表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/28

第25話 強敵の出現

 ひたすら馬を走らせ、俺はアメリゴに到着した。この町を出てそんなに経っていないはずだが、随分久しぶりに来た気がするなあ。


 早速、行きつけの魔道具屋へ向かう。路地裏の人目につきにくい場所にそれはある。


 店に入るとカウンターに突っ伏した女性。寝ているわけじゃないらしい。なんだかぶつぶつと独り言が聞こえる。


 その女性は俺の足音に気づくと顔を上げ、ずり落ちた大きな眼鏡をかけ直してこちらを凝視する。


 すると突然「ばっ!」と勢いよく立ち上がり、


「ア、アラン?! 久しぶりじゃない!」


 と驚愕の表情を浮かべる。


 少しウェーブがかかった黒髪に、立ち上がった拍子で傾いたとんがり帽子。服は黒い薄手のローブ。いかにも魔女と言ったいでたちだ。


「久しぶりだな、ナタリー。最近顔を出せなくてすまなかった、色々あってな」


「それは知ってるわ! 大変だったわね……。で、でも、もう少し早く来てくれても良かったのに。心配したんだから……」


 ずれた帽子と乱れた髪を直しながらそう言って、嬉しそうな表情を浮かべるナタリー。


「確かに、悪かったな。今日は沢山買って行くから許してくれ」


「そ、そう言うことじゃないんだけど……。今までどうしてたのよ?」


「すまない、ナタリー。今少し急いでるんだ。また今度話すよ」


「…………まあいいわ。今日は何が欲しいのかしら?」


 ナタリーは少し拗ねたような調子で俺に問う。


「スクロールが見たいのと、スタンピードで役立ちそうな魔道具があれば欲しいんだが」


「えっ? あとの方、なんですって?」


「スタンピードに役立つ魔道具はないか?」


「ス、スタンピード?!」


「そうだ。今カナディアでスタンピードが起きている。その対策でナタリーの店に来たんだ」


「それはまずいわね……。貴方は今カナディアにいるのね。そこからわざわざ私を頼ってここまで来たと。……よし、許すわ!」


 満面の笑みを浮かべ一人で頷いているナタリー。何か良く分からんが、機嫌が良くなったみたいだからラッキーだ。


 ナタリーは天才と呼ばれる魔道具師で、売り物は全て一流の品ばかり。だが気に入らない相手には商品を売らないので、機嫌が良いうちにアイテムを手に入れてしまう方が良い。


「スクロールはここに出ているものと、もっと凄いやつもあるわ。そっちは特別なお客にしか出さない品だけど、アランは特別だからちょっと待ってなさい!」


 そう言ってナタリーが店の奥に入っていく。俺が特別扱いされているのは、前にナタリーの商品開発に協力したことがあるからだ。


 それが上手く行った結果、この町で一位、二位を争う実力の魔道具師と呼ばれるようになったのだから、俺のアドバイスも少しは役に立ったんだろう。



「さあこれよ」


 そう言ってナタリーが持ってきたのは、一見何の変哲もないスクロール。


「こっちは炎魔法&風魔法で、こっちは水魔法&雷魔法のスクロール。あと新作もいくつかあるわ。是非使ってみてちょうだい!」


 ナタリーのスクロールには二つの魔法が込められている。ナタリーが作り出すまでこの世に存在しなかったもので、彼女の発明だ。


 魔法を二つ同時に出せるのが強みで、相性の良い系統の魔法を合わせることで、その威力を数倍に高めることに成功している。


 ちなみに、卓越した魔法使いでも魔法を二つ同時に放つことは出来ない。正確には、並行詠唱できるスキル持ちなら可能なのだが、かなり珍しいのだ。


 この同時発動魔法のスクロールの開発に俺が協力したわけだが、アイディアはナタリーで、俺は開発すべきか否かを判定しただけ。正直、大したことはやってない。



「へえ、新作か。さすが、ナタリーは相変わらず研究熱心だな。尊敬するよ」


「えっ?! あ、ありがとっ……!」


 ナタリーはそう言うと、顔を真っ赤にしてまた店の奥に引っ込んだ。あれ、なんか変なこと言ったかな?


