第13話 ダンジョンに挑戦①
俺とリーナはここ数日、C級とD級の依頼をこなしながら、それぞれ冒険の準備と魔法の習得に勤しんでいた。
そして今日、お互い楽しみにしていたダンジョン探索をする日がやってきた。
「リーナ、こっちの準備はOKだ。そっちはどうだ?」
「はい! 私の方も、いくつか魔法を覚えました!」
「ほう、いくつか、か。一つでも覚えられれば大したものなんだが、さすがリーナだな」
「えっ? えへへっ、ありがとうございます!」
リーナは照れながら嬉しそうにしている。そして、思い出したかのように俺に質問する。
「アランさん、私も冒険の準備ができるようになりたいですっ! どんなものを準備すれば良いか、教えてもらえますか?」
「あぁ、もちろん。今回準備したのは、回復アイテム、食事や寝泊まりするための道具、使い捨ての魔法スクロールとかだな。まぁ、ダンジョン探索では必須のものばかりだ。あと、ダンジョンのマップは無かったが、情報収集はしてあるぞ」
カナディアのダンジョンは既に攻略されているはずだが、マップは見つからなかった。ダンジョンの情報収集は冒険者が集まる酒場で済ませてある。
「はぁ、いっぱい準備が必要なんですね……」
「まあな。ただ、これでも少ない方なんだぞ? 厳しい環境のダンジョンだと、それ対策の装備も必要になってくるしな。これから向かう【極光のダンジョン】は、降りれば降りるほど寒くなっていくから一応防寒具も準備してある」
「なっ、なるほど……。冒険の準備、ちゃんと覚えられるでしょうか……?」
「すぐに覚える必要なんてないんだ。少しずつ覚えていけば良いんだよ」
「はい、頑張りますっ!」
リーナはやる気に満ちた様子で答える。
「よし、じゃあまずはギルドに行って、ダンジョン内で達成できる依頼がないか見にいこう」
そう言うと、俺達は早速ギルドに向かった。
ギルドの掲示板にはダンジョン10階層のボス、オーロラ=レインディアのモンスター素材収集依頼があった。それ以外のダンジョン関連の依頼で残っているのは、10階層以降でないと達成できない依頼だけだった。
俺は前者の依頼書を手に取った。オーロラ=レインディアは、簡単に言えばデカくて強い鹿の魔獣らしい。異常に発達した角での攻撃が奴らの特徴で、ランクはC級。
「今回はこの依頼だけにするんですか?」
リーナが不思議そうに質問する。
「ああ。今回の探索は10階層までにしよう。パーティーで初めてのダンジョン探索だし、無理はしたくないからな」
「はい、了解です!」
リーナが納得して返事をする。
ギルドの受付を見ると、いつ来ても必ずいる受付嬢のオリビアが待っていた。さっきから随分視線を感じていた、特にリーナの方にだが……。
「おはよう、オリビア。今日はこの依頼を受けたい。手配をお願いできるか?」
「おはようございます、アランさん。まぁ、今日は二人でダンジョン探索ですね? アランさんが一緒なら何も心配ないですわ。リーナちゃん、頑張ってね!」
「はい! 頑張りますっ!」
リーナの返事を聞くと満足そうに頷き、オリビアはすぐに手続きを開始する。
〔依頼を受け付けました〕
【コンサルティング】で依頼を受け付けることができた。今回の報酬も楽しみだなぁ。
手続きを終えてオリビアが戻ってきた。
「リーナちゃん、ダンジョンは危ないから気をつけてね。何かあったらすぐアランさんを呼ぶのよ?」
「はい!」
「あと、分からないことは何でもアランさんに聞くのよ?!」
「はっ、はい!」
「あと、お腹が減ってきたら、すぐにアランさんに言うのよ?!」
「はっ、はっ、はい!」
「それと」
「すっ、ストップ! オリビア、安心してくれ。必ず無事で戻ってくるから」
「はっ?! すみません、心配になっちゃって、つい……。リーナちゃんをよろしくお願いします」
もう完全にお姉ちゃんって感じだなぁ……。母親にも近い気がする……。
俺はふと、アメリゴ王国の城下町からここにくる途中で遭遇したダンジョンのモンスターのことを思い出した。
「そうだ、オリビア。俺が初めてこの町に来た日、ダンジョンの魔物と遭遇したのを報告したが、あの件の調査はどうなってる?」
「はい。ギルドの調査員がダンジョンの5階層まで調べたところ、特に異常は見られませんでした。また冒険者の皆さんから話を聞く限り、いつものダンジョンと変わらないとのことです」
そう言い終えて、オリビアが少し考える仕草をした後、心配そうに言う。
「ですが、実は最近10階層以降を探索する冒険者が全然いなくて、その辺りの情報があまり無いんです」
「なるほど。10階層に行くのは俺たちが久しぶりということか。まあ、もし何か起きていた場合、普通浅い階層にも異変が起きるはずだから、とりあえずは大丈夫だろう」
「はい、ギルドもその認識です。何か気になることがあれば、またご報告お願いします」
「ああ、分かった。じゃあ行ってくるよ」
「オリビアさん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
心配そうに手を振るオリビアと別れ、俺達はカナディアの町を出た。
ダンジョンへの道すがら、酒場で得た情報をリーナに共有する。
「さっき少し話したが、【極光のダンジョン】は寒い。最下層は吹雪いているらしいからな。まぁ10階層はそれほどでもないようだが」
「ダンジョンは30階まであって、攻略するにはB級程度の力が必要になるみたいだ。上層はゴツゴツした岩の洞窟と言った感じで、スケルトンや吸血コウモリが出るらしい。さらに降りると草原のようなフィールドに変わり、魔獣系のモンスターが多くなってくるらしい。寒さに適応できたモンスターだな」
「なるほど、了解です!」
ダンジョンに到着し中に入ると情報通り、1階はゴツゴツした岩の洞窟だった。勇者パーティーにいた時はかなりの頻度でダンジョンに潜ってたから、久しぶりでちょっと感慨深い。
リーナを見ると少し緊張している様子だ。初めてって言ってたし、当たり前だよな。
「あんまり緊張しなくて大丈夫だぞ。ダンジョンの情報は押さえてあるし、初めは出てくる敵も弱いからな」
「はっ、はい!」
慣れるまでは仕方ないかぁ。1階は明かりがないようなので、俺は早速生活魔法の【ライト】を使用した。光源となる光の球が宙に浮かび、ダンジョン内に光が満ちていく。
「よし、じゃあマッピングしながらフロアを探索してみよう」
リーナが頷くのを確認し、俺が先頭になって探索を開始した。
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