第14話 ダンジョンに挑戦②
探索を開始するとすぐに、前方からスケルトンが2体現れた。カタカタと音を鳴らしながらこちらに近づいてくる。
「リーナ、スケルトンは動きが遅い。しっかりと動きを見ても十分相手の攻撃を避けられる。こんな感じだ」
俺はそう言うとスケルトンの方へ迫る。敵は錆びた剣で2体同時に斬りかかって来るが、カクカクしてとにかく動きが遅い。しっかりと動きを見て攻撃を避け、細い首を鋼鉄のショートソードで斬り飛ばした。
「なっ、なるほど! 次は私もやってみます!」
すると早速奥からスケルトンが2体追加で現れた。その後ろからゴブリンも2体近づいている。
「後ろのゴブリンは俺に任せてくれ。前のスケルトンを頼むぞ」
リーナにそう言うと、スケルトンの横を駆け抜けてゴブリンに近づいた。
すると後ろからリーナが何か呟く音が聞こえる。振り返ると一体のスケルトンから炎が燃え上がるのが見える。ファイヤボールかな? にしては随分燃えてる気がする。
そんなことを思いつつ、ゴブリンがダガーを持って飛び掛かって来るのを鉄の盾で受け、そのまま腕を振って敵を吹き飛ばした。もう一体はこちらから攻撃を仕掛け、上段斬りで一閃した。
ゴブリンはEランクのモンスターだから余裕を持って倒せる。俺は吹き飛ばした方のゴブリンにとどめを刺して、リーナの方を振り返る。
リーナはしっかりと攻撃を避けた後に距離を取り、そこからファイヤボールを唱えてもう一体のスケルトンも丸焼きにした。初級魔法のはずだが、リーナが使うとかなり威力がある。
「完璧だ、リーナ。じゃあ魔石を回収して探索を続けよう」
「はぁ、はぁ、了解です!」
少し疲れたようだな。探索はゆっくりにするか。
その後、出現する敵を倒しつつ探索を進めた。洞窟内は結構道が枝分かれするが、【コンサルティング】でどの道を行くべきか逐一確認する。これで罠とか行き止まりの道とかを避けられるのだ。
想定していた通り宝箱はどれも開けられていた。ダンジョンでは時間が経つと宝箱が復活するのだが、すぐではないしランダムなので、浅い階層だと見つけられたらかなりラッキーなんだよなぁ。
「さぁ、次の階層に行こう」
「はい!」
効率的に探索を進め、5階層に到着した。ここまで宝箱の収穫はゼロ。敵はスケルトンとゴブリン以外に吸血コウモリなんかも出現したが、俺とリーナの敵ではなかった。
ただ、リーナが大分疲れてるな、肩で息してるし。一旦どこかで休憩を入れるか。
「リーナ、6階層に降りる階段の手前あたりで休憩しよう。それまでもう少し頑張ってくれ」
「はぁ、はぁ、はぁ。分かりましたぁ」
休憩場所には数分で到着した。俺は早速、簡易的なドーム状の壁を構築するプロテクトのスクロールを使用する。この階層のモンスターであれば、ほぼ間違いなく破壊できないぐらいの強度がある魔法だ。
「リーナ、お疲れ様。初めてのダンジョンはどうだ?」
「少し疲れましたぁ……けど、楽しいですっ! あっそういえば、ダンジョンは罠があるって聞きましたけど、全然無かったですね?」
「ああ、俺のスキルで避けてきたからな。ちゃんと説明してなかったな、すまない」
「えぇ?! そうだったんですか……。むしろ、ありがとうございます! さすがアランさんですっ!」
「え? あっ、ありがとう。まあ探索のプロに比べたら大したことないだろうが……。それはそうと、次の階層から寒いエリアになるらしい。あと敵も強くなるから、ここでしっかり休んでいこう」
「はい、そうしましょう!」
リーナが元気に頷く。
俺はマジックバッグに詰めてきた昼食を取り出す。朝カナディアの屋台で買っておいたもので、パンとアーマードボアの肉の串焼きを布で包んである。リーナにも渡して食べ始める。
「この肉、脂が乗っててうまいな」
「そうですね、あとこのパンも美味しいです!」
確かに、カナディアはパンもうまいな。バケットを切ったものだが、周りはカリッとしていて中はふわふわ。すでに冷めているが、それでも噛むとほんのり甘みがあってうまい。
食事の後30分ほど休んで、探索の続きを開始することにした。6階層へ降りると、木や草がまばらに生えた大地が広がり空は晴れ渡っていた。
ダンジョンは外の世界の常識が通じない場所だ。地下に降りてきたのになぜか空はあるし、植物は存在するし。そう言うものだと理解する他ない。
情報通り、やはり寒い。地面には霜が降りていて、歩くと土の下からざくざくと音がする。
「ちょっと寒いな。コートを着るか。リーナにも渡しておくよ」
「ありがとうございます!」
俺達は毛皮で作られた薄手のコートを羽織った。毛皮はこの階層以降で出てくるモンスター、ブラックムースという鹿の魔獣のものだ。
早速6階層の探索を開始する。が、モンスターが全く出ない。それに宝箱もない。
「アランさん、何かモンスターが全然出ないですね?」
リーナが不思議そうに聞いてくる。
「そうだな。地面を見ると俺達以外の靴の跡がたくさんある。もしかしたら他の冒険者たちが狩り尽くしたのかも知れないな」
「あっ、ほんとだ。足跡がたくさんありますね」
しかし、敵が出ないから探索がだいぶ捗るな。もう6階層も見回ってしまった、宝箱は無かったけど……。
7階層に着くと、やっとブラックムース一体に遭遇した。俺も初めて戦う相手だ。
「そういえば、こいつの角や毛皮は高値で売れるらしい。出来るだけ傷つけずに倒そう」
「そうなんですね。でも、どうすれば良いでしょう……?」
俺も分からん。【コンサルティング】に聞こう。
「極力傷つけない倒し方は……」
1.剣で攻撃する
2.魔法で攻撃する
どっちだ?