 とりあえず、買うべきかどうか確認していこう。


 スクロールを一通り確認したところ、全部買うべきらしい。ただ、これでもまだ必要なアイテムが足りないようだ。



「ナタリー! 他に役に立ちそうな魔道具があれば教えてくれないかー?」


 俺が奥にいるらしいナタリーに声を掛ける。またぶつぶつと独り言が聞こえた後、少ししてから何かを持ってナタリーが出てきた。


「それは何だ?」


「ふふふっ、聞いておどろかないでよ? これはねー、Aランクモンスターの侵入さえ防ぐほど頑丈な、ドーム型の巨大障壁を作る魔道具、その名も『ドームちゃん1号』よ!」


「ほ、ほう。なかなかストレートで分かりやすいな。それに機能だけじゃなく、見た目や大きさも申し分ない」


「でしょう?! 流石アランは良く分かってるわね! でもあんまり売れないのよねー、なんでかしら?」


 名前のセンスがやばいからだな。他は完璧だもん。小さくて軽いから持ち運びが楽だし、地面に置いたらすぐに強力な障壁が張れるっていう、とんでもない性能だし。


「これも買うよ。あとは」


 店に並んでいる他のアイテムを探し回る。そしてポツンと一冊置いてあった魔法書の購入を決めた時点で、


〔依頼を受け付けました〕


 と声が聞こえた。やっと準備が整ったらしい。かかったお金は全部で金貨十枚。これでも安くしてくれてるんだって……。


 一応スタンピードの依頼が受けれてるか、ステータスで確認するか。



+-------------------------


名前:アラン

Lv:35

HP:180/180

MP:200/200

攻撃:150 + 50

防御:145 + 20

知力:230

素早さ:160

装備:ブルーメタルの剣、冒険者の服、鋼の盾

魔法:生活魔法

スキル:【コンサルティング】

 ・進行中の依頼:〈カナディアの新人育成を成功させる〉〈スタンピードからカナディアを守る〉


-------------------------+



 よし、ちゃんとある。


「助かったよナタリー。これで間違いない。じゃあ、終わったらまた顔を出しに来るよ」


「ほっ、本当?! 絶対来てね!」


「もちろんだ。ナタリーの魔道具は便利で強力なものばかりだからな」


「それが理由なのね……。まあ、来ないより良いわ。気をつけてね!」


「ありがとう」


 俺はそう言って店を出て、アメリゴを後にした。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 Cランクの魔物を退けたカナディアの冒険者達は皆、勝利の余韻に浸っていた。しかしそれも束の間、次のモンスターの波が押し寄せていた。


「フロストトロールが近づいてます! あと、毛がもじゃもじゃの大きい牛さんみたいなモンスターもです!」


 森から迫り来るモンスターの軍勢に気づいたリーナがオリビアへ伝える。


「本当だわ。牛の方はヘビーマスコックス。どちらもBランクのモンスターよ。森を凍らせながら進んできてる。でも<オーロラのダンジョン>ではフロアボスを除けばBランクが一番強い。ここを耐えきれば私達の勝利ね」


「なっ、なるほど。もう少しですかね」


 リーナは少し疑問に思いつつもそう呟く。



「チッ、もう来やがったか!」


 城壁の下からマックスの声が聞こえる。彼らもモンスターに気づいたようだ。


「全員下がれ! 俺達が前に出る。お前らは後ろから炎魔法を打ちまくれ!」


 マックスが迅速に指示を出す。すぐに陣形が整えられた。


 30体はいそうなモンスターの群れが彼らに迫る。


「打てー!!」


 マックスの合図とともに、後方で準備をしていた冒険者達が、スキルやスクロールで炎魔法を放ちまくる。


 続けてマックスと相棒のベリンダは、仲間達から攻撃力・守備力・素早さアップのバフを受け、敵に向かって駆け出した。


 周囲を凍らせながら進んでいるとは言え、寒い環境での生活に慣れたモンスター達の動きはそもそもあまり良くない。それに加え、弱点の炎魔法がかなり効いているらしい。


 マックスとベリンダは、二人一組で一体ずつ的確に相手をする。フロストトロールが吐き出す吹雪や、ヘビーマスコックスの強烈な突進をくらいながら、それに耐えて敵を屠っていく。


 そして、満身創痍になりながらも、遂にマックス達はモンスターを全て倒し切った。


「マックスばんざーい!!」


「良くやった!!」


「【ウルフドッグス】はカナディアの救世主だ!」


 マックスとそのパーティーを賞賛する声が広がっていく。マックスは心の底から満足そうな表情を浮かべている。


「マックスも中々やるじゃない。A級冒険者もそう遠くはなさそうね」


 オリビアもマックスを賞賛する。リーナでさえもその戦いぶりには感銘を受けた。


 しかしながら、戦いはまだ終わっていなかった。




「オリビアさん、あれ何でしょう?」


 森の中から出てくる何かにリーナがいち早く気づく。それは空を飛びながら、ゆっくりと姿を現した。


 身長は人間ぐらいだが、引き締まった漆黒の体に巨大な翼、牛のような角に鞭のような尻尾。全身から禍々しいオーラが漂っている。


 まるでおとぎ話に出てくる悪魔のようだ。それがニヤニヤと笑みを浮かべこちらを見ている。


「あ、あれ、グレーターデーモン?! なんでここにいるのよ?! 」


「グレーターデーモン、ですか?」


「一体で国を滅ぼすと言われる災害級の化物よ!」


「そ、そんな……」


「みんな、逃げて! グレーターデーモンがいるわ!」


 冒険者達に向かって、悲鳴に近い声でオリビアが叫ぶ。しかし、スタンピードの勝利を祝って騒ぐ冒険者達にはその声が届かない。

【読者の皆様へお願いです】


皆さまの応援がとてもとても励みになります!


もし気に入っていただけたら、

下にあるブックマークや☆☆☆☆☆などから、作品への応援お願いいたします!


どうぞ、よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!
↑の評価欄☆☆☆☆☆を押して応援お願いします!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