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第26話 コンサルは遅れてやってくる

 グレーターデーモンが何か呟くのが見える。


 突如空を分厚い雲が覆い、辺りが暗くなった。すると冒険者達は一瞬静まり返り、すぐに何事かとザワザワし始める。


「グレーターデーモンよっ! みんな逃げて!!」


 ここでやっとオリビアの声が届いた。


 しかしそれは一歩遅く、下卑た笑みを浮かべる悪魔の詠唱はすでに完了していた。


 空から無数の雷撃が冒険者に襲いかかる。


 B級のマックス達でさえ防ぐことができず直撃を受ける。当然、それより下位ランクの者に防ぐことはできない。


「「「グアァァァァ!!」」」


 灼けるような痛みと感電による痺れで立っていられず、バタバタと倒れ込む冒険者達。一方最後尾で待機していたE級は敵とみなされていないらしい、魔法が届くことはなかった。


 その様子を見てケラケラ笑い声を上げ、再び詠唱を始めるグレーターデーモン。絶望で悪魔を見上げることしかできない冒険者達へ、次の無慈悲な攻撃が放たれようとしていた。



 しかしそれを邪魔するべく、リーナは悪魔に向けて魔法を放つ。


 雷角の杖を頭上に高くて振り上げて短い詠唱を呟くと、まだ空に残る黒雲から悪魔に向けて電撃を落とす。


 悪魔は不意をつかれて電撃をまともに受け、その衝撃で詠唱を止めた。


 しかし、悪魔の表情は少しも変わらない。今度はリーナを見てニヤニヤしている。まるで新しいおもちゃを見つけた子供のようだ。



(あっ、あんまり効いてないみたい、どうしよう……)


 今の自分が使える最大魔法が効かず、リーナもまた絶望で胸が押し潰されそうになる。


 しかし、リーナの行動で我に返った騎士団弓隊の隊長がすぐさま指示を出し、騎士達も矢での攻撃を開始する。


 彼らも国の一大事であることを理解しており、国を守ろうと言う気持ちは冒険者よりも強いのだ。




 リーナ達の攻撃で生まれた時間を利用して、【ウルフドッグズ】の回復役兼支援役ニコラスは状態異常回復とHP回復の魔法を立て続けにかける。


「くそ! 何であんなバケモンがここにいやがるんだ?! 聞いてねぇぞ!」


「アンタ、聞いてないってどういう――」


 動けるようになったマックスが放った言葉に、ベリンダは疑問を呈する。


 はっとした顔をするマックスだったが、


「うるせぇ! ニコラス、俺に支援魔法をかけろぉ! あいつは俺が倒す!」


「おっ、おう!」


 マックスはすぐさまニコラスに指示を出すと、悪魔に向かって駆け出した。ニコラスはそれを追うように支援魔法をかける。


 マックスの勇気は素晴らしいものだが、悪魔相手には無謀な特攻だった。



 悪魔はそれを見つけると、わざわざ地に降り立ちマックスを迎え撃つ。マックスが振る剣をひらりと避けては素手でカウンターを入れる悪魔。いくら剣を降っても攻撃が当たらず、マックスは一方的に攻撃を受ける。


 どうやらグレーターデーモンとマックスでは戦闘技術に差がありすぎるらしい。


 その戦いにベリンダも割って入るが、やはり攻撃が当たらず逆に倒されてしまった。


 【ウルフドッグズ】の魔法使いセルマは、隙を見て中級魔法を放つが、ほとんどダメージを与えられない。




 しばらくマックスに一方的な攻撃を加え続けていた悪魔だったが、どうやらもう飽きたらしい。


 少しあくびをしたあとに詠唱を始め、ふらふらのマックスに向けて魔法を放つ。


 マックスの目の前で生まれた小さな火球が一瞬で膨れ上がり爆発した。


 マックスの体は炎に包まれ、爆発の衝撃で城壁付近まで吹っ飛んだ。


「「「マックス!!!」」」


 仲間達の叫び声が響く。マックスはぐったりとして起き上がることができない。


 その様子がお気に召したらしい。悪魔がケラケラと笑う。



 そして、嫌らしい笑みを浮かべたままゆっくりと上空に飛び立つと、両手を上げて何やら詠唱を始めた。


 それから数秒で、両手の先に途轍もなく巨大な炎の塊が出来上がっていく。悪魔の目はカナディア王国に向いていた。




「あんな魔法を受けたらどうなってしまうんだ……」


 騎士団の隊長が絶望的な表情を浮かべる。


 リーナにもあの魔法が恐ろしい威力であろうことが想像できた。


 体が震え出すのを感じる。アランには足止めを求められていた。だが、先程放った魔法はまるで効いていないし、今放っても同じことだろう。



 リーナが絶望に囚われかけたその時、やっと一人の男が姿を現した。


「リーナ、待たせたな」



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 馬を全力で走らせカナディアに到着した俺は、街道側の門から城に入り、城壁の上に続く階段を駆け上がった。


