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第24話 スタンピードの始まり

 カナディア防衛作戦はこのままだと失敗する。一体何が足りないんだ?


 こんな時のスキル様だ。どういう風に聞くと良いかなぁ。


「……じゃあ、やるべきことはどれか、っと」


 1.人材を強化する

 2.物資を強化する

 3.資金を調達する

 4.情報を収集する


〔1と2の選択肢が最適です〕


 うーん、つまり『人』と『物』か。一応聞いてはみたけど、『人』は無理なんだよな。これから人を増員したり、突然人を成長させたりってできないし。


 『物』なら何とかなるかも。


「準備するべきものは……」


 1.装備

 2.回復薬

 3.魔道具

 4.その他


〔2と3の選択肢が最適です〕


 回復薬と魔道具か。じゃあ店に行ってみるか。


 初めに回復薬の店に来た。アイテムを手に取っては入手すべきかスキルで確認していく。結果、ポーション、マナポーション、解毒剤が必要と言うのでとりあえず沢山買い込む。これで回復薬は十分らしい。


 次にカナディアの魔道具屋に来た。マジックバッグ、ランプ、転送魔法陣、鑑定眼鏡なんかが所狭しと置いてある。


 だがこの店にあるアイテムどれを手に取っても、入手すべきものが見つからなかった。あれっ、そういえばスクロール無いな。


「店主、スクロールが無いようだが」


「なんだ、あんたも必要なのかい? 昨日大量に買ってったお客がいてねぇ、在庫が空なんだよ。珍しいこともあるもんだ」


 俺の質問に、かなり高齢であろう女店主がはきはきと答える。


 そのお客って、まさかマックス?


「そのお客は狼の獣人じゃなかったか?」


「いやあ、違ったねぇ。この町じゃ見かけない顔だったよ」


「そうか、ありがとう」


 俺は店主に挨拶して店を出た。マックスじゃないのか。まあスタンピードの発生に気づいたのが今日なんだから、あいつな訳ないか。


 まったく、このタイミングで品切れなんて運が悪いなぁ。


 こうなったらアメリゴに行くしかないか……。できれば行きたくないけど、一番近い町はあそこだし。腕の良い知り合いの魔道具師もいる。


 よっし、行こう。俺はすぐに馬宿で馬を借りて、アメリゴへ出発した。ざっと2時間ぐらいで到着するはずだ。


 街道を走っていると、森の中から地響きと無数の魔物の鳴き声が聞こえてくる。スタンピードの魔物達だろう。もうここまで来てるってことは、まもなく戦闘開始だな。リーナ、気をつけて戦ってくれよ。


 俺はそんなことを思いながら、アメリゴに向けて全力で馬を駆るのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 カナディアの城壁の上では、王国騎士団の弓部隊と一部の冒険者がその時を今か今かと待ち構えていた。


 その中にリーナもいた。アランの言いつけを守り、城壁の上で戦うつもりなのだ。


 リーナがふと森に目を移すと、無数の魔物がこちらに向かってくるのが見えた。もうすぐ戦闘が始まってしまう。


 モンスターが城壁に近づいてきたら魔法を放って倒す。リーナの役割はこれだけだ。しかしモンスターとの距離はかなり離れているので、今のところ眺めることぐらいしか出来ることがない。



「リーナちゃん、お疲れ様。モンスターの様子はどう?」


「オリビアさん! もうモンスターの姿が沢山見えています! あっローガンさんのパーティーが戦い始めたみたいです!」


 オリビアが城壁の上へ辿り着くのとほぼ同時に、カナディア防衛戦の火蓋が切って落とされた。


「アランさんはまだなのね。早く戻ってきて欲しいわ……」


 リーナも同じ思いだった。



 ローガンをはじめとするカナディアの冒険者パーティーは、C級とD級が中心だ。現在戦っている相手はD級のビッグトロールやキラーウルフで、個別に撃破していけば彼らが負ける相手ではない。


 新人のオーウェンやユリアも精一杯戦いに参加している。


 冒険者達は迫り来るモンスターを順調に倒し続けた。しばらくして全てのモンスターを殲滅した。第一波を乗り切ったのだ。


「なんだなんだ、結構余裕じゃねえか!」


「ああ、これなら何とかなりそうだな!」


 そんな声があちこちから聞こえてくる。


 城壁に近づくことができたモンスターは一体もおらず、リーナが魔法を使う機会はなかった。



 少しの間を空けて、次のモンスターの波が押し寄せる。今度はC級モンスター、レッドグリズリーとシルバーウルフの群れだ。


 ここで本作戦のリーダー、マックスが最後列のど真ん中に陣取りながら指示を出す。


「D級とE級の奴らは最後列まで下がれぇ! C級は最前列で敵を食い止めろぉ! 全員、魔法とスクロールでバフを掛けやがれぇ!」


 早速冒険者達は陣形を整え、全員が攻撃・防御・素早さのバフをかけて戦闘を開始した。バフさえしっかり掛けられれば、D級冒険者でもC級モンスターと渡り合える場合もある。


 戦闘があちこちで始まった。100体以上はいるだろう魔物達を一体、また一体と、確実に倒していく。


 シンプルだけど正しそうな戦術。素人ながらリーナはそう思う。実際にどのパーティーも大きな怪我はなく、陣形も崩さずに立ち回ることができている。さすがB級と、ほんの少し認めざるを得ない。


 冒険者の網を抜けてくるモンスターは、リーナやその他魔法使いによる攻撃魔法の餌食となっていく。また王国騎士団の弓隊も、素早い攻撃でモンスターを射抜いていく。


 厳しい戦いながらも全員が死力を尽くし、遂にC級モンスターの殲滅に成功した。


 冒険者達から大きな歓声が上がる。


「みんな頑張ってくれているわね! このままの調子で戦えれば何とかなりそうだわ!」


「そっ、そうですね……」


 オリビアの願いにも似た言葉に対し、リーナは素直に同意することができない。


 アランはこのままでは負けると予言していた。アランの言うことが正しいのは、これまで一緒に冒険してきたリーナが一番良く知っているのだ。


「早く帰ってきてください、アランさん……」


 アランから手渡された杖を見つめ、静かにそう呟くリーナなのだった。

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