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第12話 勇者パーティ、新たな門出を祝う

 アメリゴ王国の勇者パーティー【ライジング・サン】は行きつけの酒場にいた。改めて新メンバーの歓迎会と、大きな目標達成を目指した決起集会を兼ねて、メンバーだけで集合していたのだ。


「やっとアランを追い出すことができたな」


 いつもクールな勇者シーザーにしては少し感情が(こも)ったトーンで、守護者ラックに話し掛ける。


「うん、そうだね。これで僕達は誰からも認められる、完璧なパーティーになるよ」


 ラックは今後の自分達の活躍を確信して言う。


「そうだわ。私達のパーティー唯一の欠点が無くなったもの。あいつはこのパーティーの足手まといだったし、何より品格が足りなかったのよね」


 拳士リリアンがラックの言葉に同意する。


「ああ、まさにその通りだな。後は40階層以降を攻略できれば、俺達もS級冒険者になって貴族の仲間入りというわけだ」


 シーザーはそれを想像すると、自然と笑みが(こぼ)れてくる。


「シーザー、必ず私達を貴族にしてね。早く冒険者なんかやめて、私に相応しい身分になりたいわ」


 聖女キャサリンから本音が出る。それを聞いて新入りの二人、ミックとコニーが驚愕の表情を浮かべる。どうやらキャサリンの裏の顔をまだ知らなかったらしい。



「そう言えばアランったら、私達に敵やダンジョンの攻略法を教えていた、なんて言ってたわね。冗談でも言ってるのかと思ったわ」


 キャサリンがアラン追放の席を思い出してクスクスと笑う。


「ああ。あいつはそのつもりでいたんだろう。ダンジョンの中で偉そうに喋っていたもんな。『そっちの道は危険だからやめよう。スキルがそう言ってる』なんて、リーダーの俺に指示しようしやがった」


 シーザーが吐き捨てるように言うと、


「恥ずかしいやつだよ、あいつは。シーザーに教える事なんてないんだ。そうだろ?」


 分かりきった事だとラックが確認すると、シーザーもそれに頷く。


「ああ、そうだ。俺はアメリゴ国王から正式に認定された勇者だ。【自由のダンジョン】の40階層まで到達しているのは俺達だけだ。その攻略を指揮したのはあいつじゃなくて俺なんだ」


「そうそう。なのに王女様ときたら、あんなダサい奴の何が気に入ったのか知らないけど、アランの事を『賢者様』なんて呼ぶんだもの。『あなたの知恵でこの度の快挙を達成されたのですねっ!』なんて、はぁ? って感じよ」


 リリアンは王女の物真似をしながら、先日アメリゴ城で行われた40階層到達記念パーティーでの出来事を口にする。王女がアランを『賢者様』と呼んだ結果、国中にその名声が広がったのだった。


 リリアンだけでなく、パーティーの全員がその事に不快感を持っていた。自分の方が活躍していたのに、と。


「ちょっと、リリアン。そんな物真似を誰かに見られたら不敬罪で捕まるよ?」


「ごっ、ごめんラック。ちょっとやり過ぎちゃった……」


「気をつけてくれよ? それに俺達だってかなり褒められて評判も良くなったし、『賢者様』はもうパーティーにいないんだし、その事はもう良いんじゃない?」


 ラックはそう言ってリリアンを(いさ)める。


「だがリリアンが言った通り、王女がアランをあれ程気に入るとは思っても見なかった。俺達が貴族になった時に、王や王女に気に入られるのは俺達でなければならない」


 シーザーが言う。アメリゴ城で開かれたパーティーで、なぜか王女はアランの話を聞きたがった。シーザーには何が面白いのか理解できなかったが、アランの話を聞いて王女は何度も頷いては質問を返し、随分と話に花が咲いていたのだった。


「王女を勘違いさせるような事をするからパーティーを追放されるんだ。身の程を知らない馬鹿が」


 シーザーがアランを追放した本当の理由はこれだった。王女に気に入られるのは、勇者パーティーを率いる俺であるべきだとシーザーは考える。


 自分か貴族になった暁にはダンジョンで手に入れた宝物を国に差し出して、出来るだけ高い地位を手に入れる。あわよくば王女も。そしていずれこの国の王も、彼は視野に入れていたのだった。


「アランがいない状態でダンジョンを攻略すれば、流石に王女も自分の間違いに気づくだろう。そうなれば、俺達の将来も安泰だ」


 シーザーの本音としては仲間の将来など二の次だったが、それを表に出さないぐらいの器量が彼にはあった。


「これから本当に俺達の時代が来る。その為にも、40階層以降のダンジョン踏破は必ず成功させよう」


「その為にも新メンバーのミックとコニーには、俺達との連携に慣れてもらう必要がある。まずは31階層から40階層までもう一度攻略しよう。俺達にとっては簡単なんだが、二人には良い訓練になるだろう」


「「はいっ!」」


 ミックとコニーが元気よく返事をする。憧れの勇者パーティーに加入できたとあって、やる気は満々だ。


 ミックは探索役(シーカー)兼ポーターで、コニーは各種魔法の使い手だ。二人の力が加われば、アランがいた頃よりもパーティーの総合力が大幅に上がることをシーザーは確信している。



「そう言えばこの前のイケてるパーティランキング、僕達が一位だったよ!」


 ラックが嬉しそうにシーザーに言う。


「そうか、強さランキングは言うまでもなく一位。つまりこれで二冠だな。装備品と装飾品に散々金をかけた甲斐があった。これでさらに憧れの貴族様へ近づいたかな?」


 シーザーはニヤリと笑みを浮かべながら言う。


 貴族になるにはS級冒険者であることだけでなく、国民からの人気も重要なポイントなのだ。嫌われ者のS級冒険者が貴族になった事例はない。


 そして、ついに手の届くところまで来た貴族の地位を逃すまいと、シーザーは早速、ミックとコニーに新パーティー最初の冒険の準備を指示したのだった。

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