第01話 パーティー追放①
新連載はじめました。よろしくお願いいたします。
「突然呼び出すなんてどうしたんだ、シーザー? 今日はオフだったよな?」
ここはアメリゴ王国城下町にある、冒険者で賑わう酒場の一角。突然呼び出された俺はパーティーメンバーの前に立たされていた。
「あぁ、良い知らせがあってな?」
「へぇ、何だ?」
「パーティーに良い知らせだ。アラン、お前を今日でクビにすることにした。何の役にも立たないお荷物は、このパーティーから追放だ」
「……はっ? 何言って?」
突然の話に驚いて聞き返すと、黒髪ロン毛の色男シーザーは自慢の髪をかき上げ、耳に光る金色のピアスを見せながら、俺に向かって言う。
「追放だと言ったんだ。お前はもうこの勇者パーティーに必要ない。そうだよな、ラック?」
シーザーはこのパーティーのリーダーだ。ダンジョン攻略の功績が認められ、国から勇者と名乗ることを認められている。
シーザーからの問いに、勇者パーティーの守りの要、壁役のラックが答える。
「そうそう。アランもしかして、何で役立ずって言われてるか分からないの? ……はぁ、なら教えてあげるよ」
俺に侮蔑の目を向けながら、ラックは心底面倒臭そうに言う。シーザーもこいつも、俺に対してだけはこういう態度を取る。
ラックは壁役だがその割にほっそりとした体つきをしている。金髪で端正な顔立ちの彼には、シーザー同様女性のファンが多い。
「そもそも、君をパーティーに入れていたのは、君のユニークスキルが勝手に金を産むからだったんだ。でももう僕達はA級冒険者、金なんていくらでも稼げるようになった」
「だから君はもう要らないんだよ、分かるだろ? これまでパーティーの財布として活躍、ご苦労さま! わははははっ!」
首に掛けられた金のネックレスを揺らしてラックが笑うと、他のパーティーメンバーもそれにつられてクスクス笑う。
俺のスキルが持つ能力の一つ『解決報酬』は、その名の通り問題を解決するとスキルが報酬をくれる。メンバーの問題を解決して得た報酬は、なぜかパーティーの物として徴収されていた。
「なっ?! そんな……。確かに『解決報酬』の金はもうあんまり役に立ってないかも知れない。でも、それ以外にもパーティーの役に立ってただろ……? パーティーの相談役として、安全で効率的なダンジョン攻略ができるように貢献してきたはずだ!」
そう、俺はコンサルタントとしてこのパーティーの躍進を支えてきた自負がある。俺抜きで勇者パーティーになれたなんて言わせない。
「んっ? もしかして、なんかことあるごとにぐだぐだ言ってたけど、そのこと?」
「ぐ、ぐだぐだ……? いや、ダンジョンとか敵の攻略方法を考えて伝えてきたのは俺だろ?」
「わははははっ! やっぱり勘違いしてたんだね君? ふふふっ、面白すぎるよ! 本当のことを教えてあげる。あんなもの、ありがたがってたやつなんていないよ。君が金を産むから聞いてやってただけさ!」
「くはははははっ!」「わはははははっ!」「キャハハハハっ!」「ふふふふふっ!」
ラックの言葉に、心底愉快そうにパーティーメンバーが笑い出すのを見て、俺は頭を殴られたような衝撃を受けた。
嘘だろ?
俺の言うことを聞いたふりして、腹の底では笑ってたってことか……?
こんなに頑張って来たのに……。時には徹夜でダンジョンの資料を漁ったり、酒場を駆けずり回って冒険者から情報収集したり、他のメンバーがやらないことを俺はやってきた。
その情報をベースに、俺のスキルのもう一つの能力、『最適解』をフル活用してダンジョンとか敵の攻略方法を考えてきた。
そうして役に立ってると思っていたのに、俺が勘違いしてただけだったのか……?
「……じゃ、じゃあそれ以外の仕事はどうだ? 魔物の解体、素材の剥ぎ取り、魔石の回収は俺だけの仕事だったし、冒険の準備とか、ダンジョンのマップ作成、荷物運びだって、全部俺がやってたじゃないか?」
「キャハハ! アンタ、それで役に立ってたって、本気で言ってるの?」
今度はパーティーで最大火力の攻撃役である拳士リリアンが口を挟む。リリアンは健康的な小麦色の肌に赤髪のショートカットで、美しい顔立ちをしている。だがその顔を歪ませて、俺を蔑んだ目で見ながら言う。
「そんなこと、新人の冒険者でも出来ることじゃない。冗談言わないでよ」
「そっ、そんなこと……? ギルドにも随分評価されてたんだが……」
するとリリアンが激昂し、バンッ!とテーブルを叩く。その拳にはダイヤやルビーの指輪がいくつも光っている。
「うるさいわね! そんなことで喜んでるからアンタは役立たずなのよ! ラックみたいにメンバーを守ったりもできないし、あたしみたいに敵を倒すこともできない。全然戦闘の役に立ってないじゃない!」
「……はっ? まっ、待ってくれ! 俺はアドバイスだけしてくれれば良いって、あまり戦闘に参加しないで良いって、お前達が言ったんじゃないか……?」
「あぁ、そうだ。お前は自分の身ですら守れるか怪しいからな。パーティーの大事な財布が壊れたら困るだろう?」
シーザーは薄笑いを浮かべながら言う。
何なんだよ、こいつら……。言ってることがめちゃくちゃだ。俺をバカにしてるだけじゃないか……。
だがメンバーからの罵倒はこれで終わらなかった。
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