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第15話 ダンジョンに挑戦③

 今回のダンジョン探索の目的地、10階層に来た。


「このフロア、雪が積もってるな」


「はい、ちょっと歩きづらいですかね」


「確かに。ブーツも用意しておいた方が良かったか。聞いていた情報ではここまで積もっていないはずだったんだが。そう言えばここ最近、10階層に冒険者が入ってないんだった。環境が変化していてもおかしくないか」


「なるほど。木に氷柱(つらら)もできてますし、結構寒くなったんですかねぇ」


「俺の想定が甘かった、すまん」


「いっ、いえいえ、このぐらいなら全然歩けます!」


 リーナはそう言ってくれるが、20センチは雪が積もってるから、普通に歩きにくい。この状態で敵と戦うのはちょっときついぞ。



 そんなことを考えていると、前方から何やら複数の魔物の叫び声らしきものが聞こえてくる。


 そして「ドンッ!」という音と共に、何かがこちらに飛んできて俺達の目の前に「ズドン!」と落ちた。よく見るとビッグトロールだ。


 ビッグトロールって11階層以降に出るモンスターのはずだけど、なんでいるんだ? それに、なんで俺達の前に飛んできたんだ?


 後者の答えはすぐに分かった。


「アランさん! あそこに、ブラックムースよりも大きい魔物がいます! あれがオーロラ=レインディアでしょうか?!」


「ああ、多分そうだな」


 ビッグトロールを吹き飛ばしたのは間違いなくあいつだ。まだ他のビッグトロールと戦闘をしていて、こちらに気付いていないようだ。


 ここからでも、相手の体がでかいから良く見える。一番目立つのは角だ。複雑に枝分かれした巨大な角がバチバチと黄色く光っている。どうやら帯電しているらしい。


 名前にオーロラと付くが、体毛は白に少し灰色がかった色をしていて、美しい毛並みだ。積もった雪などお構いなしに、凄まじい速度でエリアを駆け回っている。


 こりゃまずい。これでC級って何かの間違いじゃないか? 相手に有利なエリアだしなぁ。


 まあそもそもどんな敵だろうと、正面から戦うなど愚策中の愚策だ。相当レベルが離れた相手でなければやってはならない。それも踏まえてどうやって戦うか。


 魔獣系は基本的に魔法が効きやすいが、ボスクラスは大体耐性を持っていて、効果がイマイチだったりする。ダメージを与えるにはそれを超えるだけの高火力か、何か工夫が必要だ。


 俺達の場合リーナの火力は中々だが、相手はこの階層のボスだ。あまり効き目はないだろう。俺の剣での攻撃の方が効きそうだが、それでも簡単に攻撃が届くか微妙だ。


 とにかく、この雪を何とかしないと普通に戦うことすら出来ないかぁ。雪が邪魔なら雪かきするか、溶かすしかないよな。


〔後者の選択肢が最適です〕


 溶かすほうが良いか。溶かす方法は炎系のスクロールとリーナの魔法で何とかなりそうだ。でもどのぐらい溶かせば良いかな? このフロア全部は流石にきついよなぁ。


〔それが最適です〕


 えー? 雪を全部溶かすのが?!


〔それが最適です〕


 ……あっ、そう。まだ敵に気づかれてない今のうちにやってしまうか。



「リーナ、悪いがこのフロアの雪を全部溶かしたい。手伝ってくれるか?」


「ぜっ、全部ですか?! ……アランさんが言うなら間違いないです。頑張りますっ!」


 驚いた割にすんなり同意してくれるなぁ、リーナは。前のパーティーでこんなことを言うと、「意味が分からん」とか「面倒だからやりたくない」とか散々言われたんだけど。


「よし、始めよう」


 俺はファイアボールのスクロールを取り出して、少し離れた地面に向けて発動する。雪が一気に溶けて蒸気が生まれ、その下に生えていた草が真っ黒に焦げる。


 リーナの方を見ると、うわっ?! 1発で凄い範囲を溶かしてる! 俺のファイアボールの何倍……?。


 俺とリーナでファイアボールを打ちまくり、ほんの5分程度でオーロラ=レインディア達がいる場所以外の雪を溶かしきった。


 炎の熱と雪が溶けた時に発生した蒸気で、フロア全体の温度と湿度が急上昇している。もはや暑い。コート脱ごう。


 敵も俺達の存在に気付いていたが、戦いの最中だから特に何も仕掛けてこなかった。しかし遂に、オーロラ=レインディア対ビッグトロールの集団の決着が付き、前者の魔物に軍配が上がった。


 この階層のボスだしC級のモンスターだし、まあ当然だ。


「リーナ、多分そろそろオーロラ=レインディアが攻撃を仕掛けてくるから気をつけてくれ。いつも通り俺が敵の攻撃を受けてるから、あいつがいる場所の雪もファイアボールで溶かして欲しい」


「了解です!」


 俺が鉄の盾を構えて、敵の攻撃に備える。


 ……あれ? 何かあいつ、こっちを見てはいるけど全然近寄ってこないなぁ……。


 その間にもリーナのファイアボールは炸裂し、残すところ敵が立ち尽くす場所のみとなった。そして、遂にリーナの放ったファイアボールがその場所を襲う。


 敵はその攻撃を危険と見るや、上空に飛び上がって避けつつ、俺達の方に飛んで来る。避けると同時に攻撃を仕掛けてくるつもりか。


 敵は蒸気が立ち上り、熱で陽炎(かげろう)が生じる地面に着地するやいなや、焦った様に飛び跳ねながら元いた場所へ戻ろうとする。


 ……んっ? どした?