〔二つ目の選択肢が最適です〕
ほうほう。でも、俺は攻撃魔法が使えないし、スクロールも炎系の攻撃魔法しかないし。
そんなことを考えていると、ブラックムースが俺に向かって勢いよく突進してくる。
「リーナ、こいつをあんまり傷つけないような攻撃魔法って覚えてたりするか?」
「そっ、そうですね……風魔法のエアロブラストなら良いかもしれません!」
なるほど。一応【コンサルティング】に聞いてみると、最適らしい。
「その魔法で良いようだ。俺がこいつの攻撃を受けるから、魔法を頼む!」
「はい!」
俺はブラックムースの巨大な角を鉄の盾で受けて、突進を横にそらす。ブラックムースは俺の横を通り過ぎると再びこちらに向き直し、突進してきた。
しかし次の瞬間、リーナの正面から風の弾丸が飛び出し、ブラックムースの横腹に突き刺さる。
「ヒューーーーーー、ドサッ」
おお、随分派手に吹っ飛んだなー。
吹き飛んだ敵の様子を見に行くと、すでに息絶えていた。もしかして風魔法が弱点だったのかな?
「すごい威力だな、リーナ。良い魔法だ」
「えへへっ、ほんとですか? でも倒せたのはアランさんのアドバイスのおかげです!」
地面に落ちた衝撃で毛皮が少しダメージを受けてるみたいだけど、ほとんど傷は無いな。
「よし、早速解体しよう!」
俺はサクサク作業を済ませていく。
「アランさん、すごい楽しそうですね!」
リーナが微笑みながら、俺の顔を見て言う。あっ……、キモい顔しちゃってたなきっと。それを楽しそうだなんて、リーナって良い子……。
7階層の探索を続けたが、それ以降何も見つからないし敵とも遭遇しなかった。8階層も同様だったので9階層まで一気に降りてきた。想定よりもだいぶ早い。
9階層に着くと、冒険者のパーティーがちらほらいて、どこもブラックムースを狩っている。やっぱり6〜8階層はモンスターが狩り尽くされてたんだな。
俺達も9階層の探索を開始したが、ブラックムース一体と遭遇したのみでそれ以外には出会わなかった。そして、しばらくすると他の冒険者パーティーが帰り支度を始めた。
「やっぱり10階層には行かないのか。少し話を聞いてみるか」
冒険者パーティーに近づき話しかける。
「やぁ、こんにちは。突然声をかけてすまん。皆さんは10階層に行かないのかな?」
「おう、お疲れさん。お前さん達、新入りかい? 10階層以降はボスもいるし稼げるモンスターも少ないから、カナディアの冒険者はほとんど行かないぞ。 俺達はブラックムース目当てだ。こいつらそんなに強くないし素材は高値で売れるし、コスパが良いから最高なんだよ、肉もうまいしな」
リーダーらしき男が丁寧に教えてくれる。
「あぁ、なるほど。俺達はまだカナディアに来たばかりでね。情報ありがとう、助かったよ」
そう言うと銀貨1枚を取り出して冒険者に手渡す。こうして貸し借りなしにするのが冒険者流だ。
「うん? 随分気前が良い奴だな。じゃあもう一つ良いことを教えてやる。10階層はボス一体だけだから良いが、11階層以降は気をつけろ。しばらく冒険者が入ってないから、今どんな状況か分からん」
「そうか、色々情報ありがとう」
そう言って、俺達は探索に戻った。
「アランさん、さっきの冒険者さんが11階層以降は気をつけろって言ってましたけど、どう言う意味ですか?」
「ああ、11階層以降は冒険者が入っていないから、モンスターが間引かれてないのが問題なんだ。場合によってはモンスターで溢れかえってるかも知れない。まあ、中々そんなことは起きないがな」
「本当に溢れかえってたら怖すぎます……」
「ふふっ、確かにそうだな。まぁ、今回の依頼は俺のスキルでも受けられている以上、達成可能なのは間違いない。今はそんなに気にしなくて大丈夫だぞ」
「あっ、そうでした! とっても安心です!」
そんな会話をしながらも、9階層の探索を終えて10階層に入る。今回のダンジョン探索の目的地はここだ。
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