表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

4.早い再会

「ったく、何してんだよ、アイツら……」


 三人分のチケットを手に、(ながれ)は気をもんでいた。飛行機に乗る準備は整っているのに、肝心のふたりがまだ来ない。流が振り返って探していると、離れた場所で若い男女と話し込んでいた。


「お〜い、晶、アスナ! 早く行こうぜ!」


 そう流が声をかけると、晶たちは会話を切り上げて小走りに駆けてきた。


「もう! 流ったら!」

「へ? なに?」

「いいわ、もう。中へ入りましょう」


 なぜ怒られているのかよくわからないまま流は飛行機に乗った。チケットを見ながら席を見つけて、頭上の棚にキャリーケースとバックパックを入れていく。


「あっ、さっきの!」

「あら。隣だったのね」


 明日菜の声に振り向くと、そこにいたのは先程のカップルだった。ふたりの座席は通路を挟んで窓際のツーシートのようだ。


 明日菜は物怖じせず、にこやかに話しかける。


「すごい偶然! 奇遇ですね」

「ホントね。何かの縁を感じるわ」


 カップルの女の方もクールにだが、好意的に応じた。

 

「もしかして、行き先も同じだったりして?」


 と、明日菜がわかりきったことを言って笑いを取ろうとしたのに、男の方が真顔で言う。


「そりゃまあ、同じ行き先の飛行機に乗ってるんだから行き先も一緒だろ」


 シラッとした空気が流れる。女性陣三人にジト目で見られ、男は居心地悪そうに窓際の席に座った。


「お二人はどちらを回られるんですか?」


 そんな空気を壊すように、晶が明るく女子高生に話しかける。


「そうねぇ。色々見て回るつもりだけど」

「ハリウッドとか?」


 明日菜もさっきの塩対応にもめげずに、晶とカノジョの会話に加わっていく。


「ええ、行くわよ」

「いいですよね、ハリウッド! わたしたちも行くんですよ」

「あら、そうなの?」

「わたし、明日菜っていいます。久坂 明日菜(くさか あすな)。お姉さんは? よかったら、ID交換しませんか?」

「ええ、もちろん。私は神谷 美智子(かみや みちこ)よ。こっちはカレシの賢ちゃん」

「よろしくお願いします。私は吾妻 晶(あづま あきら)です。ほら、流も自己紹介して」

「えっ」

「賢ちゃんもね」

「お、おう」


 和気あいあいとする女子三人に対し、通路を隔てた反対側にいる流たちは、実際の距離も心の距離も離れている。


新島 流(にいじま ながれ)です。ドーモ」

久井 賢吾(ひさい けんご)だ」

「…………」

「…………」


 いけすかない、と互いの顔に書いてある。

 流は賢吾を上から下まで眺めて思った。


(背は低いけどガタイがいいな。鍛えてんのかな? 無愛想だし、なんか偏屈そうだし、キレイなお姉さん連れなのがムカつく!)


 対する賢吾の方も流を観察して感想を抱いていた。


(態度の悪いヤツだな。見た目高校生ぐらいかな? 愛想もないしやる気もなさそう。体力もなさそうだし筋力もなさそうだな。それはさておき女ふたり連れとは……うらやましいな)


 互いに「コイツとは馬が合わなさそうだ」と直感したふたりは、関わらないことにした。その後は通路を挟んで女の子たちが色々とやり取りしていたが、賢吾も流もそれにはノータッチだった。


 飛行機は予定通りの時刻に離陸した。シートベルトの解除ランプが点灯したのを確認し、賢吾は大きく息を吐いた。


「あー……。とりあえず出国はできそうだから問題ないな」

「そうね。それにしても、卒業旅行にまさかハリウッドなんてね。賢ちゃんの考えはやっぱり読めないなぁ」

「……嫌だったのか?」


 まさか、今このタイミングで、と賢吾は驚く。目がカッと見開かれて少し怖い顔になっているが、長い付き合いの美智子からすれば可愛いものだ。美智子は笑った。


「ううん、全然! むしろ、すっごく楽しみなのよ。驚いたのは旅行に誘ってくれたことと、行き先がロスだったこと。いい旅行にしましょうね!」

「ああ。そうだな」


 美智子の笑顔を見てホッとした賢吾は、座席の背もたれに深く腰掛けフッと笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