 しかし、戻ろうとした場所も気に入らないらしく、キョロキョロしながら全速力でフロアを駆け回っている。


「あっ、あれっ、どうしたんでしょう?」


「うーん、見た感じ、暑いんじゃないか……? 涼しいところを探してるみたいだ。氷点下で生きてる魔物だしな」


 俺達がポカーンと眺めていると、オーロラ=レインディアは散々走り回った後、疲れ果てて速度を落とした。今はふらふらしながら歩き回っている。



「なんか放っといても死にそうだが、何が起こるか分からないのがダンジョンだ。今のうちに倒してしまおう」


「そっ、そうですね!」


 【コンサルティング】で攻め方を決めよう。魔法よりは剣の方が効きそうだからっと。


 1.足を攻撃

 2.急所の首を攻撃

 3.急所の心臓を攻撃

 4.角を攻撃


〔四つ目の選択肢が最適です〕


 おけ。俺は敵の後ろからばれないようにそっと近づき、突然飛び出して両方の角を斬り飛ばした。


「ガァア?!」


 叫び声を上げながら体をビクッ!と震わせると、オーロラ=レインディアはそのままバタッと倒れた。



「死んでるな。角が弱点だったみたいだ」


「何かあっさり倒しちゃいましたね……。さすがアランさんです!」


「いやいや、リーナの魔法のお陰で弱ってたからだよ。早速解体して素材を回収しよう」


「了解です!」


 ボスの解体を終え、ついでにビッグトロールからも魔石を回収することにした。


「ビッグトロールは11階層以降にいるはずですよね? 何でこの階層にいたんでしょうか?」


「ああ、俺にも分からない。早めに町に戻ってこの事を伝えた方が良さそうだな」


「そっ、そうですね。何か起きてるかも知れないですもんね……」




 町に戻り、依頼達成の報告をしに冒険者ギルドへ入る。すると早速オリビアがこちらに気付いてダッシュで駆けつけて来た。今完全にカウンターを飛び越えたな。


「リーナちゃん! アランさん! お帰りなさい!」


「ただいま戻りましたぁ!」


 リーナの元気一杯の挨拶に、オリビアも心から安心した様子だ。


「でも、随分早いですね? まだ夕方にもなってないですけど、一旦戻られたんですか?」


「いや、依頼達成の報告だ。かなりスムーズに進んだからな」


「えぇ?! スムーズどころの速さじゃないですよ?! その依頼、色んなパーティーが失敗してたんですよ? どうもボスが強いみたいで……」


 やっぱりか! C級の強さじゃないと思ったよ!


「リーナが活躍してくれたからかな」


 俺がリーナを褒めるが、


「いえいえいえいえ! アランさんに着いて行ったらいつの間にかボスのところにいて、いつの間にか倒してただけですっ! 私は何にもしてないですぅ!」


 と慌てて否定するが、そんなことは無い。リーナの頑張りも後からしっかり伝えておかないとな。



 その後、カウンターでオリビアに依頼達成の報告をすると、【コンサルティング】の声が聞こえた。


〔依頼達成を確認しました。報酬はこちらです〕


+-------------------------


金貨三枚

雷角の杖1


-------------------------+


 うえぇ?! きっ、金貨三枚?! あと何か強そうな杖来たー! 今回は声出さなかったぞ、偉い俺!


「アランさん、また凄い顔してますよ? まだ依頼達成の報酬をお渡ししてないんですが。こちら、今回の報酬の銀貨十枚です」


 オリビアが苦笑しながら、今回の報酬が入った小袋をカウンターに置いて言う。


「ああ、すまん。いつもよりこの小袋が膨らんで見えてつい、な……」


「はい、この前よりも多いですね。ブラックムースの素材も含めてこの報酬です。ちなみにオーロラ=レインディアの毛皮もこちらで引き取りますか? もしもっと深い階層に行く予定でしたら、この毛皮で装備を作ると効果的ですよ?」


 リーナの方を見ると、コクッと頷く。やる気だな。


「じゃあ毛皮は持ち帰るよ。ありがとう。ところで」


 そう言って俺は何体ものビッグトロールが10階層に出現したことを伝える。



「ほっ、本当ですか?! それは明らかに異常事態です! どうしましょう……」


 オリビアが少し考えるような仕草を見せる。彼女には言うまでも無いと思うが、意見を聞きたそうにこちらを見ているので一応考えを述べる。


「11階層以降の調査が必要なのは間違いないだろう。危険性も考慮して、ある程度腕の立つ冒険者パーティーでチームを組んでやるべきだ」


「現状一番可能性が高いのは、長期間放置された階層からモンスターが溢れ始めていると言うことだ。このまま放っておくと魔物暴走(スタンピード)が発生するかも知れない」


「ス、スタンピード?!」


 リーナが驚愕の声をあげる。


「はい。私もその可能性を考えています。ここ数ヶ月冒険者が10階層以降に行っていませんでしたから、十分あり得るかと。やはりアランさんはダンジョンの事情にかなり詳しいご様子。調査の際は、もちろん参加してくれますよね?!」


 手のひらを合わせて、目をちょっと潤ませながらオリビアが言う。あざとい! そして俺を試したな、この人……。


 ただこんな感じで頼ってくれるってことは、結構良い関係を築けてるのかな。それに、オリビアって結構お茶目なんだね。


「まあ、報酬次第では参加しよう」


「はい、お願いします!」


 オリビアの顔がパアッと明るくなる。


「リーナちゃんも、その時はお願いね?」


「はい、頑張りますっ!」


 リーナはいつでもやる気満々で微笑ましい。


 ひとまずこうして、パーティーで初めてのダンジョン探索は無事に終わったのだった。

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