第02話 パーティー追放②
何なんだよ、こいつら……。言ってることがめちゃくちゃだ。俺をバカにしてるだけじゃないか……。
リリアンはまだ言い足りないらしい。
「あと今まではっきり言ってなかったけど、アンタ、とにかくダサいしキモいのよ。お洒落も出来ないし汚いし。一緒にいると恥ずかしくて嫌なの」
そう。このパーティーはシーザーが勇者と呼ばれるようになると、前よりもさらに外見を気にするようになった。なんとそれはダンジョンの中でも同じだった。
……今度はダサいし、キモい、か。そんな風に思われてたなんて……。
「……だから、お洒落なんて合理的じゃないからだって、以前話しただろ……? 何の効果もないアクセサリーを着けてもダンジョンじゃ役に立たないし、装備は使い慣れた物じゃないと危険だし」
「黙りなさい! それだけじゃないわ。あんた気づいてないかもしれないけど、アイテムを回収してる時とか、顔がニヤニヤしててキモいのよ! 欲望丸出しで吐き気がするわ!」
「それにね、その喋り方よ。『合理的じゃない』とか、上から目線な喋り方が最高にムカつくわ!」
俺の存在を全否定するような言い方だ……。そんなに嫌われてたのか……。
気持ち悪い顔をしていたのは申し訳ない。金になりそうなものを見ると、どうしてもテンションが上がるんだよな……。
話し方は長年こうだし、コンサルタントとしてはこの方が説得力があるから意図してやってる。流石に直すのは難しい……。
「そうだ、彼女にも聞いてみるか。君はどう思う、キャサリン?」
シーザーが問いかける。
キャサリンは勇者パーティの聖女と呼ばれる回復魔法の使い手だ。金髪に碧眼でスタイルも良く、その清楚さと美貌は男性だけでなく女性にも人気があるほどだ。白い生地に金の刺繍が施された、美しく豪華な修道服を身に纏っている。
「そうですね……私達【ライジング・サン】はこれからアメリゴ王国が管理する【自由のダンジョン】の最下層に挑もうとしています。40階層以降はS級の力が必要とされていますので、C級のアランさんでは命を落とす危険があり、心配ですわ……」
「さすがはキャサリン、こんな奴のことまで気にかけてやるなんて慈悲深い。さすが聖女と呼ばれるだけある」
シーザーが満足そうに頷く。
「……俺だけC級なのもお前達のせいじゃないか」
俺以外のメンバーは全員A級冒険者だ。だが俺は、冒険者ギルドから一方的に雑用担当と評価され、それに対してメンバーからのフォローもなく、未だにC級のままだ。
ちなみにキャサリンは聖女などと言われているが、裏では俺を家来のように顎で使う女だ。今は周りに酒場の客がいるから、猫を被ってこんなことを言ってるだけ。
そう言えば酒場の奴ら、ずっと俺達の話に聞き耳を立ててる。それで俺の顔を見てはクスクス笑ってやがる。どうやら俺は良い酒の肴になってるらしい。
「んっ? 何か言ったか?」
俺の存在など忘れていたかのようにシーザーが聞いてくる。
全員が俺を追い出したいのはよく分かったよ……。でも俺はこれでもプライドを持って仕事をしてたんだ。こいつらの中で、俺の代わりをできるやつなんているのか?
「……じゃあ、最後に教えてくれ。俺の仕事の代わりは誰がやるんだ?」
「やれやれ。『俺の仕事』なんて言ってるが、さっきリリアンにも言われただろう? お前がやっていたのは新人の冒険者でもできる仕事ばかりだ。まあ俺達がやるのはふさわしくないから、新しくメンバーを入れることにしたよ」
……はっ?
俺が呆気に取られていると、シーザーは別のテーブルに座っていた男女に合図をする。その男女は立ち上がり、こちらへ来た。
「お前以上に『お前の仕事』をしっかりこなしてくれる、この二人に頼むことにした。新メンバーの紹介だ! 探索役兼ポーターの」
……なんだ、この茶番は? 俺に新メンバーを紹介しても意味ないだろ。
……そっか、俺はこの新入り達の引き立て役にされてたのか……。その証拠に、シーザーは俺のことなんてまるで見ちゃいない。周りでニヤニヤ見てた冒険者達へのお披露目で忙しそうだ。
今日は随分冒険者がいるなと思ったが、俺を貶めて新メンバーを加えるこのイベントの為に呼んだのか。ふざけてる……。
新しいメンバーも随分と顔が良いな。男も女も可愛いらしいタイプを揃えた感じか? それに装備がピカピカで小綺麗だ。
……っていうか、えっ?! こいつら手繋いでないか……? 驚いて二度見しちゃったけど、やっぱりそうだ……。 カップル、なのか? この状況である意味すごいわ……。
いや、それほど驚くことじゃないかも知れない。なにせシーザーはキャサリンと、ラックはリリアンとできてるようだからな。こいつら、美形・お洒落・全員カップルの三拍子揃った勇者パーティーを作ろうってわけか……?
そうか、だから俺が邪魔になったのか……。俺みたいな役立たずでキモいやつは要らないか……。
新入りの紹介は終わったらしい。シーザーが俺に言う。
「まぁそう言うことだ。ほんの少しだったが、いずれS級冒険者になる俺達の役に立てたんだ。誇りに思えよ?」
「さぁ、目障りだからもう行ってくれるか? お前のボロい装備はくれてやる。だがそのアイテムバッグは置いていけ。パーティーのものだからな」
……装備もアイテムバッグも俺が金を工面して買ったから、こいつにどうこう言われる筋合はない。でも、もうこの場を早く離れたい。こいつらと交渉なんて、一秒たりともしたくない。
「あぁ、分かったよ」
俺は背負っていたアイテムバックを下ろし、テーブルに置いた。
三年いたパーティーの最後がこれかよ……。
15歳の時にギルドの冒険者訓練所で出会って、こいつらは俺とパーティーを組んでくれた。俺のスキルが目当てだったんだろうけど、それでも恩義を感じながらここまでやってきたんだけどなぁ。
俺はそんなことを思い出しながら、悔しさと虚しさを胸にその酒場を後にしたのだった。
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