 絶望的な表情のリーナを見つけて声をかけると、


「アランさーん! 待ってましたよぉ!!」


 と目に涙を浮かべながら駆け寄ってくる。リーナの顔が一気に安堵の表情へと変わる。


「アランさん! 来てくれたんですね!」


 近くにいたオリビアも同じように、先程までは深刻な表情だったが、今は随分安心した表情に変わっている。


 二人とも相当心細かったようだな。


「待たせてしまってすまない。少し状況を把握したいが、それどころじゃないな」


 空に浮かぶ醜悪な顔をした悪魔が、巨大な炎を作り出しカナディアに放とうとしている。



 あの悪魔、まさかグレーターデーモン? Aランクのモンスターが何でこんなとこにいるんだろう。


 ダンジョンから出てきたって考えるのが自然だから、何か異変が起きてるなこれ。もしかして誰も気づかないうちにダンジョンが拡張してたのかも。



 あいつが放とうとしてる魔法、上級魔法のバーストフレアだ。広範囲を超高熱で焼き尽くす、炎系の爆裂魔法だ。あんなのを打ち込まれたらかなりやばい。


 俺は早速ナタリーから買ってきた魔道具、『ドームちゃん1号』を足下に置いて起動した。すると、薄く金色に光る透明の膜がカナディアの国をすっぽり覆う。


 それを気にも留めず、悪魔はバーストフレアを放った。


 巨大な炎球が薄膜にぶつかると、少し衝撃が発生したのちに霧散した。



 『ドームちゃん1号』やべー! さすがナタリー!


「こっ、この魔道具はいったい……?」


 オリビアが驚嘆の声を発する。


「アメリゴで調達してきたんだ。それが遅くなった原因なんだが、何とかギリギリ間に合ったらしいな」



「リーナ、簡単に状況を教えてくれるか?」


 まずは状況把握。俺はリーナに質問する。


「はい! マックスさんを中心に、Bランクのモンスターは全部やっつけたんですが、その後にあのグレーターデーモンが出てきたんです。それで、突然冒険者の皆さんを雷の魔法で攻撃して、マックスさんを爆発する魔法で倒してしまったんです」


「ほう。これだけの数の冒険者を一気に攻撃するってことは中級魔法のサンダーストームあたりか。マックスを倒せるってことは中級魔法のバーストファイアかな」


 中・高レベルの魔法を軽々と操る感じ、流石上位悪魔と言ったところか。


「リーナ、君にはもう少し頑張ってもらいたい。時間がなくて悪いんだが、この魔法書を読んで魔法を覚えておいて欲しいんだ。この戦いで必要になるらしい」


 そういって、先程アメリゴで買った魔法書をリーナに渡す。


「わっ、分かりました! やってみます!」


 良い返事だ。


「じゃあ俺はあいつの相手をしにいくか」


 そう言って城壁を駆け降り、悪魔の方に向かった。




 悪魔はと言えば、『ドームちゃん1号』に侵入しようと試みるも「バチッ!」っという音とともに弾かれていた。


 それではと様々な魔法を打ちまくったり、物理的な攻撃を加えてみたりするも、堅固な障壁はびくともしない。


 先程までニヤニヤした顔をしていた悪魔だが、今はかなりイライラした表情になっている。



 城壁を降りると、新人のオーウェンとユリアが怯えた表情で戦況を見守っていた。


 そんな二人に悪いとは思いつつ、回復薬と回復魔法のスクロールを山ほど渡し、倒れている冒険者達の手当てを頼んだ。



 『ドームちゃん1号』はモンスターの侵入や攻撃を防ぐが、俺達人間の出入りは自由だ。


 ドーム状の障壁を飛び出し、俺は空に浮かぶ悪魔と対峙したのだった。

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