! ふわふわのやつが腕に当たってませんか?!


「アランさん、リーナちゃん、この国を守ってくれて、本当にありがとう!」


 オリビアも喜びでいっぱいの表情だ。結構大袈裟な気もするけど、全力を尽くして頑張って良かった。


 そんな清らかな気持ちで心を満たし、邪な感情を排除する俺。


 だが排除しきれない。なぜなら豊かな双丘が当たり続けているからだ。


 双丘問題を早急に解決しないと、場合によっては軽蔑されかねない。



 俺は細心の注意を払いながら二人を引き剥がし、


「さっ、さあ、まずはみんな無事か確認しようじゃないか! マックスは無事かな? なーんて」


「そっ、そうですね! ギルド職員として、冒険者の安否確認は義務です。早速確認しますね!」


 そう言って、顔を赤くしながら去っていくオリビア。惜しいという気持ちがないわけではない。


「私も元気いっぱいにしてもらったので、皆さんの様子を見て周りますっ!」


 なぜ元気いっぱいになったのかよく分からないが、リーナも冒険者の元へ走っていく。健気で偉いなあ。


 純真なリーナのお陰で邪念から九割がた解放された俺は、悪魔から酷い攻撃を受けていたマックス達のパーティーを探す。


 しかし、結局彼らを見つけることが出来なかった。どこ行ったんだろ?




 この後、結構高かった『ドームちゃん1号』をしっかり回収し、ギルドが催してくれた戦勝祝いに参加した。


 酔いが回った冒険者達からは、入れ替わり立ち替わり絡まれ、どうやって悪魔を倒したのかしつこく聞かれる始末。


 英雄だなんだと言われたが、俺よりナタリーの魔道具とリーナの魔法が活躍したような気がするから、何か微妙な気持ちになってしまう。


 俺の戦い方ってこんな感じなんだよね。強い攻撃スキルとかを持ってる人に憧れるなあ。


 リーナの方は、色んな冒険者に褒められてずっと恥ずかしそうにしてる。


 あれ、そういやマックスのパーティーの姿が見当たらない。ちょっと気になるな。



 まあ、今はこの戦勝祝いを楽しむとするか。



 こうして俺はスタンピードを無事乗り越え、久しぶりに仲間達と楽しい夜を過ごしたのだった。

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